外交評論家で内閣官房参与の宮家邦彦が8月25日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。搭乗しているジェット機の墜落で死亡したとされるプリゴジン氏について解説した。
プリゴジン氏搭乗のジェット機が墜落 ~撃墜されたのか
飯田)ロシアの民間軍事会社ワグネルの創設者である、エフゲニー・プリゴジン氏が搭乗した自家用ジェット機が墜落しました。撃墜の可能性もあると言われています。
宮家)現時点で真相は不明ですから、確定的なことは言えません。ただ、仮にプーチン大統領が命令したという前提で考えても、いくつか疑問があります。ミサイルで撃墜したと言うけれど、飛んでいるのは相当高いところだったらしいのです。
飯田)高度が。
宮家)そこで命中したのなら粉々になるはずです。しかし、映像を観ると「スーッ」と落ちているでしょう。
飯田)そうですね。
宮家)つまり内部で爆発が起きたのではないかなど、いろいろなことが言われています。しかし、仮にそうだとして、「爆発音を2回聞いた」と言う目撃者の証言もあるのですが、あんなに高いところで爆発音が聞こえるのでしょうか?
飯田)確かにそうですね。
独裁国家での裏切りは「死」が普通
宮家)このように、いろいろ疑問はあります。ですから自信を持っては言えませんが、私の見立てでは第1に、バイデンさんも言っていたけれど、全く驚きませんね。
飯田)驚かない。
宮家)「やっとか」という感じです。独裁国家では、裏切り者は「死」なのです。中東ではごく普通ですよ。
時間を掛けて慎重に行った
宮家)第2に、かなり時間を掛けていますよね。もし仮にミサイルで撃墜するとしても、これまでもプリゴジンさんがいろいろなところにプライベートジェットで移動していることを知らないわけがないので、その気になればいつでも落とせるでしょう?
飯田)そうですよね。
宮家)早めに殺してしまったら何が起こるかわからないから、慎重に時間をかけて泳がせ、最も効果的な方法を抹殺を行った。すなわち、できるだけ誰がやったのかわからない形を取るスタイルだと思います。その意味では、プーチンは時間を掛けて慎重に進めたのだなと思います。
短期的には、これで生き延びたプーチン大統領 ~中長期的には安定方向にいかない
宮家)3つ目は、やはりプーチンは怖い人だということです。逆らってはいけない。プリゴジンさんが何を間違えたかは知りませんが、プーチンさんとの関係はいいとして、軍部の人たちを批判したと言われているけれど、そううまくはいきませんよ。みんな一蓮托生なのだから。その意味ではプリゴジンは判断ミスをしたのだと思いますが、残念な結果でしょうね。
飯田)一蓮托生なのだから。
宮家)残念な結果という点では、ワグネルの人たちもそうです。ワグネルはSNSで反発を示しているようですが、そうは言っても状況は難しい。ワグネルの人たちが何万人いるかは知らないけれど、仮にその人たちが動いたとしても、既に勝負はついていると思います。
飯田)勝負はついている。
宮家)プーチンさんはこれで政治的に、少なくとも短期的には生き延びた。しかし今後安定するかと言えば、そうではないでしょうね。国内情勢がすぐに緊迫するかどうかは別として、中長期的には、決して安定方向にはいかないと思います。
時間を掛けて泳がせ、悪影響が小さい最適なタイミングで行った
飯田)ワグネルは正規軍ではできないような汚れ仕事や、あるいはアフリカなどでの治安維持行動として、いろいろな工作活動にも携わっています。
宮家)それはそれなりに役に立っていた、ということです。間違ってはいますけれどね。しかし、どうしてもプリゴジン氏でなければいけない、ということはありません。
飯田)他の人でもよかった。
宮家)そういう仕事をする人が他にいればいいわけです。反逆者と、それに従ってきた人たちがいなくなれば、別の人にやらせるだけのこと。同じような汚れ仕事をやるなら、残ったワグネルに続けさせることは十分あり得ると思います。
飯田)なるほど。
宮家)利用価値があるわけだから、完全に壊したくない。だから時間を掛けて泳がせ、最適な、悪影響が小さいタイミングで抹殺を行ったのではないかというのが、私の仮説です。
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