国民にとっても「マイナンバーカード」はあった方がいい その「必要性」を佐々木俊尚が指摘

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ジャーナリストの佐々木俊尚が6月21日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。全国各地でトラブルが相次ぐマイナンバーカードについて解説した。

国民にとっても「マイナンバーカード」はあった方がいい その「必要性」を佐々木俊尚が指摘

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マイナンバー、公金受け取り口座の本人確認を厳格化 ~6月23日にも開始

マイナンバーの公金受け取り口座に、家族ではない無関係な別人の口座が登録されるミスが確認された問題で、再発防止に向けデジタル庁は、いまよりも本人確認を厳格に行うシステム改修を進めている。その運用について、デジタル庁は6月23日にも運用を開始すると発表した。

飯田)さらに政府は20日、デジタル庁や総務省、厚生労働省を中心とする省庁横断型の「マイナンバー情報総点検本部」を立ち上げる方針を固めました。

銀行口座から保険証まで、マイナンバーカードにすべて紐付けられる

佐々木)マイナンバーの目的は、最終的には銀行口座や年金、運転免許証、保険証……保険証は既に行っていますが、すべて紐付けし、マイナンバーというID……長い番号列がありますよね。あれで自分のデータが取れるようにしたいのです。

飯田)1つのIDにすべてが紐付けられる。

佐々木)ところが、いままでそういう仕組みは日本にありませんでした。引っ越したら運転免許の住所を書き換えたり、銀行口座も申請が必要など、あらゆるところに「自分の住所が変わりました」と言わなければいけなかった。それを、「マイナンバーになれば1個変えただけですべてOKになる」という仕組みに変えようとしているのです。

飯田)マイナンバーに記載されている住所を変えるだけで。

佐々木)しかし、いままではすべて紐付けされていなかったので、紐付けしなければいけない。これが大変なのです。保険証に関しては、来年(2024年)には従来の保険証をなくして、すべてマイナ保険証になります。

紙の保険証のデータを市役所の人が手入力でマイナンバーカードに打ち込み直しているケースも ~保険証側をまずデータ化してから行うべきだった

飯田)マイナンバーカードに一元化するという話です。

佐々木)自治体などでマイナンバーカードと保険証を紐付けしているのだけれど、保険証側のデータがデジタル化されておらず、紙のままのところもあるのです。

飯田)未だに。

佐々木)そのため、紙の保険証データを市役所の人たちがじっと眺めて、数字や住所などを全部マイナンバーカードに打ち込み直しているケースもあります。

飯田)手入力する。

佐々木)当然、ミスが出るので批判されているのですが、なぜそこをデジタル化しなかったのだという話です。

飯田)まず保険証側のデジタル化が必要だった。

名字や漢字の違いなどデジタル化するためのさまざまな障害も

佐々木)ただ、デジタル化するにも障壁がたくさんあります。名前だけでも、例えば、わたなべさんの「なべ」など、いくつも漢字があります。

飯田)さいとうさんの「さい」もそうですね。

佐々木)住所でも、マイナンバーカードに収められている住所と、保健所に収められている住所がイコールならいいのだけれど、同じ住所でも「東京都渋谷区上原1の1の1」だと、「の」がハイフンやひらがな、またカタカナの場合もあります。

飯田)ハイフンだけでも半角か全角かという違いもある。

佐々木)混在してしまっているので、デジタル化するのは容易ではないのです。

飯田)普通に住所を書くとマンション名が入っているけれど、住民票の住所では入っていなかったり、登録も違う場合があります。

佐々木)「そんなものはExcelで置換して、すべてハイフンに変えればいいではないか」と言う人もいますが、日本の住所は複雑怪奇なのです。

飯田)京都なら、例えば四条上る、下るとか。

佐々木)市のあとにいきなり何番地となっていたり、地域によっていろいろな住所があるので、簡単に統一するのは難しい。ある程度は手作業で統一していくしかありません。

「最初の部分を乗り切るしかない」というのが現状

佐々木)今回の問題は確かに批判されても仕方ない出来事ですが、一方で最初の壁を通り抜ければ、マイナカードにすべてデジタル化されるわけです。

飯田)ここを乗り切れば。

佐々木)そのあとはデジタル処理で済むので、それほど問題は起きなくなるでしょう。「最初の部分は何とか乗り切るしかない」というのが現状だと思います。

国民にとっても「マイナンバーカード」はあった方がいい その「必要性」を佐々木俊尚が指摘

マイナンバーカードの申請手続きが行える専用車「マイナちゃんカー」=2021年8月5日、宮崎県都城市 写真提供:時事通信社

マイナンバーカードのなかに銀行口座や運転免許証のデータが入っているわけではない

飯田)あのカードのなかにデータが入っているわけではないですよね。

佐々木)ないですね。単純に「ID番号で管理しましょう」というだけの話です。ID番号に紐付いている年金データは社会保険庁にあるし、運転免許証は警察庁に、銀行口座は銀行にあります。

飯田)それぞれ。

佐々木)それぞれの銀行や警察庁など、いろいろなところにあるデータにマイナンバーカードのIDを紐付けるだけです。警察庁に「私のIDは何番です。運転免許証はどうなっていますか?」と聞くと、住所・氏名を言わなくても自動的に出てくるという仕組みです。

飯田)ただ、警察庁に行って「私の口座はどうなっていますか?」と聞いても、「私たちは知りませんよ」となる。

佐々木)そういうことです。データ同士が連結していない。国民にはこの仕組みが相変わらず理解されていなくて、「マイナンバーカードを落とすと銀行口座から何から全部明らかになってしまうのではないか」と不安に感じる人が多いのですが、それはないということです。

飯田)むしろ、そこは相当気を遣って設計した部分があり、その分、使い勝手が悪くなるというような批判が出るぐらいです。

「カード番号は絶対に人に見せないように」というような当初の国側の説明が適切ではなかった

佐々木)ただ、マイナンバーカードをつくった当初は、国側も「書いてあるカード番号を絶対に人に見せてはいけません」というようなことを言っていました。交付時に使われたプラスチックの袋にも、番号を伏せるように目隠しを付けるなど、過剰にやりすぎたのです。

飯田)そうなっていましたね。

佐々木)あれで「マイナンバーカードを持つのは危険だ」というイメージが、人々の間に広まってしまったのかも知れません。

飯田)「教えてはいけない番号が、カードに出ているではないか」と。

佐々木)番号を見られたら銀行口座など、すべてが流出するのではないかと思い込んでいる人がいますが、当初の国の説明が適切ではなかった可能性があります。

飯田)当時は住基ネットの失敗などもあったので、「気を遣っているのですよ」という意思を前面に出したら、裏目に出てしまった。

国民IDがないのは日本くらい ~マイナンバーカードの裏の目的は「金融資産を把握したい」

佐々木)国民IDがない国は日本ぐらいです。1970年代、佐藤栄作元首相の時代から議論されています。

飯田)50年以上にわたって。

佐々木)国の裏の目的としては、「金融資産の捕捉」があります。例えばコロナ禍で給付金を配るときに、マイナンバーカード経由で配れば「銀行口座が紐付いているからいい」という話です。高収入の人には配らないようなやり方もできるので、「金融資産を把握したい」という目的があります。

コロナ禍で給付金を配る際、「収入は年金だけだが金融資産は1億円以上」と「年収400万円で金融資産0」の人を同じに扱っていいのか

佐々木)コロナ禍で給付金を配る際も、例えば「年収500万円以上の人はいくら」という感じで考えているけれど、高齢者の方には「年収はもう年金しかない。しかし、金融資産は1億円以上ある」というような人も少なくないのです。

飯田)リタイアしているけれど資産はたくさん持っている。

佐々木)そういう方々を、年収400万~500万円だけれど金融資産は0、という人と同じように扱っていいのかどうか。「不公平だ」という議論がずっとあるわけです。

金融資産は簡単に調べられないので金融資産を給付の条件にできなかった ~マイナンバーカードと銀行口座が紐付いていれば把握できる

佐々木)収入はその都度、所得税で捕捉できるけれど、金融資産がいくらあるのかは銀行に問い合わせなければいけません。ですので、国が給付する際、金融資産を条件にできない問題があるのです。

飯田)すべての人の金融資産を調べることはできないから。

佐々木)マイナンバーカードで金融資産も全部捕捉できるようになれば、「この人は現収入は少ないけれど、金融資産はたくさんあるので給付をやめよう」というような判断ができる。

飯田)マイナンバーカードと銀行口座が紐付いていれば。

佐々木)それに対して「金融資産を捕捉するとは何事だ」と怒る人もいますが、「社会の平等としてはそこが必要だ」という議論をもっとしなければいけないと思います。

国民にとっても「マイナンバーカード」はあった方がいい その「必要性」を佐々木俊尚が指摘

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70年代、国民IDをつくろうとしたのも金融資産の把握が裏の目的だった ~当時は朝日新聞、毎日新聞は賛成だった

佐々木)そもそも70年代、佐藤栄作元首相の時代になぜ始めたかと言うと、やはりそこだったのです。

飯田)金融資産の把握、捕捉。

佐々木)当時、いちばん反対したのは読売新聞や日経新聞です。要するに中小企業の社長の読者が多かったから。一方で賛成したのは、サラリーマン層に人気だった朝日新聞、毎日新聞でした。いまで言う左派系の新聞の方が、社会の平等を担保するという意味でID導入に賛成だったのです。

飯田)当時、税金をきちんと納めているかどうかの捕捉で、サラリーマンは源泉から差っ引かれるため、10割持っていかれるけれども……。

佐々木)自営業などは全然把握されていないと言われていました。

小説『1984』の影響で「国民を監視することはけしからん」ということになり、住基ネットに対して朝日新聞や毎日新聞が批判し出す

佐々木)なぜいま、朝日新聞や毎日新聞が逆に反対するようになったのかと言うと、1980年代の監視社会ブームのころからだと睨んでいます。1984年が何の年か覚えていますか?

飯田)小説『1984』ですか?

佐々木)そうです。ジョージ・オーウェルが1949年に刊行し、監視社会の典型的な恐怖を描いたSF小説のタイトルが『1984』だった。その年がまさに1984年にきたので、ジョージ・オーウェルがブームになったのです。「国民を監視するのはけしからん」などと急に言うようになった。いままでそんなこと誰も気にしなかったのに。

飯田)当時はハンディカメラが売り出されて、「これで監視されたら」というようなことも言われました。

佐々木)90年代に入るとインターネットが普及してきて、ますます「監視は怖い」というような話になった。そのころから「住基ネットをやらなければ」という話になると、「監視社会だ」と朝日新聞や毎日新聞などが批判し出したのです。

飯田)当時、「国民総背番号制」などと言われました。

佐々木)本質的には国民監視と言うより、金融資産の把握なのですが。

マイナンバーカードで処方箋の履歴や診療履歴も判明 ~診療しやすくなり過剰な投薬もなくなる

佐々木)それだけではなく国民にとっても、例えば引っ越したときに一括で住所変更できるなど、メリットは大きい。そもそも「日本以外の先進国には国民IDが存在していますよね」という話です。

飯田)日本のような国は珍しい。

佐々木)いままでアナログでDX化されていなかったため、DXにするという目的も当然あります。最初の入り口において、手作業で紐付けているからエラーが大量に出ていますが、ここを乗り越えれば、マイナンバーカードであらゆるデータが一元管理できるようになり、デジタル化されるのです。

飯田)いまを乗り越えれば。

佐々木)実際、保険証もDX化してマイナカードになってしまえば、マイナカードを見せるだけで、処方箋の履歴や診療履歴も全部わかるようになります。

飯田)過去の診療履歴が。

佐々木)複数の病院へ通っていても、「この病院ではこういう治療、別の病院ではこういう治療をしている」とわかるし、薬も全部把握できます。紙のおくすり手帳を持たなくてもよくなるというメリットもあります。その辺りがあまり周知されていない感じがします。

飯田)過剰に薬が出るとか、それによる副作用など、そういう問題も減らせる。

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