10年ぶりに勝利! 田中将大が東京ドームで燃えるのは「理由がある」

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話題のアスリートの隠された物語を探る「スポーツアナザーストーリー」。今回は、6月26日のソフトバンク戦で今季4勝目を挙げ、日米通算200勝まであと6勝に迫った楽天・田中将大投手にまつわるエピソードを紹介する。

10年ぶりに勝利! 田中将大が東京ドームで燃えるのは「理由がある」

【プロ野球ソフトバンク対楽天】3回、ソフトバンク・栗原陵矢を一ゴロに打ち取り吠える楽天・田中将大=2023年6月26日 東京ドーム 写真提供:産経新聞社

『チーム、自分自身も苦しい状態が続いています。でも(悪い)流れを止めるのは、自分しかいないという気持ちでマウンドに上がりました』

~『サンケイスポーツ』2023年6月27日配信記事 より(田中将大のコメント)

6月26日、東京ドームで行われたソフトバンク−楽天戦。ソフトバンクは毎年、各地で「鷹の祭典」というファン感謝イベントを開催しており、東京でも年に1回行われます。この日はちょうどそのイベントデーで、東京ドームは満員になりました。

予告先発投手は、ソフトバンクが和田毅(42)、楽天が田中将大(34)といずれも元メジャーリーガーのベテラン同士。和田は「松坂世代最後のNPB現役投手」ですが、今季5勝を挙げチームの勝ち頭。42歳という年齢を感じさせないピッチングで、しっかりローテーションに入っているのは驚きます。

かたや、日本球界復帰3年目になる田中将大は、2021年が4勝9敗、2022年が9勝12敗と2年連続で負け越し、今季(2023年)も試合前の時点で3勝4敗。しかもチームは5連敗中でした。冒頭のコメントにもあるように「自分が連敗を止める」という強い気持ちでマウンドに上がりました。

この日は来場者全員に、ホークスの選手が着用しているのと同じ「鷹の祭典ユニフォーム」が配られ、東京ドームのスタンドはエメラルドグリーンに染まりました。田中にとっては完全アウエーの状況でしたが、そこは百戦錬磨のベテラン。たとえスタンドがほとんど相手のファンで埋まっていようが、その状況をパワーに変える術を持っているのです。

『ビジター、ホームだろうが、盛り上がっている中で試合をできるのは選手として幸せ』

~『サンケイスポーツ』2023年6月27日配信記事 より(田中将大のコメント)

ところで、田中と東京ドームで思い出すのは、2011年7月20日、東京ドームで行われた日本ハム−楽天戦です。予告先発は、プロ7年目のダルビッシュ有 vs 5年目の田中という、パを代表するエース対決になりました。本来なら札幌か仙台に行かないと観られない好勝負が東京で観られるとあって、何と4万4826人の観客を集めたのです。筆者も当日ドームへ行きましたが、チケット売り場に長蛇の列ができ満員札止めになったのを覚えています。

この試合は3対1で日本ハムが勝利、ダルビッシュが完投勝利を挙げたのですが、田中も最後までマウンドを降りず完投。非常に見応えのある名勝負でした。直接対決では敗れた田中でしたが、この年(2011年)はダルビッシュと沢村賞を争い、19勝5敗、防御率1.27でライバルを抑えて受賞しています。

その翌年、2012年5月30日には、巨人との交流戦で田中は再び東京ドームのマウンドへ。この試合は杉内俊哉との投げ合いになり、田中は2失点で完投しましたが、楽天打線が杉内にノーヒットノーランを食らい、またしても完投負け。2年連続で悔しい思いを味わいました。

しかし、やられたらきっちりお返しをするのが田中流。翌2013年は、日本ハムの主催試合で2試合、巨人との交流戦で1試合、合計3試合東京ドームで投げ、全試合自責点ゼロ、1完封で3連勝を飾っています。この年、田中は24勝0敗というとんでもない成績を残し、楽天を球団創設初のリーグ優勝と日本一に導いたのはご存知のとおり。

2014年からはヤンキースと契約。メジャーで活躍しましたが、2021年から日本球界復帰を決断。復帰初戦が4月17日、東京ドームで行われた日本ハム戦でした。しかし中田翔にホームランを打たれるなど、5回3失点で降板。黒星を喫しています。

今回のソフトバンク戦は、それ以来2年ぶりの東京ドームということで、田中も心中期するところがあったのでしょう。最速151キロのストレートに、スプリット、スライダーなど変化球も織り交ぜて、ホークス打線に決め手を与えず、丁寧に料理していきました。

渡米前の田中は、威力のあるストレートとスプリットを中心にグイグイ押していく剛腕タイプのピッチャーでした。しかし年齢を重ねるとともに、打者との駆け引きや配球の妙でも勝負するようになった田中。まだ150キロ台のストレートが投げられるとはいえ、昔のように力だけでは抑えられないことは、本人がいちばんよくわかっています。

3回、2死満塁、バッター・栗原陵矢というピンチを招きますが、スプリットでタイミングを外し、1球でファーストゴロに仕留めたのはさすがでした。一方、4番・柳田にはストレート中心で攻め、6回にはバックスクリーンにソロホームランを叩き込まれましたが、ランナーがいない場面なのは計算済み。後続を断って、7回5安打1失点でマウンドを降りました。

野手も、援護点と好守備で田中をバックアップ。8回以降はリリーフ陣が好投を見せ、楽天が逃げ切って3-1で勝利。連敗を5で止め、田中は4勝目。2013年以来10年ぶりに東京ドームで白星を挙げました。勝利の瞬間、ベンチで雄叫びを上げた田中。

『状態は上がってきているので、直球系がしっかりと投げられて、変化球も生きたと思います。今日もバックの守りに助けられて、緊張感のある試合ができたので感謝したいです』

~『日刊スポーツ』2023年6月26日配信記事 より(田中将大のコメント)

これで4勝4敗と、星勘定を五分に戻した田中。日米通算194勝(日本で116勝、米国で78勝)となり、今季の大きな目標である「日米通算200勝」にあと6勝と迫りました。今季10勝を挙げれば到達します。

ちなみに、同じく今季中の日米通算200勝達成が予想されるダルビッシュは、現在193勝(日本で93勝、米国で100勝)。この時点で田中が一歩前に出ました。もっとも、田中にとって個人記録は二の次。それより大事なのはチームの勝利です。田中はヒーローインタビューで、ファンに向けてこんなメッセージを送りました。

『まだまだここからいきますので、ともにがんばりましょう』

~『日刊スポーツ』2023年6月26日配信記事 より(田中将大のコメント)

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