東京大学先端科学技術研究センター特任講師の井形彬が10月3日、ニッポン放送「新行市佳のOK! Cozy up!」に出演。ウクライナのキーウで開催されたEU外相会合について解説した。
ウクライナのキーウでEU外相会合 ~EU域外で初めて開催
ウクライナの首都キーウで10月2日、EUの27加盟国の外相らが集まり、外相会合が開かれた。EU以外での開催は初めてとなる。会合に出席したウクライナのゼレンスキー大統領は、アメリカの政府機関の閉鎖を回避するための「つなぎ予算」のなかにウクライナ支援が盛り込まれなかったことなどを受け、防衛支援の重要性を訴えた。また、ウクライナが目指すEU加盟について、2023年内に交渉を始めるよう求めた。
新行)会合後、EUの外相にあたるボレル外交安全保障上級代表は、今回の会合は「ロシアへの強いシグナルだ」と成果を強調しています。
井形)アメリカの政府機関の閉鎖を回避するための「つなぎ予算」に、ウクライナへの支援が入らなかったことが最も重要なポイントです。
ウクライナへの支援も大統領選における政争の1つに
新行)閉鎖は土壇場で回避されましたが、ウクライナ支援は入らなかった。
井形)最終的にこれを入れなかったことには、いろいろ複雑なポイントがあります。大統領選挙まであと1年少しとなり、民主党側も共和党側もすべて、「大統領選にとってプラスになるかマイナスになるか」と判断しながら動いていると思います。
新行)大統領選にプラスかマイナスか。
井形)本来は「ウクライナを支援しなければならない」となるはずなのに、完全に政争の1つになってしまっているのです。
ウクライナがロシアと戦うことは、日本の安全保障にとってもプラスに
新行)そのようななかでEU外相会合がウクライナのキーウで開催されたのは、意義のあることですよね。
井形)ウクライナとしては、忘れられることがいちばん困るのです。国際社会としても、常にサポートしている姿を見せることによって、ロシア側への牽制になると考えているのではないでしょうか。
新行)ウクライナ支援については、日本とアメリカ、ヨーロッパの首脳がオンライン会合の開催を10月3日に計画しているようです。ここには日本も入るのですよね?
井形)そうですね。
新行)2022年9月には、日本やアメリカなど9ヵ国の首脳がオンライン会合を開き、ウクライナ支援やエネルギー・食料の安定供給、対ロシア制裁の継続で一致したという背景もあります。日本としてのサポートや関与の仕方は、どんなものになりますか?
井形)先ほども言った通り「日本はウクライナを忘れていない」と伝えることが重要です。また、ウクライナがロシアと戦っていることは、日本の安全保障にとってもプラスになっているのです。
新行)日本の安全保障にとっても。
井形)この21世紀において、主権国家同士が実際に戦争を行う。しかもロシアがウクライナの土地に対して侵攻しているわけです。「こんなことはあり得ない」と思っていたことが起きてしまっています。
新行)そうですよね。
井形)「許せないことだ」という意思を国際社会として示す必要があり、日本もウクライナに対して、「しっかり頑張ってください」とサポートし続けることが重要です。
ウクライナは「日本のためにロシアの戦力を減らしてくれている」という一面も
井形)日本の「国家安全保障戦略」が2022年12月に出ていますが、それを見ると、懸念国の1つとしてロシアが入っています。日本とロシアの間には領土問題も存在すると考えると、難しい表現になりますが、ロシアが他のところで力を使えば使うほど、日本にとってのロシアの脅威は減っていくのです。
新行)他に力を使えば。
井形)大げさに言ってしまうと、ウクライナが「日本のためにロシアの戦力を減らしてくれている」という考え方もできなくはありません。その意味でも、日本はウクライナへの支援を続けていく必要があると思います。
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