トランプ政権復活で米の「ウクライナ支援」が完全になくなる可能性も

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東大先端科学技術研究センター准教授で軍事評論家の小泉悠が1月16日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。スイス・ダボスで開催されたウクライナの和平について話し合う国際会議について解説した。

2023年9月27日、米ミシガン州デトロイト近郊で演説するトランプ前大統領(ロイター=共同) 写真提供:共同通信社

2023年9月27日、米ミシガン州デトロイト近郊で演説するトランプ前大統領(ロイター=共同) 写真提供:共同通信社

ウクライナ和平協議 中国の参加呼びかけへ

ロシアによるウクライナ侵略の終結に向けた道筋を協議する関係国会合が1月14日、スイス・ダボスで開催された。4回目の今回は、これまでで最多の83ヵ国・機関が参加。会合ではロシアへの働きかけが期待される「中国の参加」を求める声が上がった。

飯田)世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)に合わせるような格好で開催されていますが、中国の参加について取り沙汰されています。この先の見通しについて、どうお考えになりますか?

小泉)16日にウクライナのゼレンスキー大統領が演説する予定ですが、ウクライナが呼びかけた和平のための会合に関しては、はっきり言うと、あまり具体的な成果は出なかったと思います。

飯田)具体的な成果は出なかった。

小泉)なおかつ、中露が参加していない。ウクライナはロシアに対し、「悪いけれどいまのところお断りだ」と言っており、「中国にはこれから先、参加して欲しい」という言い方をしています。ロシアに対する顔つなぎであるにせよ、「中国がいないとパンチがない」というような感覚を持っているのではないでしょうか。もちろん、ウクライナも「中国にお願いしたら何とかしてくれる」などと甘いことは考えていないと思いますが、いまのままでは前に進みません。

「簡単にはできない」という苦しさが見えた会合

小泉)今回は、ウクライナによる10項目の「平和の公式(ピース・フォーミュラ)」を進めようとしましたが、これも「ウクライナの領土一体性の回復」と言っているので、ロシア軍を追い出すということです。ロシアの戦争犯罪者を裁くなど、どう考えてもウクライナだけで実行できることではないので、何とか仲間を増やしたい。でも、「そんなに簡単ではない」という苦しさが見えた会合だったと思います。

溝が埋まらないウクライナとアメリカ

小泉)本番のダボス会議ではアメリカなどから、「戦争計画を明確にしろ。どれだけ通したら自分たちは勝てるのかをきちんと言え」というような声が上がっていると報じられています。

飯田)なるほど。

小泉)しかし、ウクライナからは「どれだけ軍事援助をしてくれるのかわからなければ、戦争計画など出せるわけがない」という反論があり、アメリカとウクライナの間の溝が深くなってしまっている。ダボスだけでは決まらないと思いますが、今年(2024年)の初旬のうちにこの溝を解決してしまわないと、いつまでたってもウクライナに対する軍事援助の目処が立たず、結果的に2024年も何もできないまま、ジワジワとロシアが進むことになりかねないわけです。この問題がいま最も気になっています。

アメリカからのウクライナへの支援が復活しないことを「プランB」として考えておかなければならない

飯田)アメリカは議会の反対もあり、追加の予算がついておらず、底をついたような状態です。今年は大統領選があると考えると、内政にかかりきりになり、「外にお金を出さない」という方向にもなりかねませんよね。

小泉)特に共和党でウクライナ支援予算を妨害しているのが「フリーダム・コーカス」と呼ばれる強硬派の人々です。今回、共和党の予備選が始まったのは、まさにアイオワ州でのコーカス(党員集会)でした。トランプ前大統領も「コーカス」という言葉が入ったキャップを被るなどしており、いまウクライナの支援予算を止めている議員に対して「いいぞ」と言っているような人たちに受けているのです。

飯田)トランプ氏は。

小泉)アメリカがどこかで目を覚まし、ウクライナ支援を行って、ロシアを追い出せるまで続けるべきだと思いますが、現実的にアメリカの支援が止まってしまうと、止まっているうちにトランプ政権復活となるかも知れない。今後、「支援が復活しない」という状況を「プランB」として考えておく必要もあると思います。

日本もウクライナに向けた殺傷能力のある武器支援の議論をしてもいいのではないか

小泉)そのなかで、「ヨーロッパだけで負けない程度の支援ができるようにしよう」というところまで動いているのです。韓国からも榴弾砲の弾が既に30万発以上出されています。日本は手厚く民生援助していますが、もしもアメリカが軍事援助できない場合、緊急避難的にウクライナへの殺傷能力のある武器支援を行うなど、望ましいかどうかはわかりませんが、国民的な議論はしてもいいと思います。

飯田)「日本もそれだけ本気で考えている」という意識が表に出るだけでも違うのですね。

小泉)義侠心だけではなく「日本の国益になる」という意味で、議論してもいいのではないかと思います。

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