もしトランプ政権になれば、「イスラエルとハマスの停戦」の可能性はある

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テレビ東京・解説委員の山川龍雄が3月22日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。イスラエルによるラファ侵攻について解説した。

16日、米中西部オハイオ州で演説するトランプ前大統領(ゲッティ=共同)=2024年3月16日 写真提供:共同通信社

16日、米中西部オハイオ州で演説するトランプ前大統領(ゲッティ=共同)=2024年3月16日 写真提供:共同通信社

イスラエルがラファ侵攻へ

イスラエル・ネタニヤフ首相の側近であるデルメル戦略問題担当相は3月21日、アメリカを含む全世界が反対しても、最終的にパレスチナ自治区ガザ南部ラファに侵攻し、イスラム組織ハマスを打倒するだろうと発言した。

飯田)21日に投稿されたアメリカのポッドキャストで、「我々はこの責務を完遂する」と明言したそうです。

山川)思い起こせば当初、イスラエルは関係のない避難民の人たちに、テロ退治のため北部を攻撃するから「ガザ南部に避難してくれ」と言っていた。ところが、ラファはガザ地区の最南端、エジプトとの国境沿いにあります。

ネタニヤフ政権の狙いはガザ地区を占領すること

山川)つまり、比喩表現としては残酷かも知れませんが、イスラエルがやろうとしているのはトコロテンです。どこにも住む場所がない状態まで(人々を)押し込んでいる。イスラエル・ネタニヤフ政権の狙いは、ガザ地区をなきものにして、自分たちイスラエルのものにする。結局は「占領を考えていたのだな」と思います。

飯田)パレスチナ自治政府などとの「2国家共存」体制ではなく。

山川)よく言われているように、ネタニヤフ政権は汚職問題があった上、ハマスによるテロを許したことで相当責められているのです。この戦争が終わると、おそらく政権を追われてしまう。いまは戦時体制なので、極右政党と連立政権を組んでいる状態です。その極右政党は、イスラエルの入植地を広げていくという思想を持っていますから、そこに乗っている状態なのです。ですからネタニヤフさん自身は、自分の存命のために戦争を続けている。

飯田)自身が生き残るために。

山川)ガザ地区では死者が3万人を超えたと言われています。一方、イスラエル側は千数百人です。テロ行為に対する反攻だとしても、さすがに認められないレベルの比率になっている。通常であれば、ここでアメリカが止めるのですが、アメリカがあれだけ止めようとしても止まらないのは、ネタニヤフ氏自身の置かれている環境が相当影響していると思います。

トランプ政権になれば、いろいろと動き出し、停戦になる可能性はある

飯田)もともとは去年(2023年)10月に、ハマスが戦闘員ではない一般市民に対してテロ攻撃を行い、当時は国際社会も「イスラエルには反撃の権利がある」というような声明を出しました。しかし、現在は大きく変わりましたね。

山川)イスラエルは大義名分として「テロとの戦い」を押し通していますが、ここまでくると国際法上でも、とても認められる行為ではありません。ブリンケン国務長官が6回も中東に行き説得していますが、どう見てもバイデン政権が強くない。「話せばわかるだろう」という外交を行っても、それがイスラエルの政権に対してプレッシャーになっていない。ロシアやどこに対してもそうなのですが、いい意味での恐怖心がないから止められないのです。この局面がもし変わるとすると、1つは「もしトラ」とよく言われますが、仮にトランプ政権になった場合はいろいろ動き出す可能性があると思います。

飯田)トランプ氏もそうですし、娘婿のクシュナー氏はネタニヤフ氏と個人的に近しいという話もあります。

山川)クシュナー氏は「アブラハム合意」に貢献しました。簡単に言うと、イスラエルとUAEの国交を正常化するための合意です。クシュナー氏は、中東のなかでイスラエルの存在を認めさせたいわけです。中東にもいろいろな状況があって、イスラエルと国境を接するところはパレスチナ人に対するシンパシーが強いのですが、少し離れているサウジアラビアやUAEに関しては、そこまででもないのです。

飯田)そこまでシンパシーが強くない。

山川)特にいまイスラエルとサウジアラビアは、国交を正常化させ、距離を縮めるかどうかがいちばんのポイントになっているので、仮にトランプ政権になった場合、パレスチナ人を犠牲にするような形で停戦の方向に持っていくかも知れない。サウジやUAEなど、いろいろなものを巻き込んで、イスラエルにも多少優位な形で停戦に持っていく可能性はあります。

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