宇宙ステーションの窓は「地球側」にしか設置されていない事実
公開: 更新:
黒木瞳がパーソナリティを務めるニッポン放送「黒木瞳のあさナビ」(10月12日放送)にJAXA宇宙飛行士の金井宣茂が出演。宇宙飛行士の仕事について語った。
黒木瞳が、さまざまなジャンルの“プロフェッショナル”に朝の活力になる話を訊く「黒木瞳のあさナビ」。10月9日(月)~10月13日(金)のゲストはJAXA宇宙飛行士の金井宣茂。4日目は、宇宙空間から見た景色について---
黒木)国際宇宙ステーションに168日間、長期滞在なさった金井さんですが、地球に帰るときは寂しかったですか?
金井)「ビター・スウィート」という言葉がありますが、半々ですね。「やっと地球に帰れる」という気持ちと、「もう宇宙を離れなければいけないのか」という気持ちと、どちらもありました。
黒木)また行きたいですか?
金井)チャンスがあれば、2回でも3回でも行きたいと思います。
黒木)船外にも出られたことはあるのですか?
金井)ラッキーなことに、宇宙ステーションのメンテナンス作業をする船外活動を行わせていただく機会がありました。
黒木)そのときはどんな感じでしたか?
金井)宇宙ステーションの内部から外を見ると、地球が青く大きく広がっているのですが、宇宙ステーションの窓は地球側にしかありません。
黒木)地球側だけにしかないのですね。
金井)ですので、地球の反対側にある深宇宙は、なかなか見る機会がありません。宇宙ステーションの外に出てみると、もちろん眼下には大きい地球が見えるのですが、上の方、あるいは地球と反対側には、漆黒の宇宙空間が広がっています。その対比がいまでも記憶に残っています。
黒木)宇宙飛行士にならないと体験できないような感動ですね。私の好きな映画に『インターステラー』があるのですが、実際に船外に出て宇宙の上と下をご覧になっていると、時空は超えられると思いますか?
金井)イマジネーションは容易く物理法則を超えて遠くをイメージすることができるので、そのようなインスピレーションを受けるには、宇宙は最適な場所だと思います。
黒木)インスピレーションを受ける場所ですか……。まだまだ気軽に行けるところではありませんが、可能性は秘めているわけですよね?
金井)今後、民間宇宙活動は広がっていくと思います。まだ宇宙旅行のチケットは高価ですが、手が届くような旅行価格になっていくのではないでしょうか。
黒木)近い将来ですか?
金井)5~10年くらいで価格が下がっていくのではないかと期待しています。
黒木)しかし、すごいスピードで行って、また戻ってくるのですよね? そこはどのように対処したらいいのですか?
金井)人間の体はよくできていて、無重力や宇宙空間にすぐ適応できるのです。
黒木)宇宙空間にも。
金井)行った直後は宇宙酔いで気持ち悪さを感じる人もいますが、それも2~3日でよくなります。1週間くらい宇宙に滞在すると無重力も体験できて、地球もよく眺めて帰ってくることができるので、最もおすすめの旅行プランです。
黒木)地球に戻って嬉しさ半分、切なさ半分とおっしゃっていましたが、重力がものすごく負担なのだそうですね?
金井)そうなのです。宇宙空間はゼロ重力です。重力のあるところからゼロ重力に行くのは体が楽なのです。宇宙で生活していても、ソファで横になっているのと同じような負荷しか掛かりません。それに慣れた体がまた地上に戻ってくると、体の重いこと。腕や足が非常に重く感じます。
黒木)どのくらいで戻るのですか?
金井)1週間くらいすれば問題なく活動できるようになりますが、宇宙に行く前の状態に戻るまでは3ヵ月ほど掛かりました。
黒木)5ヵ月半ほど宇宙にいらしたから。
金井)同じくらい掛かってもおかしくないのかなと思います。
黒木)人間の体はすごい能力を秘めているのですね。対応能力と言うのでしょうか。
金井)人間の対応能力はすごいですね。
黒木)それを、身をもって体験なさったのですね。
金井)40歳を越えて歩き方を学ぶというのは、面白い経験でした。
黒木)重力が大変だったということですね。
金井)赤ちゃんのようなことを感じました。
金井宣茂(かない・のりしげ)/ JAXA宇宙飛行士
■1976年、東京都生まれ。
■防衛医科大学校医学科を卒業し、海上自衛隊に入隊。
■防衛医科大学校病院や自衛隊大湊病院、自衛隊呉病院、海上自衛隊第1術科学校衛生課外科医師・潜水医官として勤務(※潜水医学は、長期閉鎖環境下での潜水艦乗組員の健康や精神状態についての研究などを行うもの)。
■2005年、アメリカ海軍の潜水医学研究施設に留学した際、潜水医学専門医が宇宙飛行士になったことに驚き、宇宙飛行士を志すようになった。
■2009年9月、JAXAから宇宙飛行士候補者として選抜される。
■2011年7月に宇宙飛行士に認定され国際宇宙ステーション(ISS)搭乗。
■2017年12月からISS第54次/55次長期滞在クルーとして宇宙に168日間滞在 。
■現在は、ストレスのなかでどうやって元気に過ごすかなど、閉鎖環境下における宇宙飛行士の精神心理サポートを中心に宇宙医学を研究する他、月面探査車(ローバー)の開発にも尽力されている。
番組情報
毎朝、さまざまなジャンルのプロフェッショナルをお迎えして、朝の活力になるお話をうかがっていく「あさナビ」。ナビゲーター:黒木瞳