「岸田派解散」は麻生氏・茂木氏への「決別宣言」
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ジャーナリストの須田慎一郎が1月22日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。自民党における派閥の在り方について解説した。
自民党の岸田派・安倍派・二階派、3派閥が解散を表明
政治資金パーティーをめぐる裏金事件を受け、自民党の岸田派(宏池会)・安倍派(清和政策研究会)・二階派(志帥会)の3派閥が解散を表明した。一方、麻生派(志公会)は岸田総理に対して存続の意向を伝えており、自民党では1月22日の政治刷新本部で派閥の在り方などについて、中間とりまとめの骨子案を示し議論する。
飯田)議論する前に岸田さんが派閥解散を表明してしまい、いろいろな波紋を呼んでいます。
須田)先週末から新聞各紙がいろいろと書いているのですが、あまりにも表面的すぎやしないかと思います。
無派閥議員が「無派閥情報交換会」を立ち上げ
須田)「裏の動きについては、ほとんど報じられていない」というのが個人的な実感です。裏でどういう動きがあったのかと言うと、1月18日に自民党無派閥の中堅・若手議員がつくる「無派閥情報交換会」が立ち上がり、翌19日には初会合が開かれました。メンバーは菅グループと言われている「ガネーシャの会」や、谷垣グループ(有隣会)、旧石破グループ。そして、どのグループにも属していない完全無派閥の人たちが集まりました。
これまで「政務三役」を牛耳ってきた麻生氏、茂木氏への不満が爆発
須田)実は自民党のなかには、約70人の無派閥の国会議員がいるのです。そのうち一部の方々が立ち上げたのですが、なぜこういったアクションが起こったのか。いまの岸田政権になり、自民党内の党役員人事や閣僚人事、大臣・副大臣・政務官の「政務三役」などは全部、主流派によって牛耳られており、それが麻生太郎副総裁であり茂木幹事長だった。いま自民党のなかでは、それに対する不満が爆発しているのです。
岸田派の派閥解散は麻生・茂木氏との決別宣言
須田)一方で岸田総理も人事権を取り上げられ、麻生さんと茂木さんにいいようにやられていることに対して、大きな不満があった。そこで今回の裏金問題が起こったのです。政治刷新本部を開いたとしても、本部を牛耳っているのは言うまでもなく最高顧問の麻生さんと、茂木幹事長です。
飯田)政治刷新本部をコントロールしているのは。
須田)そのため、岸田さんが思うような改革は進まない可能性がある。要するに、ちょっとしたことでお茶を濁して「政治刷新を進めた」という形になりかねない。一方で岸田さんが派閥解消を言い出せば、予想通りにはなっていないけれど、国民世論の信頼を回復できるかも知れない。また、2024年9月の総裁選での再選も見えてくるだろうという思惑があるのです。ですから、今回の派閥解散は「麻生・茂木氏との決別宣言」であり、だから彼らは派閥存続の意向を伝えたのです。
飯田)岸田さんは昨日(21日)、麻生さんと会食していますよね。
須田)おそらく、どういう思惑なのかを探るためでしょう。これまで岸田さんの最大の後ろ盾は麻生さんでしたから。その辺りの丁々発止が行われたのではないかと、私は見ています。
麻生氏、茂木氏の後ろ盾を切ることで、主流派の入れ替えへ
飯田)岸田総理は「やるときは大胆にやる」という話を聞きますが、後ろ盾を切ってしまうのはかなり大胆ですよね。
須田)そうすることで無派閥を含め、非主流派の協力が得られると考えているのかも知れません。例えば菅さんなどが、その中核になる可能性もあります。主流派の入れ替えという。
飯田)ダイナミックな動きかも知れませんね。しかし、菅さんの岸田総理への評価は低いと言われていますが、どうなのでしょうか?
須田)とは言っても、いまは岸田さんの後継がすぐに出てくるような状況ではないので、しばらくは岸田さんを支えなければならない。そういう現実路線なのではないでしょうか。その間に次のポスト岸田を育てていく。あるいはそういった人たちに求心力を持ってもらう思惑があるのではないかと思います。
飯田)今回の策が功を奏しているかと言うと、微妙なところがあります。22日の朝日・読売新聞の世論調査によると、支持率は朝日新聞が23%、読売新聞が24%で、内閣支持率は上がっていません。
須田)内閣支持率は低空飛行が続いているのですが、例えば読売新聞の世論調査だと「岸田首相が岸田派解散を表明したことへの評価」に関して、「評価する」が60%、「評価しない」が29%となっており、派閥解消を評価する国民・有権者は多いのではないかと思います。
岸田派解散のきっかけになった石川昭政議員の「派閥解消」の訴え
須田)もう1点、1月16日に開かれた政治刷新本部では、岸田派解散の1つのフックになるような動きがありました。自民党職員から国会議員になった方で、無派閥でありグループに所属しないことを貫いている石川昭政衆院議員が、総理の目を見据えて「『隗(かい)より始めよ』で岸田派から解消して欲しい」と迫ったのです。
飯田)そうなのですね。
須田)岸田さんのなかでは、岸田派の解散を暖めていた部分があったのだと思いますが、周りから止められて、なかなか表に出すことができなかった。石川さんが迫ったことで、岸田さんが翻意したわけではないと思いますが、1つのきっかけになったのではないでしょうか。
岸田政権の裏テーマは「安い国・日本からの脱却」 ~積極財政との親和性もある
飯田)主流派の入れ替え等々で政策がどう変わるのか。情報交換会の発起人の方々の顔ぶれを見ると、積極財政を主張するような方も入っています。いままで「岸田総理は増税するのでは」などと言われていましたが、その辺りも変わってきますか?
須田)岸田政権の経済政策・財政政策に関する裏テーマは、「安い国・日本からの脱却」なのですよ。適切な物価上昇を継続させ、よいインフレにする。いま、よいインフレと悪いインフレを一緒に語るメディアや国会議員が多いのですが、例えばアメリカの物価上昇率は8%あります。確かに食事の価格などは高いけれど、それでも普通に生活している。なぜかと言うと賃金が上がっており、高所得になっているからです。例えばアメリカ・ニューヨークでは新卒の初任給が月収50~60万円です。そのような状況をつくっていくのが、岸田政権の裏テーマになっている。そう考えると積極財政を進めなければならないですから、その辺りは親和性があるのだと思います。
「3年間で非社会保障費の純増が1000億円」の縛りを覆すことができるか
飯田)岸田さんはいまのところ「賃上げ」と言っていますけれど、それだけでなく、政策面でも後押しするものを出していく。今年(2024年)の骨太の方針も、その辺りが1つの争点になってくるのでしょうか?
須田)予算編成をするにあたっても、大枠を決めるのが骨太の方針なのです。
飯田)予算編成より前に行うのですよね。
須田)ただ、骨太の方針には3年縛りがあって、これまで3年ずつ縛られてきた。その縛りは、3年間で非社会保障費、社会保障費を除いた部分についての純増が1000億円なのです。年間333億円ですから、全然増えない。
飯田)本当ですよね。
須田)この縛りがあったために、新規の予算が認められなかった状況にありました。それを今年の骨太の方針で覆すことができるのか。これが最大の焦点です。今年は3年目ですから。
飯田)今年がまさに3年縛りの節目になる。その辺りが、ちょうどまた総裁選に向けたところにも被ってきますよね。
試金石となる能登半島地震の復旧・復興のための財源確保
須田)おそらく試金石になるのは、能登半島地震の復旧・復興のための財源確保です。年度の本予算(当初予算)が成立したあと、可及的速やかに補正を組むはずです。そうしないと道路や橋などもつくれませんからね。その規模がどの程度になってくるのか。岸田さんは「予算上の制約を求めない。財政上の制約を設定しない」とはっきり言っていますから、本当にそうなるのかどうか見極めたいと思います。
飯田)今回の本予算では、まず予備費を5000億円ほど追加で積んで1兆円にし、閣議決定し直した流れがありましたが、さらにその先があるのですね。
須田)予算項目を決める必要があります。「この道路を補修する」というのは予備費では対応できませんから、やはりきちんと査定し、予算を積み上げなければなりません。
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