双日総合研究所チーフエコノミストの吉崎達彦が1月25日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。米大統領選に向けた共和党の指名候補争いについて解説した。
トランプ前大統領、共和党の候補者選“連勝”
11月に行われるアメリカ大統領選挙に向けた野党・共和党の指名候補争いで、第2戦となるニューハンプシャー州の予備選が1月23日に実施された。トランプ前大統領がヘイリー元国連大使との一騎打ちを制し、初戦のアイオワ州での党員集会に続いて連勝を果たした。
飯田)ヘイリーさんは瀬戸際に追い込まれたと言われていますが、撤退しない考えを示しています。
地元サウスカロライナ州の予備選挙に向けて選挙戦を続ける考えを強調するヘイリー氏
吉崎)昨日(24日)の敗北宣言がかっこいいのですよ。全体で9分くらいの敗北宣言でしたが、まず「勝ったトランプさんおめでとう」と。これはそう言うしかないですよね。そして「皆さんにお伝えしたいことがある。ニューハンプシャー州は最初の州であって、最後の州ではないのだ」と。
飯田)ニューハンプシャー州は。
吉崎)ニューハンプシャー州は、とにかく全米で最初に予備選が行われる場所です。「ファースト・ステート」が州のスローガンになっている。だから「ラスト・ステートではない。我々はまだ何ダースも戦うべき州がある。そして私の地元である、愛するサウスカロライナが次の戦場だ」などと言うのです。かっこいいのだけれど、サウスカロライナの世論調査を見ると、トランプ氏の圧勝なのですよね。「1ヵ月後のサウスカロライナまで私は粘る」と言うのですが、ものすごいリスクがあります。もともと彼女はその州知事を務めていた人ですから。
飯田)国連大使の前に。
吉崎)そんな人がボロ負けすると、再起不能になってしまう可能性があるのですが、「サウスカロライナの人たちはわかってくれる」と言うわけです。
過去、トランプ氏と予備選で争った政治家の悲惨なその後
吉崎)ただ、トランプさんと戦った政治家はその後、悲惨なことになっているのです。2016年に初めてトランプさんが出てきたとき、ジェブ・ブッシュさんがいたでしょう?
飯田)ブッシュ元大統領の弟さん。
吉崎)彼はフロリダ州の知事でしたが、予備選に出て、フロリダに出る前に撤退宣言してしまうわけです。もう1人、フロリダ州の上院議員だったマルコ・ルビオさんは地元で激突し、大敗してしまったのです。以後8年間、「どこで何をしているのだろう」というような存在感のない人になってしまった。まともな政治家は、トランプさんと戦うのは嫌なのです。
撤退宣言しないことをトランプ氏が嫌がる理由
吉崎)ただ、逆にトランプさんから見ると、ここで撤退宣言されないのはすごく嫌だと思います。なぜかと言うと、お金を使わなくてはいけないからです。
飯田)なるほど。
吉崎)できればこのあと全部、不戦勝にしたいのでしょう。3月になると裁判が始まるので、裁判費用を残しておきたい。それもあって、ニッキー・ヘイリーさんからすると「粘っていればチャンスがまためぐってくる」という状態です。
トランプ氏がニッキー・ヘイリー氏と民主党のナンシー・ペロシ氏を混同して「老化ではないか」と話題に
吉崎)これも話題になりましたが、トランプさんが演説中に「ニッキー・ヘイリー!」と何度も繰り返すのですが、実は民主党の下院議長だったナンシー・ペロシさんの名前を言おうとして、名前が出てこなくて「強い女」のイメージがある彼女の名前を間違えて言ってしまったのです。それに対して、「この人も老化しているではないか」とヘイリー氏に批判を受け、話題になっていました。
飯田)バイデン大統領はつまずいたり、名前を間違える発言があって「あれ?」という感じですが、一方のトランプさんは「70歳後半にしてはパワフル」というイメージがありました。
吉崎)パワフルですが、やはり固有名詞が出てこないときがあるのですね。
普通ならば諦めるところをトランプ氏にも裁判という事情があるので「もう少し粘る」ヘイリー氏
吉崎)長年、予備選を見ていますが、アイオワとニューハンプシャーの両方で(得票率が)50%を超える状況など、見たことがありません。現職大統領が出ているときは別ですが、予備選は大体4~5人が並び、最も強い人が30%台くらいで、最初の2州の役割は足切りをすることなのです。
飯田)弱い人を切って人数を減らす。
吉崎)できれば、そのあとのネバダ州、サウスカロライナ州では「3~4人で戦う」というような位置付けです。しかし、今回はあまりにもトランプさんが強すぎて、普通であれば諦めてもおかしくないけれど、トランプさんにもいろいろ事情があるから、ヘイリーさんも「もう少し粘る」ということです。
飯田)あとは粘り勝ちになるのか。
吉崎)最後の党大会は7月ですから、先はまだ長いです。
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