米韓合同軍事演習に強く抗議する「北朝鮮ならではの事情」

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外交評論家で内閣官房参与の宮家邦彦が8月25日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。北朝鮮の偵察衛星の打ち上げ失敗について解説した。

米韓合同軍事演習に強く抗議する「北朝鮮ならではの事情」

短距離弾道ミサイルとみられる「新型戦術誘導兵器」の発射実験を視察する北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記(手前)。朝鮮中央通信が2022年4月17日に配信した(朝鮮中央通信=共同) 写真提供:共同通信社

北朝鮮が偵察衛星の打ち上げに失敗、10月にも3回目を実施か

北朝鮮国営の朝鮮中央通信は、国家宇宙開発局が北西部の東倉里(トンチャンリ)にある西海衛星発射場で8月24日の明け方、軍事偵察衛星「万里鏡(マルリギョン)1号」を新型ロケット「千里馬(チョルリマ)1型」で打ち上げたものの、失敗したと伝えた。ロケットの1段目と2段目は正常に飛行したものの、3段目で非常爆発システムにエラーが発生した。原因を短期間のうちに徹底的に究明し、10月にも3回目の打ち上げを行うとしている。

飯田)10月10日は朝鮮労働党の創建記念日です。

労働党の記念日の前だから打ち上げるのではない

宮家)いつも申し上げている通り、ミサイルは花火ではありませんから、記念日に打ち上げるものではありません。「万里鏡1号」は5月31日に打ち上げられましたが、2段目エンジンの始動時に異常が出て失敗した。それは今ある程度、改修されているわけですよね。

飯田)2段目エンジンの部分は。

宮家)それから3ヵ月が経ち、また失敗した。そして、10月に3回目を打ち上げるということですが、10月まではあと2ヵ月です。次は成功するのか。技術的に軽微なものであれば成功するかも知れませんが、正直言ってわかりません。

飯田)成功するかどうかは。

1998年にテポドン1号を発射

宮家)歴史的に考えると、大陸間弾道ミサイル(ICBM)、つまりアメリカに届く精度のいいICBMをつくろうとする努力が始まったのは忘れもしない、「テポドン1号」が発射された1998年8月31日です。

飯田)1998年。

宮家)あのとき私は、北米局の安全保障条約課長に8月2日に赴任したばかりで、「お前の最初の仕事はミサイルディフェンス研究の開始だ」と言われました。しかし、その作業は当時官房長官に止められていたので、「ミサイルディフェンス」の研究はまだ開始されていなかったのです。

飯田)そのときには。

宮家)「どうしたものか」と思っているところに北朝鮮がテポドンを撃ってくれたおかげで、翌日にミサイルディフェンスの研究がOKになりました。忘れもしない、これが1998年です。

飯田)テポドン1号の発射が。

宮家)それから10年ぐらいは、ほとんど撃っていませんでした。あのころはまだ対話の余地があったかも知れません。ですが、2009年以降は、何年か置きに次々と撃つようになったのです。

今後も粛々と開発を進めていく

宮家)要するに北朝鮮は、技術的に可能になったらミサイルを撃つわけですよ。「記念日前の成果ならず」という報道もありますが、記念日のためだけにやっているわけではないし、「威信が傷つく」などと言うけれど、自分で「失敗した」と言っていますからね。これで傷つくなら、とっくに倒れていますよ。

飯田)そうですね。

宮家)いつも申し上げていることですが、北朝鮮は今後も粛々と核開発を続けていくでしょう。ただ単に核弾頭を小さくするだけではなく、いわゆる運搬手段の面でも、アメリカに届くようにICBMの開発を進めていくということです。

米韓合同軍事演習があれば同じように「軍事演習」を行わなければならない北朝鮮

飯田)タイミング的には、24日午前0時~31日までに打ち上げると指定されていました。時期がちょうど米韓演習と重なりますね。

宮家)どうせ打ち上げるのならば、日米韓首脳会談のあとの米韓合同軍事演習に当てるということでしょう。今回はかなり大規模に行われますからね。米韓合同軍事演習があると、北朝鮮は困るようですね。いつも怒って抗議するではないですか。

飯田)そうですね。

宮家)なぜかと言うと、本気で米韓が共同演習を行えば、北朝鮮も同じようなことをやる必要があるわけです。同じようなことをやると、せっかく貯めていた燃料がなくなってしまうのですよね。

飯田)北朝鮮軍の。

宮家)弾薬はわかりませんが、燃料がいちばん困るのではないかと思います。だから本当はやって欲しくないし、そのために「やめてくれ」と言っているのだろうと推測する人もいるくらいです。

韓国で6年ぶりに全国で行われた「民防衛訓練」 ~北朝鮮の攻撃を想定

飯田)韓国では23日、北朝鮮による空襲を想定した避難訓練「民防衛訓練」が全国で実施されました。すべての国民が対象となっています。

宮家)最近は少し緩くなったけれども、いつ何が起きるかわからないので、訓練するのは当然だと思います。

飯田)車なども止めて、全員シェルターに避難する。

宮家)こういうものは筋肉と同じで、弛緩してしまったら終わりです。文在寅政権の時代には、ほとんど行われていませんでした。米軍の兵隊さんも数年で代わっているわけですから。筋トレと同じで、普段から鍛えておかなければならない。

飯田)巨大な行政組織を動かす場合、いきなり「やれ」と言われてもできないわけですか?

宮家)できませんよ。そもそも、どんなに練習を重ねても本番では必ずしもうまくいかない。戦争ですからね。そのためにも普段の努力が必要なのだけれど、つい平和が続くと「まあ、いいか」と思ってしまうのです。それが落とし穴だと思います。

飯田)キヤノングローバル戦略研究所の峯村健司さんが、月刊誌『Voice』で連載を始めましたけれど、まさに筋トレの部分を日本もやるべきではないかと提言されていました。

宮家)日本の場合、「筋トレ」の前に筋肉を鍛える「機材」、枠組みがないのです。

飯田)道具がないということですか?

宮家)法的な問題があまりにも多く、やりたいことができない現状があるので、まずは機材を買うことから始めなければいけません。

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