自動車評論家の国沢光宏氏が12月21日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。ダイハツの大規模不正問題について解説した。
ダイハツ、174の認証不正 ~全64車種の出荷停止へ
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ダイハツ工業は12月20日、車両の認証試験をめぐる不正で新たに174の不正が行われていたと発表した。対象は既に生産を終えた車種を含む全64車種と3種類のエンジンに及ぶ。これを受けて20日、トヨタ自動車との共同会見が開かれた。
経営陣も関わり、30年以上続く不正
飯田)今回の問題をどうご覧になりますか?
国沢)自動車産業のこれまでの事例だと、フォルクスワーゲンが「ディーゼルゲート」という大きな不正を起こしたのですが、それに匹敵するほど規模が大きく悪質な不正ですね。
飯田)不正は1989年からあったと言われています。30年以上にわたって行われていたのでしょうか?
国沢)ダイハツのプロパー役員・トップ経営陣が若いころから始まっているので、上の人がまったく知らないわけがないと思います。経営陣まで関わっていると考えていいでしょう。
昔から不正隠しを行う企業風土があったダイハツ
飯田)トヨタ自動車との共同会見が行われましたが、ダイハツの奥平社長はどういう方なのですか?
国沢)もともと奥平さんはトヨタ自動車にいて、カローラという車を開発したエンジニアです。そういう意味では車に詳しい方なのですが、ダイハツはトヨタと違う企業風土があるので、奥平さんにとってみるとトヨタとは全然違い、内部がわからないのですね。同じように日野自動車に行った小木曽さんもトヨタ出身で、ハイブリッド車のプリウスなどに携わっていましたが、これも不正隠しが発覚している経緯があります。昔からそういう企業風土を持っている会社なので、厳しいですね。
飯田)外から来た役員は聞こえないところに置いておき、「自分たちで」というような可能性もありますか?
国沢)日野自動車は完全にそうでした。今回も取材してみると、そんな感じですね。昔から不正を続けてきた人が役員になっている。その役員がわかって指示しているようです。
6年半が経つのに「わからなかった」とは言えない奥平社長
飯田)まさにガバナンスの問題ですか?
経済アナリスト ジョセフ・クラフト)まさしくガバナンスです。個人的に不快だったのは社長のコメントです。確かに「経営陣の責任」とは言っているのですが、「しっかりした現場だと思った」とか「プレッシャーがかなり大きかったのだろう」など、間接的に「現場が悪い」と言っています。その部分もあるかも知れませんが、社長だけでなく、経営陣全体の責任をより重く受け止めて欲しいですね。個人的には、あまりいい会見ではなかったと思います。
飯田)奥平社長が苦しい立場だったところもあるのですか?
国沢)奥平さんが社長になってから6年半が経っています。6年半いて「わからなかった」という言い逃れはできないし、私も「それはないのではないか?」と思いました。
長ければ1年は車を売ることができなくなる
飯田)OEM(相手先ブランド製造)も含め、ダイハツはトヨタやマツダなど、いろいろな会社のものを請け負っていますよね。
国沢)トヨタだけでも約22車種あり、日本だけでなく海外の車も含まれるので、すごい量ですね。
飯田)今後、どのような展開になりますか?
国沢)とりあえず現在つくっている車、これから売る車はすべて売れなくなると思います。事実上、認証取り消しのようなものなので、これからナンバーを取ることはできません。おそらく認証取り直しになると思います。そうすると最短でも半年ぐらい、長ければ1年は売ることができないですね。
飯田)経営には確実にダメージが出ますね。
国沢)大ダメージで、いままでにないくらいの規模になると思います。
関連会社や下請けも多いダイハツ
飯田)グループ全体として、トヨタも含めての影響はありますか?
国沢)トヨタ自動車は経営状況がすごくいいので、会社自体への影響は少ないと思いますが、ダイハツの親会社です。トヨタの幹部に取材したところ、「お客さんに迷惑をかけないように指導していきたい」と言っていました。
飯田)お客さんに迷惑をかけないように。
国沢)もう1点、ダイハツは意外と大きな会社で、関連企業も多く、下請けも多い。ダイハツの景気が悪くなると、そういう人たちも困ってしまうので、そこも何とかしなければなりません。トヨタとしてはその辺りも考えているようです。「とんでもないことをしてくれたが、責任を取らなければいけない」というのが現在の流れですね。
過剰な品質要求や納期が原因ではなく、外注に出すなど金を出したくないという「ケチな体質」から出たもの
飯田)岐阜県恵那市の“アマリサ”さんから、「原因として、過剰な品質要求や納期、現場を知らない管理監督部門、責任を取りたくない人々など、どの企業でも起こり得る問題だと思うし、現実に大なり小なり起きていると思います。風通しのいい組織や余裕のある品質幅、納期にしていくことが大切ではないかと思いますが、競争社会なのでいろいろなところで、こういうことがあるのでしょうね」とご意見をいただきました。開発期間の短さも第三者委員会の報告書から指摘されていたようですが、これから先、変わっていくものですか?
国沢)それは言い訳だと思います。例えば「お金がないから犯罪に手を出した」というのは、犯罪者の言い訳ですよね。自動車業界は夢をつくる業界なので、忙しければ技術者を雇えばいいし、時間がなければ外注に出してテストすればいいだけの話で、そういう言い訳が通用する業界ではありません。
飯田)夢を売る業界。
国沢)だから第三者委員会への言い訳を見て、全然視点が違うなと思いました。どの自動車メーカーも新しい技術や環境技術を入れたり、電気自動車を開発する必要などがあり、大変なのです。でも、そういうことから逃げてはいけない業界です。お金を使えばいい話なので、そのお金を出したくないという考えがダイハツの根源的な問題ですね。ケチなのですよ。
すべて入れ替えて会社をつくり変える必要がある
飯田)そうすると、解体的出直しを行わなければどうしようもないですか?
国沢)約30年前から不正している人たちが上にいるわけですから、何とかして全部入れ替えたり、形を変えないと無理です。すべて見直して中身を入れ替えるぐらいの気持ちで会社をつくり変えなければダメだと思います。
飯田)時間が掛かりそうですね。
国沢)時間は掛かるでしょうね。ただ、しっかりやらないと関連企業の人たちも困るので、早く行うべきです。
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