黒木瞳がパーソナリティを務めるニッポン放送「黒木瞳のあさナビ」(11月24日放送)に同時通訳者の田中慶子が出演。同時通訳者という職業について語った。
黒木瞳が、さまざまなジャンルの“プロフェッショナル”に朝の活力になる話を訊く「黒木瞳のあさナビ」。11月20日(月)~11月24日(金)のゲストは同時通訳者の田中慶子。5日目は、英語を話すために必要な心構えについて---
黒木)田中さんは現在、同時通訳の経験を活かして、コミュニケーションのアドバイスをする「コーチング」の分野でも活動されています。コミュニケーションは通訳の仕事とつながっていますよね?
田中)英語に悩む方は多いのですが、深掘りすればするほど、「メンタルや心構えが大事だな」と感じます。英語の勉強は教材もたくさんありますし、皆さんいろいろわかっていると思います。ただ、それをどのように使うか、英語でコミュニケーションするときは何が必要なのかを、「コーチング」という形でお手伝いさせていただいています。
黒木)コーチングに関しても、『新しい英語力の教室』という本を出されています。
田中)英語の本なのですが、英語はほとんど出てきません。
黒木)そうですよね。
田中)「発音はこうしましょう」、「この表現はこういう意味です」というような英語の教材は世の中にたくさんあって、いい教材もたくさんあると思います。しかし、ここではもう少し深掘りして「何のために英語を学びたいのか?」ということから始まり、英語でプレゼンする際、母国語でない言語で人前で喋るときに「何を準備したらいいのか」ということなどを、それぞれ考えていただきます。実際に私がコーチングのなかでやっていることですが、コーチングだと人に知っていただくことが難しいので、本という形にしました。コーチングを受けているような気持ちで「自分にとっての英語とは何だろう、英語を学ぶ目的は何だろう」と考え、自分に必要な英語の勉強を計画していただく。
黒木)コーチングを受けていると思って。
田中)やる気というのは贅沢品のようなもので、あるときはありがたいのですが、持続するものではありません。やる気がなくても、「やらざるを得ない習慣化の仕組みをどうつくっていくか」ということをコーチングのアプローチで書いてあります。「どのようなステップを踏み、どのような学習計画を立てればいいのか」が書いてあります。
黒木)以前、海外での舞台のときに通訳の方がいたのですが、私が言ったことを少し違った意味で翻訳したようで、相手の方が怒ってしまったのです。例えば、「この色は嫌だわ」と日本語で言ったとしても、「本当は嫌だけれどまあいいか」という意味で言ったかも知れない。でも、「彼女はこれが嫌いだと言っています」と伝わってしまうこともありますよね。「ただ訳すだけではないのだな」と思ったことがあるので、田中さんがおっしゃっている意味がよくわかります。
田中)ありがとうございます。通訳者として、誤解を与えることはいちばんやってはいけないことです。そうならないように、通訳させていただく方のことは理解しなければなりません。会議であれば先に資料をいただき、その方のことを細かく調べて理解します。ありがたいのは、通訳をしていると魅力的な方にたくさん出会えることです。
黒木)でも、よかったですよね。田中さんは18歳までの不登校児の期間があったからこそ、アメリカに行くことができたので、人生というのはわかりませんね。
田中)本当にわからないと思います。ですので、私の座右の銘は「行き当たりバッチリ」です。
黒木)素敵ですね。
田中慶子(たなか・けいこ)/同時通訳者
■愛知県出身。
■劇団研究員、NPO活動を経てアメリカ最古の女子大であるマウント・ホリョーク大学を卒業。
■帰国後は衛星放送、外資系通信社、NPO勤務ののち、フリーランスの同時通訳者に。
■天皇皇后両陛下、総理大臣、ダライ・ラマ、テイラー・スウィフト、ビル・ゲイツ、デビッド・ベッカム、U2のBONO、オードリー・タン台湾デジタル担当大臣などの通訳を経験。
■2010年、コロンビア大学でコーチングの資格を取得し、現在は通訳の経験をもとに、ポジティブ心理学なども取り入れたコミュニケーションのアドバイスをするコーチングの分野にも活動を広げている。
■2020年、慶應義塾大学大学院システムデザインマネジメント研究科修了。著書に『不登校の女子高生が日本トップクラスの同時通訳者になれた理由』、『新しい英語力の教室 同時通訳者が教える本当に使える英語術(できるビジネス)』。
番組情報
毎朝、さまざまなジャンルのプロフェッショナルをお迎えして、朝の活力になるお話をうかがっていく「あさナビ」。ナビゲーター:黒木瞳