数量政策学者の高橋洋一が10月11日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。2ヵ月連続で低下した景気ウォッチャー調査について解説した。
9月の街角景気、2ヵ月連続で低下 ~物価高で回復に一服感
内閣府が10月10日に発表した9月の景気ウォッチャー調査(街角景気)によると、3ヵ月前と比べた現状判断指数は49.9と、前月比で3.7ポイント低下し、2ヵ月連続で前月を下回った。物価高が続くなか、街角の景気の回復に一服感がみられている。
飯田)調査期間は直近9月25~30日で、好景気と不況の分かれ目となる50を8ヵ月ぶりに下回りました。
高橋)「ちょっと一服」という感じなのでしょうね。街角ウォッチャーは実態を出しているのですよ。マクロの数字を見ると、内閣府の方は「需給ギャップは解消した」と言っているでしょう。
飯田)そのようですね。
物価の上昇に比べて所得の上昇が鈍い
高橋)それは嘘だということです。解消していないからこういう形になる。需給ギャップが解消しなければ、所得は上がりません。そういう意味では、所得の上がりと物価の上がりで、「所得の上がりが鈍い」ことを表しているのではないでしょうか。
飯田)物価の上昇に比べて所得の上昇が鈍い。
高橋)だからこのような数字が出るのです。有効求人倍率も同じような感じですね。少し高くなっていますが、少しずつ下がっている。ウォッチャー調査と有効求人倍率の動きは似ているのです。
「需給ギャップがプラスに転じた」は嘘 ~サバを読んでいるので3%くらい残っている
高橋)それを見ると、「需給ギャップが解消したというのは嘘ではないか」と思いました。はっきり言えば、もともと嘘なのです。2%ぐらいサバを読んでいて、GDP統計では1%サバを読んだから、いまでも3%ほどあるはずです。
飯田)需給ギャップの部分が。需要が足りていない。
高橋)3%以上ね。だから経済対策で「15兆円以上が必要」と言っているのです。そこでも「需給ギャップがなくなったのだから大丈夫だろう」と言いますが、有効求人倍率や街角ウォッチャー調査を見ると、「いまひとつではないか」とみんな思うのではないでしょうか。
需給ギャップが埋まれば賃金が上がる確率が高くなるはず ~需給ギャップが解消されたわりには企業倒産も増加
飯田)確かに足元の実感としても、賃金が上がらないなかで物価が上がっており、苦しいですよね。
高橋)賃金と物価の上がり方の問題です。少しのズレはありますが、需給ギャップがなくなると、賃金の方が上になる確率が高くなります。
飯田)需給ギャップが埋まれば。
高橋)「もう需給ギャップは解消した」と言っているけれど、同じ内閣府でいろいろと調査するので、「そうではない」とわかってしまうのです。
飯田)9月の企業倒産も18ヵ月連続で増加しています。
高橋)需給ギャップがあるうちは企業倒産があり、失業率も少し残るのです。失業率が残って賃金が上がりにくくなるのだけれど、それを企業の方に直すと、企業倒産という形で出るわけです。こういう状況も、「需給ギャップが解消されたわりに変ではないか」と言えます。
飯田)企業倒産を報じる記事では、いわゆる無利子・無担保、「ゼロゼロ融資の返済」によるものだと指摘されていますが。
高橋)それもあるけれど、根本的なところは需給ギャップが関係していると思います。
補正予算はどうなるのか
飯田)補正予算はどうなるのでしょうか?
高橋)いまのところ、何となく減税の話が出ているからいいけれど、あとは規模感ですよね。「減税15兆円」くらいできれば立派なものです。ただ、財務省は「需給ギャップが解消されたからそんな必要はない」という言い方をするのではないでしょうか。
飯田)財務省は。
高橋)税収はあるけれど、「それは他のところに使いましょう」というような言い方をしていますよね。
世耕氏「所得税と法人税で15兆円」 ~積極財政議連「消費税と所得税の減税で20兆円」
飯田)需給ギャップが3%程度あるという話ですが、GDP比で3%と言うと、1%で約5兆円余り。
高橋)だから「15~20兆円の間」という規模感です。それを埋めなければ悪い統計や、景気に対してよくない数字が出てきやすい。需給ギャップをなくせば改善するのですが。
飯田)自民党のなかでも、「積極財政を進めよう」という人たちが声を上げています。
高橋)いまのところ数字をきちんと言っているのは、自民党の「責任ある積極財政を推進する議員連盟」と、世耕弘成さんぐらいです。世耕さんは消費税については言いませんが、「所得税と法人税で15兆円」と言っています。
飯田)所得税と法人税で15兆円。
高橋)積極財政議連は「消費税と所得税の減税で20兆円」と言っており、多分ここが正しい解なのだと思います。それに引きずられて茂木さんも「税収増を国民や企業に還元することもあり得る」と言っていますが、数字は言わない。公明党も「所得税の減税が必要だ」と言っていますが、数字は言わないですね。
飯田)公明党も。
高橋)いまや数字の議論になりつつあるような気がしますが、財務省もまた巻き返していて、「減税はダメだ」と言っています。
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