柿沢前法務副大臣逮捕 検察が年を越えてまで動くのは理由がある

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キヤノングローバル戦略研究所主任研究員でジャーナリストの峯村健司が12月29日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。江東区長選挙をめぐる買収などの疑いで逮捕された柿沢前法務副大臣について解説した。

【江東区長選の公職選挙法違反事件】柿沢未途氏の事務所から出る東京地検の係官ら=2023年11月16日午後、東京都江東区 写真提供:産経新聞社

【江東区長選の公職選挙法違反事件】柿沢未途氏の事務所から出る東京地検の係官ら=2023年11月16日午後、東京都江東区 写真提供:産経新聞社

江東区長選めぐる買収などの疑いで柿沢未途前法務副大臣を逮捕

2023年4月に行われた東京都江東区長選挙の選挙運動の報酬として、区議会議員らに合わせて約260万円を提供するなどしたとして、東京地検特捜部は柿沢未途前法務副大臣と秘書4人を公職選挙法違反の買収などの疑いで逮捕した。

飯田)区議選も合わせて行われていましたが、特捜としては票の取りまとめを依頼した容疑で逮捕したそうです。

峯村)昨日(12月28日)、たまたま議員会館に用事があったのですが、たくさんの報道陣が集まっており、久々に国会議員が逮捕されて「盛り上がっているな」という感じでした。いまの特捜部には精鋭たちがいるだけあって、まず公選法の買収で動いたところは、元社会部記者としては「うまいやり方だ」と思ってしまいました。買収は証拠がつきやすいので、まずは入り口から固める。次にYouTubeなど、ネット選挙の難しい方に進むのが手堅いやり方です。

権力闘争が激しく事件がつくりやすい状況だった

飯田)お金の性格について、柿沢氏側は「区議選の陣中見舞いであり、それなら法に触れないだろう」と主張しているようです。

峯村)でも、1人あたり20万円ですよね。陣中見舞いとしては多いと思います。もちろん、配るときに「誰を推してください」と区長の名前を出すことはないと思いますが、それは通用しないでしょう。江東区はもともと柿沢氏のお父様の地盤があって、山﨑元区長と木村前区長を含め「三国志」と呼ばれるぐらい、激しく争っていた地域です。権力闘争があるところには、密告が入りやすく、事件がつくりやすい素地があったようです。

飯田)もともと秋元司元議員がいましたが、IR事業に絡む汚職事件で自民党を出て、議員辞職せざるを得なかった。そこで柿沢氏が出てきたという流れですが、遺恨が重なっているのでしょうか?

峯村)そうですね。柿沢さんは「みんなの党」などを転々としているので、「自民党で足場を早く固めたい」という焦りがあった。また、影響力を保持したかったところもあり、無理なことをした可能性があるのではないかと言う人もいます。

検察が年を越えてまで動くということは「大山鳴動」では終わらない

飯田)この件や、派閥の政治資金パーティーをめぐる話等々、「政治とカネ」の問題がいろいろ出てきています。

峯村)事件記者の常識で言うと、この時期は普通、事件は扱わないのです。贈収賄や汚職事件、公職選挙法違反もそうですが、検察は「2回勾留して何日間、起訴するまで何日」と逆算できるので、大体12月の頭までしか事件に着手しません。なぜなら検事たちも年を越したいからです。年を越える事件というのは、ほとんど経験したことがありません。でも、今回は年を越えますね。

飯田)そうですよね。

峯村)「2勾留」すると確実に年を越えるので、彼らも正月返上で動くのでしょう。政治資金パーティーの方も、担当する関係者に話を聞いたところ、相当な体制のようです。応援も含め、事務官も入れると100人超えで行っている。今回の柿沢氏の件も一緒にやるとなると、とんでもない捜査本部があるわけです。その意気込みたるや、すごいです。こういう事件は大山鳴動で終わることが多いのですが、「それでは終わらないだろう」という裏返しなのだと思います。

国会がスタートするまでに道筋を付けたい検察

飯田)他方、2024年の通常国会は1月26日スタートで調整に入っています。国会がスタートすると、バッジをつけている国会議員は不逮捕特権があるので、それまでに何とかするのでしょうか?

峯村)それもあると思うので、ある程度の道筋を付けたいのでしょう。時間的にはかなりタイトですが、少なくとも正月返上というのは、それくらい検察が本気で捜査をしているということなのです。

外交的にはこんなことをしている場合ではない日本

飯田)これがどこまで広がっていくのか……。内閣の支持率も下がっており、政治的に相当体力を奪われている状態です。激動の2024年を考えると、こんな状態でいいのかと思います。

峯村)もちろん悪い状況です。私は外交が専門なので、とても心配です。本当に国内で「こんなことをやっている場合ではないだろう」と思っています。本来ならば日本は来年秋までは政権が安定しているはずでした。こういう不祥事や支持率の低下が続くと日本までグラついてしまいます。下手をすると、民主主義陣営でしっかりしている国がなくなってしまう。

飯田)そうですね。

峯村)そうなると、選挙がない国がワクワクしてしまいます。すごく心配です。数年前から言っていますが、2024年は必ず激動の年になるし、何かが起こります。いろいろな選挙や主要なものが重なるのは、本当によくないファクターです。さらに中国の習近平政権の脂がのる時期で、安定してくる。何かを動かすのであれば、2027年の3期目の終わりを見据えて逆算すると、2024~25年の頭ぐらいまでしかないわけです。国内政治を早く収拾させ、安定した状況にして欲しいですね。

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