場所によって明暗が……「ラーメン店の生き残り策」をラーメンコンサルタントが解説

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ラーメンコンサルタントの宮崎千尋氏が3月15日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。ラーメン店の生き残り策について語った。

場所によって明暗が……「ラーメン店の生き残り策」をラーメンコンサルタントが解説

※画像はイメージです

ラーメン店の生き残り策

いまラーメン店が厳しい状況を迎えている。東京商工リサーチによると2023年のラーメン店の倒産は45件で、2013年の42件を上回り、2009年以降では最多となった。

場所によって明暗が分かれるラーメン店

飯田)宮崎さんは「ラーメンコンサルタント」という肩書を持つ一方、震災直後の2011年にラーメン店「ソラノイロ」を東京・麹町でオープンし、その後も次々と新しいラーメン店を開発して話題になりました。去年(2023年)は東京駅にある「東京ラーメンストリート」にネオ家系とも言われる「革新家 TOKYO」をオープン。BS11のテレビ番組『珠玉の逸杯!最強ラーメン遺産』のMCも務めています。ミクロ経済の部分で、特に飲食はコロナ禍も含め、いろいろな影響を受けてきましたが、現状は厳しいのですか?

宮崎)「明暗を分けた」と言うか、変わらず調子がいいお店もあれば、苦しいお店もあります。私の会社も複数店舗あるので、場所によっていろいろありますね。

飯田)明暗を分けるポイントは場所ですか? それとも味ですか?

宮崎)流行りの味だと、例えば二郎系や家系がありますが、やはり場所は大きいかも知れませんね。東京駅などはインバウンドの方も多いので、逆にコロナが終わって増えています。本店がオフィス街にありますが、リモートワークなどが増えた影響もあり、特にコロナ後の夜間は厳しい状況です。

小麦やエネルギー価格の上昇を売価に転嫁できず ~「ラーメンは1000円以内」

飯田)コロナ禍で飲食店は大ダメージを受けました。当時はいろいろな補助の仕組みもありましたが、その後はどうなっていますか?

宮崎)1年目は会社ごと、あるいは1店舗ごとにしか融資が出ませんでした。1年目が非常に厳しく、うちは複数店舗あったので、3店舗閉めました。

飯田)知り合いの税理士に話を聞くと、一生懸命に店舗を広げ、従業員が何人もいる店の方が苦しいと言っていました。家族経営の店は、むしろ補助金が入ってきて楽だという話も。

宮崎)去年の8月ぐらいからゼロゼロ融資も返済が始まり、倒産が増えましたね。あとはウクライナ戦争などで小麦やエネルギーの価格が上がり、インフレ方向に進みましたが、それを売価に転嫁できない。「ラーメンは1000円以内」というイメージが皆さんのなかにありますので。

エコノミスト・吉崎達彦)これはコロナ前の話ですが、米ブロードウェイの「一風堂」に入ったら、「博多」という名前の普通のラーメンが15ドルでした。いまより少し円高だったので、それほどショックを受けずに食べたのですが。

飯田)当時のレートで1500~1600円くらいですかね。

吉崎)でも、そのときも日本茶をつけてチップを入れたら25ドルぐらい払っています。「ラーメンはファストフードではないな」という感じでしたが、20分くらい行列で待ちましたよ。

宮崎)海外では3000~4000円が当たり前です。日本では1000円ほどで食べられるので、インバウンドの方は「安い」と感じる人が多いと思います。

海苔や背脂の原価も上昇 ~「どう売価に転嫁するか」が問題

飯田)転嫁するにしても、最近の雰囲気を見ると難しそうですね。

宮崎)具体的に言うと、背脂が去年、倍になりました。今年(2024年)は海水温が上がったので海苔が作付けできず、1.4~1.5倍(の価格)になっています。私の会社もそれを受け入れながら商売しなければならない。ただ、お客さんにそんなことは言えないので、「原材料の価格上昇をどう売価に転嫁するか」は問題ですよね。

飲食で働く若者が少なく人手不足に

飯田)大手企業の賃上げが話題になっていますが、人件費も上がっているのではないですか?

宮崎)東京駅のお店だと、人件費は基本的に時給1400円です。ボーナス時給が1600~1700円のときもありました。それでも来ません。昔の大学生のように、若い子が飲食で働かない。他に選択肢があるのでしょうね。

吉崎)時給1400円を稼ぐためには、1杯以上売らないとダメですよね。

宮崎)1杯でも足りないですね。

桃やイチゴを使った「フルーツラーメン」を開発

飯田)想像以上に厳しいなかでプロデュースするとなると、「何か付加価値を付ける」というのも難しいのではないですか?

宮崎)難しい部分もありますが、自分たちのお店や会社だけがやれること、「オンリーワン」を意識しています。「ラーメンとはこういうもの」というイメージを覆したくて、「フルーツラーメン」を毎年やっています。もともと「ベジソバ」をつくっていたのですが、いまはイチゴや桃を使い、4000~5000円で出しています。桃を3個使うとか、スープにイチゴを1パック、具で2パック使うという感じで、「フルーツもラーメンになる」とプレゼンしています。

飯田)温かくするのですか?

宮崎)冷たい方がいいですね。

ラーメンのファストパスが流行っている

宮崎)最近、予約制のラーメンが流行っています。昔は1~2時間、行列に並ぶのを見せていた時代がありましたが、予約料を払って時短にするような「ラーメンのファストパス」が増えました。予約料の何割かがお店に入れば、お店側も嬉しいし、お客さんも待たないので嬉しい。

飯田)決済も全部スマホで行うとか。

宮崎)そうです。予約の際に支払うので。

吉崎)Uber Eatsを使う感覚ですね。頼んだ時点でもうお金を払っている。

宮崎)予約困難になればなるほど、ブランディングにもなります。

飯田)ラーメンそのものの価値も上がる。

宮崎)そうですね。

高価格帯のお店と安いお店に分かれていく

飯田)一言でラーメンと言っても、これだけ多様な文化があるのは日本独自だと思いますが、この先のラーメン界はどうなっていくのでしょうか?

宮崎)しっかり値上げして「高価格帯」でも受け入れられるようなラーメンをつくる店や会社と、いままで通りの「安いお店」に分かれると思います。どうやって付加価値を付け、価格を上げてもお客様が納得できるものをつくれるか。

コロナ禍で得た「無駄をなくす」知恵が食材ロスにもつながる

宮崎)あとは、未来永劫ラーメンを発展させるため、食材ロスや食育などに取り組むことも必要だと思います。

飯田)持続可能なラーメン。そうすると、食材も国産にこだわる形になるのでしょうか?

宮崎)我々も本店や「革新家」では国産の食材にこだわっています。スープに使う煮干しも価格が3倍になったので、スープに使った肉をチャーシューのタレにつけて出すなど、無駄がないようにしています。本店が肉を一頭買いしているのですが、端材を使ったコロッケやメンチカツをつくり、パン屋さんも営んでいます。麺をつくって焼きそばパンをお出ししたり。それはコロナ禍で得た知恵です。無駄をなくせば食料自給率が上がるし、食材ロスも減らせます。

飯田)その過程を子どもに見せることで、ものの大切さも教育できますね。

宮崎)お客さんと会話すると、「それなら、あのパンを買っていこう」と言われたりします。

飯田)ラーメンそのものをメディアにしていく。

宮崎)「ラーメンとはこういうもの」ではなく、別のところに目を向けてもらえるよう、面白い仕掛けをいつも考えています。もっとラーメンは発展できると思います。

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