政策アナリストの石川和男が8月17日、自身がパーソナリティを務めるニッポン放送Podcast番組「石川和男のポリシーリテラシー」に出演。今後の医療制度のあり方について、2007年に財政破綻した北海道夕張市の事例をもとに専門家と議論した。
北海道夕張市は2007年、国から財政再建団体に指定され事実上財政破綻した。国の管理下のもと、公共施設の廃止や縮小、職員の削減や減給などが行われ、住民サービスに大きな影響が出た。医療サービスの提供も例外ではなく、市内で唯一の総合病院であった夕張市立総合病院(当時の病床数171)は病床数19の「診療所」に縮小された。
現地視察をしたというゲストの構想日本代表・加藤秀樹氏は当時の様子について「(診療所の)電気はほとんど消えていて、薄暗い中で一部だけ灯りがついていた。例えばCTの機械はあるが、部品を買えずに使用不可。これでは医療崩壊だ、死人続出だと言われたが、ところがそれから1年、2年、3年経っても全く医療崩壊しなかった」と述べた。
加藤氏によると、夕張市で唯一の総合病院が失われた後も「平均寿命が短くなったか、毎年の死者が増えたかというと、そうでもない」という。一方で劇的に変わったのは「死因」だったと明かし、当時の日本の3大死因が「がん・心疾患・肺炎」と言われていたなか、夕張では心疾患・肺炎の死因が減り、その分「老衰」が増えるという現象が見られたと言及。加藤氏は「要するに、何か具合が悪いと病院行ったら病名がつく。病名がつくと薬を出したり、いろんな治療をする。
一方、家でちょっと心臓の具合が悪いかな、息切れするな…でもまあいいかと、街のクリニックで診てもらって、ちょっとした薬をもらった程度で家で死ぬと、病名がついていなければ老衰になる」と語り、「これを医療崩壊と言うのか。医療提供者側はある意味で崩壊したのかもわからないが、医療を受ける側、住民からすると全然崩壊でもなく、これでいいんじゃないのみたいな。そこがすごく大事で、考えさせることがいっぱいある。日本ではもう医療費が大変だとか、財政も大変だって言っているときに、これはひょっとして日本が今から見習うべきモデルになるのではないか」と持論を述べた。
ほかにも、当時の診療所長が歯科医であったことから、住民の家をまわり口腔ケアの指導を徹底。その結果、肺炎が減るなどの効果が見られたほか、高齢住民の体力維持が適切になされているかなどの巡回指導に力を入れたことなどが紹介された。
そのうえで加藤氏は「30代とか50代とか、そういう働き盛りで本来ならまだずっと生きられる人が、高度な医療を使用できることは大事。ただ、歳を取ってくると病気なのか、歳を取ってきたから部品が傷んできたのかの区別はできない。いわば経年劣化。病名はつけられるが、もう元には戻らない」と指摘。年々、自宅で看取られる人が減り、病院で最期を迎える人は増えている点を挙げ、「病院のベッドで亡くなるよりは家で看取った方がいいかなというシフトをもっと考える時代ではないか」と訴えた。
最後に石川は「自分はもう還暦手前。医療や介護を受ける確率が高くなる。でも、それで後世の子どもたちに負担をかけるなら、あまり極端に医療や介護に依存することなく、自分で静かに生きていく…夕張はそういう新しい死生観を与えてくれた」と締めくくった。
番組情報
政策アナリストの石川和男が、暮らしに欠かせないエネルギー問題の様々な“見方”を提起。
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※2024年4月6日(土)までは『石川和男のエネルギーリテラシー』