福岡市「無償おむつ宅配」への「いくつかの疑問」

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ジャーナリストの有本香が8月22日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。福岡市の子育て世帯におむつを宅配する行政支援について解説した。

福岡市「無償おむつ宅配」への「いくつかの疑問」

※画像はイメージです

子育て世帯におむつを宅配する行政支援 ~目的は児童の虐待防止などの見守り

福岡市が市内に住む0歳~2歳の子育て世帯に、定期的におむつなどの育児用品を無償で届けるサービスを8月から始めた。スタートから約1週間で対象者の半数近い約1万8000件が登録した。

飯田)子育て世帯におむつを宅配する行政支援は、滋賀県東近江市が元祖とされているそうです。経済的な支援だけではないのですか?

有本)特に明石市の取り組みが知られていますが、ものを配ることが主眼なのではなく、目的は「虐待防止などの見守り」だそうです。

飯田)虐待防止などの見守り。

有本)孤立しやすい子育て世帯、特にお母さんに声を掛けることを主眼としたサービスだと、明石市の前市長はおっしゃっています。

飯田)泉さん。

有本)今回もそのような趣旨が語られてはいます。福岡市の高島市長はいろいろな改革をしており、子育て支援についても福岡市はいろいろなことをやってきました。それを評価しないわけではないのですが、少し首を傾げるところもあります。

おむつを配ることは本来の行政の仕事ではない

有本)もちろん、0歳~2歳のお子さんがいるお母様方にしてみれば、おむつを宅配してくれたり、必要なものを1ヵ月に1回持ってきてくれるのはありがたいと思います。おむつは嵩張るものですし、買いに行くのも大変ですから。

飯田)重いですよね。

有本)そうは言っても、本来は行政の仕事ではないですよね。

福岡市は財源に恵まれているから「おむつと安心定期便」ができる ~住んでいるところによって格差が生まれる

有本)しかし、福岡市は財源的に恵まれているから、そのようなことができるのです。今回も100億円くらいの資金を用意したと言っていますが、「アイランドシティ」の土地売却で得た約150億円のうち、3分の2をこれに当てているということです。

飯田)おむつの宅配支援に。

有本)福岡市ではできるけれど、同じ県内でも「他の市町村はどうなっているのですか?」ということになると、住んでいる地域によって格差が生まれてしまいますよね。

飯田)そうですよね。

有本)もちろん、全国のなかで子どもの医療費を無償化したり、今回のような至れり尽くせりのサービスを行える自治体はいいのですが、そこに子育て世帯が集まるわけです。他には「子どもがいない」という自治体が出てきてしまいます。この辺りは「どうなのかな」と思います。

経済的に恵まれた地域だけができる施策が日本全体の少子化を防ぎ、子育てしやすい環境をつくれるのか

飯田)自治体レベルであればいいのですが、国全体で行うとなると……。

有本)「公平性がなくなるので全体的にやって欲しい」という流れができた場合、いかがなものかと思います。

飯田)そこにリソースが集中してしまう。

有本)いままで高齢者に厚くお金が回っていた日本の福祉を、もっと子育て世代や若い人たちに回していくことには、私は賛成です。

飯田)子育て世代や若い人に回すということには。

有本)でも、それは果たして「おむつの宅配や生理用品を配ることなのだろうか?」と思うのです。みんな「一生懸命に働いていれば、必要なものは買える」という状況を整えるのが政治の役割です。

飯田)政治の役目は。

有本)福岡市はそもそも人口流入が多く、いろいろな意味で恵まれていて、財源もある程度は確保できる。明石市もそうですが、そのようなところは企業城下町などが多く、財源を確保しやすい状況があります。

飯田)明石市や福岡市のように。

有本)「そのようなところはいいけれど」という施策が果たして、日本全体の少子化や子育てしやすい環境づくりになるのかは疑問です。

「見守り的な虐待防止」はどのような人が声を掛けるのか ~知らない人にどれだけのコミュニケーションができるのか

有本)また、「見守り的な虐待防止」と言うのですが、どのような人が声を掛けているのでしょうか。デリバリーとして持っていく人に、何らかの資格を求めているのかどうか。

飯田)身元の確認などをどこまでやっているのか。

有本)家族でもなかなか行き来がないというなかで、知らない人にどれだけのコミュニケーションができるのかなどの疑問もあります。

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