米「政府閉鎖」の可能性 予算を拒絶する共和党強硬派の狙いは?
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経済アナリストのジョセフ・クラフトが9月26日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。政府閉鎖の恐れが出ているアメリカ政府について解説した。
アメリカ政府が来年度予算案をめぐり協議難航 ~10月1日以降に政府機関閉鎖か
アメリカの会計年度末が9月30日に迫るなか、来年度(2024年度)予算案をめぐる協議が難航している。民主党と共和党の間で合意できない場合、10月1日以降、政府閉鎖に追い込まれ、連邦機関の業務が停止する。
飯田)来年度の歳出規模については合意しているのですが、どういう状況なのでしょうか。つなぎ予算ができないということですか?
共和党の極右派議員が予算を拒絶 ~9月末までに合意できなければ政府機関の閉鎖に
クラフト)どういうことなのでしょうね。要するに、共和党側の極右派の議員が10名くらいいるのですが、この人たちが基本的に反対しているのです。共和党側は下院の過半数を有しており、民主党との議席差がわずかなので、少人数でも反対できるのです。「共和党側がまとまっていない」ということです。
飯田)まとまっていない。
クラフト)さかのぼると、今年(2023年)のはじめに債務上限問題があったとき、共和党のケビン・マッカーシー下院議長がホワイトハウスと協議して合意しましたが、それに対して不満を持つ共和党の議員が「簡単に譲歩した」ということで、いまになって予算を人質に反発している状況です。
飯田)債務上限問題の件で。
クラフト)政治が二極化し、分断してしまっているので、予算の内容よりも政局がらみの動きになっているのです。これで政府が閉鎖したら本末転倒です。9月末までに合意できないと、また政府機関の閉鎖に入ってしまいます。
連邦図書館や公園、美術館から閉鎖
飯田)かつてオバマ政権のときにも政府機関が閉鎖しましたが、どうなってしまうのでしょうか?
クラフト)最も長かったのが2018年のトランプ政権時代です。あのときは5週間でした。政府閉鎖と言っても、一斉に閉鎖するのではありません。エッセンシャルワーカーと言われる重要な業種に就く政府職員は、法律により働き続けなくてはならないのです。
飯田)エッセンシャルワーカーは。
クラフト)真っ先に閉められるのが、連邦図書館や公園、美術館です。そのあとは重要性の順序で閉鎖していきます。最後が軍になります。
マッカーシー下院議長が取りまとめられるかどうか ~極右派の議員が満足できれば賛成に回る
飯田)解決の糸口はないのでしょうか? 妥協できそうにはないですか?
クラフト)共和党内の政局なので、解決の糸口は難しいと言えば難しいのですが、逆に、政治なので了承すればすぐにひっくり返ります。この辺りをケビン・マッカーシー下院議長がどれだけ取りまとめられるかです。
飯田)下院議長が。
クラフト)彼も力がないので、党をまとめられていません。1つの茶番ですよね。ここで少人数の極右派が自分たちの選挙区に有利な政策、あるいは相手に政治的な攻撃をして、一定程度満足できれば、おそらく賛成に回ると思います。
飯田)ある程度満足できれば。
クラフト)おそらく週末ギリギリ、ないしは1~2週間の閉鎖に入る。有権者から不満が出すぎない程度に行って、「そろそろ落としどころをつけようか」という茶番の部分もあると思います。
飯田)「このくらいで勘弁してやる」と。
クラフト)そうですね。
大統領選が近く、このような政局がらみの対立が起こりやすい
飯田)でも、各々の動きのなかで、マーケットは振れますよね。
クラフト)振れますし、それ以上に国民生活に影響が出ますので、本当に酷い話です。アメリカの政局がここまで分断し、問題が避けられない状況になってしまったのは悲しいことです。今年は特に、大統領選の前年ですので、このような政局がらみの対立が起こりやすいのです。
飯田)極端な行動や意見が出やすいですか?
クラフト)政府閉鎖を行う、あるいは対立することで、「選挙区で票が獲れるか獲れないか」というところで彼らは戦っています。保守層が多い選挙区ですので、民主党、あるいは共和党エスタブリッシュメントに対して抵抗すれば票につながるという目論見ですね。
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