ジャーナリストの須田慎一郎が1月8日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。台湾総統選について解説した。
副総統候補の蕭美琴氏によって、若者層の支持が広がる
4年に一度の台湾総統選挙が1月13日に行われる。立候補しているのは現在の蔡英文政権の路線を引き継ぎ中国と距離を置く与党・民進党の頼清徳氏、中国に融和姿勢を見せる国民党の侯友宜氏、民衆党の柯文哲氏の3人。選挙戦は中国との関係が大きな争点となっている。
飯田)もともと頼清徳氏リードと言われていましたが、侯友宜氏が追いかけてきて、かなり接戦になっているという話もあります。
須田)一時期、支持率がほぼ並ぶという状況になったのですが、再び頼さんのリードが広がってきているのではないでしょうか。頼さんの最大のウィークポイントは若年層に支持されていないことでしたが、副総統候補に親米派の方を迎え入れて……。
飯田)蕭美琴氏。
須田)そこで若者層の支持が得られる状況になってきたのではないかと思います。
親中派の趙少康氏を副総統候補につけて失速した侯友宜氏
飯田)蕭美琴さんは、前駐米大使でリベラルな政治家でもある。そこが若い人たちにも支持されているのでしょうか?
須田)「若者層、無党派層の支持をどの程度集めることができるのか」というのが、台湾総統選挙のいちばんの注目ポイントだったはずです。しかし、国民党に関しては親中派の色合いが濃くなってきてしまった。副総統候補の趙少康さんはもともとメディア経営者でしたが、親中派として名を売っていた人ですから。この人を副総統候補につけたのが、失速する要因になっていると思います。
中国が圧力を掛ければ無党派層は逃げていく
飯田)侯友宜氏は日本との関係も大事にするなど、中国に対して「べったり」という感じではない言説だったとも言われていますが、副総統の人選には政党内の力学もあったのですか?
須田)侯さんに関して言うと、もともと国民党の支持層は全体の3割ぐらいいると言われています。それを固めた上で、無党派層に打って出なくてはいけないのですが、そうすると趙さんは親中派色が強く、無党派層を取り込めなかったというよりも、逃げられたような側面が色濃くあるのかなと思います。
飯田)しかし、この人を使わないと党内は固められないのでしょうか?
須田)そうなのです。加えて、中国は静かにしていればいいのに圧力を加えてきて、軍事演習を行ったりしています。そうすると中国に対する反発や警戒感が支持者や有権者に広がっていかざるを得ません。
飯田)年明けから気球も飛ばしているようです。
須田)そういうことをやるから無党派層が逃げてしまうのに、どうして気付かないのでしょうか。
飯田)かつて李登輝さんが当選した最初の総統選でも、台湾海峡にミサイルを打ち込みました。
須田)蔡英文政権が8年間続いたので、そこに対する焦りがあるのでしょう。習近平政権のときに統一をやり遂げたい。そのためには、頼氏が総統になってしまうと、平和的な統合が遠のいてしまうと認識しているのでしょう。だから、どうしても国民党政権になって欲しいという意欲はわかりますが、圧力戦略は違うだろうと思います。
飯田)最終的には、民主主義による選挙がどういうものか、肌感覚がないところもあるかも知れない。
須田)台湾の有権者には、「民主主義とはこういうものだ」と示してもらいたいと思います。
「2位・3位連合」を組んでも意味がない
飯田)去年(2023年)の11月ごろは侯氏と柯文哲氏で「2位・3位連合」を組み、一本化するという話もありましたが、これも吹き飛んでしまいました。
須田)2位・3位連合を組んだところで、国民党の岩盤支持層である外省人は3割しかいないのです。7割を獲るという目処が立たないので、2位・3位連合を組んでも、あまり意味がないと思います。
飯田)「外省人」とは、もともと中国本土にいて、台湾に移ってきた人たちのことです。国民党独裁の時代はこの人たちが権力を握っていた部分がありますが、いまは中国人というより「台湾人だ」という意識の方が高くなってきたという話もあります。
須田)民主主義、自由主義、資本主義という価値観の方が、若者の共感を得られているのです。
飯田)頼氏が「民主主義を守る」としきりに訴えているのは、そういう部分に対してですか?
須田)そうですね。若年層です。
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