経済アナリストの馬渕磨理子が11月27日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。2023年度補正予算案について解説した。
2023年度補正予算案、参議院で論戦
政府の新たな経済対策の裏付けとなる2023年度補正予算案が11月24日に衆院を通過し、27日から論戦の舞台が参議院に移る。与野党は岸田総理大臣と全閣僚が出席する総括質疑を27、28日の2日間で行う日程で合意。与党は今週半ばでの成立を目指す。
長い目で見て必要なものへの役割が変わってきた補正予算 ~政府から国民に伝えるメッセージがぼやけている
飯田)衆院を通過したときは与党である自公と、日本維新の会、国民民主党などの賛成多数で可決されました。総額は約13兆1000億円と言われていますが、中身をご覧になっていかがですか?
馬渕)GDPギャップもまだあるので、規模はいいかなと思います。需要と供給、国民と企業の両方を考えた内容ということで、企業に関してはかなりいいのです。しかし、国民のところが少し足りないかなと思います。補正予算の役割が少し変わってきている。本来は臨時的な対応のためにつくるものですが、ここ何年も、決して臨時的なものではなく、長い目で見て必要なものばかりが入っています。
飯田)補正予算の役割が変わりつつある。
馬渕)ポジションとしては、「政府からのメッセージとして国民に伝えていく」という役割に変わってきているのかなと思います。自動車、半導体、農林水産の輸出、インバウンドという感じで、「日本がこれから何で稼ぐのか」というメッセージの打ち出し方が大事です。その上で日本国民がどのように潤っていくのかですが、正直なところ「メッセージ性がぼやけているな」と感じます。この辺りを明確に話して欲しいのがまず1点目です。
「住宅への100万円補助」は「子育て支援」の名目ではないのでは ~それでは消費につながらない
馬渕)1つの事例ですが、特に見せかけになってしまっているのが、例えば「住宅購入に最大100万円の補助」という政策があります。これは「子育て支援」の名目になっていますが、都心で住宅を買ったときに100万円を補助され、「それで子どもを産んでください」と言われても、何かずれているなと感じます。
飯田)そうですよね。
馬渕)おそらくこの政策の本来の狙いは、脱炭素対策なのでしょう。「省エネ性の高い住宅を買った場合に補助する」ということなので、政策としてはそちらなのです。しかし、脱炭素を進めることで企業に恩恵があるようなところを「子育て支援」と言ってしまうと、見せかけで何か違うと感じ、国民はモヤモヤしてしまいます。これで「消費するか」と言われても、しないと思います。
飯田)違うではないかと。
馬渕)いまは一点突破で「消費を促す」ことをしなければいけません。いろいろなところに細かくお金を分けている場合ではないと思います。本当に日本をデフレから脱却させたいのであれば、もう少し予算を集中させて、使うべきところに使っていく必要があります。いま言っても遅いのですが、消費減税を行うのが最もよかったのではないかと思います。財源がないなどと言いますが、絞ればあるでしょう。
飯田)看板と中身の違いのようなものは、2023年のはじめに岸田総理が「異次元の少子化対策」を示し、そこに何でもいいからこじつけられるようなものはないかと、各省がいろいろな政策をこじつけてきたところもありますよね。
馬渕)縦割りの弊害が明らかに出ています。各省庁ごとに取らなければいけない予算はあると思いますが、本当に国民のためになるのかどうかということと、訴えている中身が一致しなければ、国民は「ずれているな」とわかります。「どうも見せかけの政策で、脱炭素をやりたいのだな」と白けてしまうので信頼できない。「本当にデフレから脱却して、自分たちはものを買ってもいいのだろうか」というような不信感につながっていると思います。
岸田総理がトリガー条項凍結解除の検討を指示
飯田)柏市の“てっちゃん”さん(70歳・男性)からメールをいただいています。「やっと岸田総理がガソリン税のトリガー条項の凍結解除を検討すると発言しました。岸田さんは検討使と揶揄されているので、あまり信じられないのですが、それでも一歩前進ですよね。どのくらい実現性があるのでしょうか?」というご意見です。いかがでしょうか?
馬渕)前向きに話し合うということなので、発動すると思います。野党の方々に「今回の補正予算案に協力して欲しい」という思いもあるので、「歩み寄りをしながら」行うのでしょう。ただ、現段階でやれることは限られているので、「減税の色合いを出したい」というのは与党としてもあると思います。そのなかでトリガー条項を発動できれば、明らかに国民生活にも影響が出るので、やったらいいのではないでしょうか。
飯田)ガソリン税に乗っている税金のなかで、本則とそれ以外の上乗せ分、昔は暫定税率と言っていましたが、この部分がいまは復興財源になっています。一定程度ガソリンの値段が上がったら、ここを解除して「トリガー条項を使ってガソリン代を下げる」ということになっていました。馬渕さんはよく地方や中小企業を回っておられますが、企業にとってガソリン価格は死活問題ですよね?
馬渕)地方での講演などで、いろいろな経営者にお会いするのですが、特に地方は車社会なので、ガソリン価格の高騰は経費や生活を圧迫します。私たちが思っている以上に中小企業の経営に関わっていると思います。
トリガー条項を発動してガソリン価格を下げることが第一歩としてふさわしい
飯田)一時、補助金でやるのか減税でやるのかが議論になりました。
馬渕)補助金は一時的であり、減税となると恒久的になりやすいのです。しかし、いずれ(1リットル当たりの価格が3ヵ月連続で)130円を下回れば、また約25円の課税枠が復活するのですから、一旦は導入した方がいいと思います。補助金のおかげで40円ぐらいサポートできているというメリットもありますが、いまの段階ではトリガー条項を発動して下げていく方向性が、第一歩としてはいちばんいいと思います。
補助金「効果があったのかどうか」に約62億円掛けて調査する無意味さ
馬渕)最も問題だったのが、補助金に対して効果があったのかどうか、約62億円掛けて調査したことだと思います。約6兆円の補助金を出し、それに効果があったかどうかを60億円以上かけて調査したのでは意味がありません。スパッとトリガー条項で減税すればいいと思います。
飯田)そうですよね。
馬渕)財務省は「財源がなくなる」と言いますが、130円まで戻れば復活するのですから、ダイナミックに動いていけばいいのではないでしょうか。
飯田)「トリガー条項は1.5兆円くらい財源が必要だからダメだ」などと言いますが、補助金には6兆円くらい掛かっていますよね。
馬渕)ずいぶんと金額が積まれています。
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