マイナカード問題の背景にある「日本人のテクノロジー恐怖症」

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ジャーナリストの佐々木俊尚が8月2日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。マイナンバーカードと紙の健康保険証の一体化について解説した。

マイナカード問題の背景にある「日本人のテクノロジー恐怖症」

※画像はイメージです

岸田総理、健康保険証廃止の方針「丁寧に対応する」と強調

2024年秋に現在の健康保険証を廃止する政府の方針について、岸田総理大臣は8月1日、自民党の役員会で、現場の声を踏まえ丁寧に対応を検討する考えを強調した。相次ぐトラブルで廃止時期の延期を含めた見直しを求める声が出ていることを受け、岸田総理は近く関係閣僚と詰めの協議を行い、対応が決まれば8日にも記者会見を開いて説明する予定。

飯田)日程は8日と出ていますが、まだ流動的だとも言われています。

マイナ保険証を拒否する人には「資格確認書」、暗証番号が覚えられない、また施設の方がまとめて薬を貰うという人には暗証番号のないものを発行 ~これで十分では

佐々木)これで変に腰砕けになって欲しくないと思います。「どうしてもマイナ保険証が嫌だ」という人のために、「資格確認書」を発行するという話が出ています。また「4桁の暗証番号が覚えられない」、「老人ホームなどの施設に入っていて、施設の人がまとめて病院や薬局に貰いに行くのに暗証番号があると貰えない」という方に対しては、暗証番号がないものを発行するという対応もしています。それで十分なのではないかと思います。

本人確認ができないなどで、紙の健康保険証の差し戻しが年間500万件 ~マイナ保険証であれば目視で本人確認が可能

佐々木)一方で以前、平井大臣が言っていたのですが。

飯田)元デジタル大臣。

佐々木)紙の健康保険証は年間20億回ぐらい使われていて、そのうち約500万件が差し戻しになっている。つまり本人確認が異なっているなどで「再確認してください」と言われているそうです。

飯田)約500万件が。

佐々木)どれぐらいかわからないけれど、かなり使いまわしの問題が生じているのではないかとも指摘されています。使い回しの件数が約500万件のうち、どれぐらいの割合かはわからないけれど、確かに紙の健康保険証には写真が入っていないので、年齢の近い知り合いのものを持って行っても、そのまま通ってしまうようなケースはあるわけです。

飯田)本人確認のしようがないですからね。

佐々木)だから写真付きのマイナカードにすれば、少なくとも目視で本人確認ができるので、それでいいではないかと。

マイナンバーカード自体には「基本4情報」しか入っていない ~各省庁のサーバーにログインするためのツール

佐々木)「4桁の暗証番号が怖い」、「ICチップが入っていて情報を奪われる」などと言うのであれば、もはやICチップも何も入っていない写真入りのマイナカードをつくって、「これは保険証です」と言えば、別に構わないのではないかと思います。

飯田)あのカードは本人確認のためのツールの部分が大きいわけですね。

佐々木)基本的にあのなかには「基本4情報」、年齢・性別・氏名・住所ぐらいしか入っておらず、情報はすべて各省庁のサーバーにあるのです。そのサーバーにログインするためのツールとして、あのカードがあるだけです。

マイナンバーカードの影響で支持率が低下する岸田政権

佐々木)「あのカード自体に情報が入っているわけではない」と何度も説明されているのだけれど、未だにわからず怒っている人がたくさんいるという状況です。「そんなものは押し切ればいいのではないか?」と思っていたけれど、見ていると、マイナカード問題の影響で岸田政権の支持率がどんどん低下しているのは確かなようです。

飯田)そうですね。

佐々木)いろいろな調査が出ているけれども、なかには3割を切っているものもあって、「菅政権の末期と同じだ」と書かれていました。まさか政権内でも、マイナカードでこれほど支持率が下がるとは思っていなかったでしょう。

日本人の「テック恐怖症」がマイナンバーカード問題で再び出てきてしまった

佐々木)新しい技術に対して、日本人のいわゆるテクノフォビアというか、テック恐怖症のようなものがうまくメディアに煽られた形で噴出してしまった。平成の時代はみんな「テックは怖い」と言い続けたわけではないですか。

飯田)平成時代は。

佐々木)かつて1960年~1970年代の高度成長のころは、科学技術で世界に冠たる経済大国をつくったわけです。

飯田)日本は。

佐々木)しかし、結果的にそれが公害問題や環境問題などを引き起こしたので、テクノロジーにあまりにも偏り過ぎると「本当に環境問題はこれでいいのか?」、「本当にそれが人を幸せにしているのか?」という声が出た。ある種のアンチテーゼは、議論としては有効性があったけれども、あれから何十年も経って2000年代に入り、日本の電機やエレクトロニクスは総崩れになってしまいました。

飯田)各国に追い抜かれて。

佐々木)もはやテクノロジー立国ではなく、テクノロジー後進国になってしまっている状況です。そのなかで、未だに「テクノロジーは大丈夫か?」、「そんなものが人間を幸せにするのか?」などと日本人だけが言っている。この情けない状況を打破しなければいけないわけです。

飯田)そうですよね。

佐々木)世代交代も進み、徐々にテクノロジー恐怖症に打ち勝つ感じになってきていたところで、マイナカードの問題が出てしまった。「また同じことをやっているのか」と思います。

マイナンバーカードの高い利便性を報道しないメディア ~テクノフォビアを煽るだけ

飯田)世論調査を行うと「反対が多いではないか」と言われますが、例えばマイナカードの機能拡張に関して、30代~40代ぐらいまでで切ると賛成が多いのです。本当に世代間の問題になってきていますよね。

佐々木)しっかりと理解している人は、マイナカードで各省庁に散らばっているデータや銀行などのデータを統一してくれると、引っ越しのときも楽だし、病院に行ったときも高額医療費の負担補助制度など、事前にマイナカードで負担してくれます。あとから申請しなくてもいいのです。いろいろなメリットがあるのだけれど、そこがメディアで説明されていません。

飯田)確かに。

佐々木)ひたすら「マイナカードは怖い」ということしか言っていないので、ますますテクノフォビアを煽るだけになっている問題があると思います。ここは何とか頑張って、支持率低下に負けずに押し切って欲しいですね。

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