「新経済回廊」をG20で発表したインド・モディ首相の本当の狙い

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戦略科学者の中川コージが9月15日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。G20のリーダーらが発表した「新経済回廊」について解説した。

「新経済回廊」をG20で発表したインド・モディ首相の本当の狙い

2023年9月9日、日印首脳会談~出典:首相官邸HPより(https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/actions/202309/09g20.html)

インドとヨーロッパを結ぶ「新経済回廊」がG20で発表

アメリカのバイデン大統領やインドのモディ首相を含むG20諸国のリーダーらは9月9日、インドと中東、ヨーロッパを鉄道や航路などで結ぶ、大規模な「経済回廊」の建設計画を発表した。「インド・中東・欧州経済回廊(IMEC)」は、インドとアラビア海を結ぶ回廊と、アラビア湾とヨーロッパを結ぶ回廊の2つで構成され、貿易コストを削減して雇用を創出し、温室効果ガスの排出を削減、貿易の効率を高めるという。

飯田)インドはこういう野心的な考えをいろいろ出してくるのですか?

中国の「一帯一路」に対抗か ~モディ首相の来年の総選挙に向けたアピールか

中川)米印の間でのことだと思いますが、中国の経済圏構想「一帯一路」に対抗するものだと言われています。モディ首相がG20に先駆け、来年(2024年)の総選挙に向けて比較的、内政向きのアピールとして打ち上げたという印象です。

インフラから技術輸出までパッケージにした一帯一路に対して、「経済回廊」は貿易のための回廊を建設するだけ

中川)アメリカとしても、中国を牽制するために一応は乗った。中身を見ると、貿易についてはインドの物品の輸出入ということで、アメリカのバックアップでいけると思います。

飯田)貿易については。

中川)しかし、中国の一帯一路に対抗できるかと言うと、中国の場合は貿易だけでなく、インフラや金融、対外直接投資、技術輸出も含めてのパッケージなのです。

「新経済回廊」をG20で発表したインド・モディ首相の本当の狙い

2023年9月9日、日印首脳会談~出典:首相官邸HPより(https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/actions/202309/09g20.html)

IPEFのような形で小出しに牽制するが、徹底的に中国を攻撃しようとはしない

中川)それに対して、貿易として線路を直結しただけの形で、果たしてどれだけ対抗できるのか。アメリカもインド太平洋経済枠組み(IPEF)のように、小出しでいろいろと中国を牽制していますが、徹底的に中国を攻撃する感じではありません。IPEFも貿易に関しては関税を抜くなど、弱いではないですか。

飯田)最近あまり名前を聞かないですものね。

中川)いろいろやっているけれど、「踏み絵にさせない」というアメリカ側の意向も踏まえているのです。インド側は内政ファクターで行っている感じがするので、両方とも微妙に消極的な気がします。

「3つのC」をなくす

中川)モディ首相について選挙目的だとわかるのは、インドには「カースト」がありますよね。

飯田)カースト。

中川)「3つのC」というようなことを言っています。「コラプション」……汚職、「カーストイズム」……カースト主義、そして「コミュナリズム」というイスラム教とヒンドゥー教の対立のようなものがあり、その「3つのC」をなくしていくと大宣言したのです。

飯田)3つのCをなくす。

中川)これはインド社会を変えることになるので、2047年の「独立100周年までにやる」と言っているのですが、先のことだから、自分では達成できなくてもいいのですよ。

飯田)20年以上先ですからね。

中川)とりあえず社会問題を語ることで、内政でも動いている感じを出し、「長期に向けてボールを投げておけばいい」という印象です。選挙対策が強い気がしますね。

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