「新経済回廊」をG20で発表したインド・モディ首相の本当の狙い
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戦略科学者の中川コージが9月15日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。G20のリーダーらが発表した「新経済回廊」について解説した。
インドとヨーロッパを結ぶ「新経済回廊」がG20で発表
アメリカのバイデン大統領やインドのモディ首相を含むG20諸国のリーダーらは9月9日、インドと中東、ヨーロッパを鉄道や航路などで結ぶ、大規模な「経済回廊」の建設計画を発表した。「インド・中東・欧州経済回廊(IMEC)」は、インドとアラビア海を結ぶ回廊と、アラビア湾とヨーロッパを結ぶ回廊の2つで構成され、貿易コストを削減して雇用を創出し、温室効果ガスの排出を削減、貿易の効率を高めるという。
飯田)インドはこういう野心的な考えをいろいろ出してくるのですか?
中国の「一帯一路」に対抗か ~モディ首相の来年の総選挙に向けたアピールか
中川)米印の間でのことだと思いますが、中国の経済圏構想「一帯一路」に対抗するものだと言われています。モディ首相がG20に先駆け、来年(2024年)の総選挙に向けて比較的、内政向きのアピールとして打ち上げたという印象です。
インフラから技術輸出までパッケージにした一帯一路に対して、「経済回廊」は貿易のための回廊を建設するだけ
中川)アメリカとしても、中国を牽制するために一応は乗った。中身を見ると、貿易についてはインドの物品の輸出入ということで、アメリカのバックアップでいけると思います。
飯田)貿易については。
中川)しかし、中国の一帯一路に対抗できるかと言うと、中国の場合は貿易だけでなく、インフラや金融、対外直接投資、技術輸出も含めてのパッケージなのです。
IPEFのような形で小出しに牽制するが、徹底的に中国を攻撃しようとはしない
中川)それに対して、貿易として線路を直結しただけの形で、果たしてどれだけ対抗できるのか。アメリカもインド太平洋経済枠組み(IPEF)のように、小出しでいろいろと中国を牽制していますが、徹底的に中国を攻撃する感じではありません。IPEFも貿易に関しては関税を抜くなど、弱いではないですか。
飯田)最近あまり名前を聞かないですものね。
中川)いろいろやっているけれど、「踏み絵にさせない」というアメリカ側の意向も踏まえているのです。インド側は内政ファクターで行っている感じがするので、両方とも微妙に消極的な気がします。
「3つのC」をなくす
中川)モディ首相について選挙目的だとわかるのは、インドには「カースト」がありますよね。
飯田)カースト。
中川)「3つのC」というようなことを言っています。「コラプション」……汚職、「カーストイズム」……カースト主義、そして「コミュナリズム」というイスラム教とヒンドゥー教の対立のようなものがあり、その「3つのC」をなくしていくと大宣言したのです。
飯田)3つのCをなくす。
中川)これはインド社会を変えることになるので、2047年の「独立100周年までにやる」と言っているのですが、先のことだから、自分では達成できなくてもいいのですよ。
飯田)20年以上先ですからね。
中川)とりあえず社会問題を語ることで、内政でも動いている感じを出し、「長期に向けてボールを投げておけばいい」という印象です。選挙対策が強い気がしますね。
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