賃上げが来年も続くか 「今年の夏」は重要な分岐点に
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双日総合研究所チーフエコノミストの吉崎達彦が7月28日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。7月27日から始まった日本銀行の金融政策決定会合について解説した。
日銀が長短金利操作を修正
日銀は7月28日に開いた金融政策決定会合で長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の修正を決めた。長期金利の上限0.5%は維持した上で、市場動向に応じて0.5%を一定程度超えても容認する運用を行うことを決めた。
高いものでも買うようになってきている ~うなぎ屋さんの前にも行列
飯田)日本の地合いも変わりつつあります。いままでは海外から入ってくるものの値段、特に原油の値段などが高いため、物価も上がっているとされ、コストプッシュインフレだと言われていました。しかし、徐々にではありますが、国内の内需が回り出しているのでしょうか?
吉崎)ディマンドプルインフレになりつつあるのかなと思います。不思議なのは、いままでだと物価が上がれば、値段が上がったものは買わない。あるいは……。
飯田)安いものを探していた。
吉崎)それがいままでの日本の消費者における習性だったのですが、今年(2023年)の動きは、高くてもみんな買っているところがあります。
飯田)これまでとは違って。
吉崎)個人的に驚いたのは、この間、うなぎ屋さんの前に行列ができていたのです。その店は庶民的な店でしたが、うなぎは3000円~4000円程度するではないですか。
飯田)お重だとそれくらいしますよね。
吉崎)丑の日が近いということもあるのでしょうが。
コロナ禍での強制貯蓄が50兆円 ~1~3月期の貯蓄率は1.6%でコロナ前に戻っている
吉崎)この3年間、コロナ禍で日本銀行曰く、皆さん「強制貯蓄」をしてきた。消費者が使いきれなかったお金が50兆円ぐらい溜まっていると言われています。
飯田)50兆円。
吉崎)この3年間、四半期ベースで見ると、日本の貯蓄率はいちばん高いときで20%まで。つまり可処分所得の8割で皆さん暮らしていた。スーパーに行くのも3日に1回ぐらいでしたから。
飯田)確かにそうですよね。
吉崎)「旦那さんは駐車場に残って、奥さんだけ来てください」というような極端なことをやっていたわけですから、そうなるのは当たり前ですけれど。今年の1~3月期の数字も出ていて、1.6%です。
飯田)貯蓄率1.6%。
貯金もまだあるので、この夏の景気はいいのでは
吉崎)1.6%という数字は、2019年ぐらいのコロナ前の水準に戻っているので、ほとんど普通の状態です。おそらく、日本人の足元の消費性向はほとんど普通に戻っていて、なおかつこの3年間の蓄えもあり、いまはまだうなぎ屋さんにも並んでしまうのです。
飯田)使ってしまうおうかと考える。
吉崎)ただ、いつまでも続くものではありません。
飯田)そうですよね。貯金だから、使ってしまえば終わります。
吉崎)それでも50兆円あるので、半分でいいからみんな使ってくれると、それだけでも景気にはいいわけですけれど。
飯田)GDPの5%分くらい。
吉崎)そうなのです。だから、とりあえずこの夏はいいのではないでしょうか。
お盆の飛行機が取れない ~この景気が秋まで続くのかが気になるところ
吉崎)お盆の飛行機が全然取れないという話があります。また、飛行機が取れたとしても羽田空港の駐車場が空いていないそうです。
飯田)みんな移動するから。
吉崎)この夏は割とみんないいのでしょう。ただ、気になるのはやはり持続性です。
飯田)これが続くのかどうか。
吉崎)秋以降どうなっていくのかが気になるところです。
今年の夏は重要な分岐点になる ~賃上げが来年も続くのかどうか
飯田)そこは少し政策的な後押しをしなければなりませんか?
吉崎)大事なのは、賃上げの勢いが1年だけで終わるのか、来年(2024年)も続くのかというところです。そこをみんな気にしていると思います。
飯田)来年も続くのかどうか。
吉崎)もし続くのであれば、少し使ってしまってもいいかなと思うでしょうし、下手をすると、また元の安いものを探そうというマインドに戻ってしまうかも知れない。今年の夏は、重要な分岐点にきていると思います。
飯田)企業マインドとしては、「上げよう」という感じではないのですか?
吉崎)日銀短観などを見ると、来年の新卒採用がすごい勢いになっています。設備投資欲も強い。だから、どちらかと言えばプラスかなとは思います。
飯田)その流れに冷や水を浴びせるようなイベントがなければいいけれど。
吉崎)そうですね。
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