『金子差入店』SUPER EIGHT丸山隆平主演、生々しい人間模様を巧みに描いたヒューマンサスペンス

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Tokyo cinema cloud X by 八雲ふみね【第1251回】

シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信する「Tokyo cinema cloud X(トーキョー シネマ クラウド エックス)」。

今回は、5月16日に公開された『金子差入店』と『ノスフェラトゥ』をご紹介します。

(C)2025「金子差入店」製作委員会

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『金子差入店』世の中で知られていない職業に光を当てたオリジナル映画

差入屋という職業があります。それは、刑務所や拘置所に収容された人への差入品を届ける代行人のこと。面会に訪れる人が自ら品物を選んで、直接届けることが出来るのが理想なのでしょうが、現実にはそうはいかない事情を持つ人も。

差入屋と呼ばれる人々は、差入品には厳しい審査や検閲があるということを熟知しており、様々な事情から面会に赴くことが出来ない人に代わって、面会室へ足を運ぶこともあります。そんな差入店を営む家族の絆と、彼らが巻き込まれる不可解な事件を描いた異色のヒューマンサスペンス『金子差入店』。

メガホンを取ったのは、滝田洋二郎監督や三池崇史監督など、名匠のもとで助監督を務めてきた古川豪監督。拘置所の実景を撮りに行った際、その片隅に佇む「差入店」が目に留まったという出来事をきっかけに脚本を執筆。13年の歳月をかけて、唯一無二の映画が完成しました。

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『金子差入店』のあらすじ

東京の下町で暮らす金子真司。彼の生業は、刑務所や拘置所に収容された人への差し入れを代行する「差入屋」だ。叔父の星田から引き継いだ住居兼店舗で差入の品物を販売し、星田、妻・美和子、10歳の息子・和真と一緒に暮らしている。

ある日、和真の幼なじみである徳山花梨が殺害されるという事件が発生。金子一家は、いたいけな少女の死から立ち直れずにいた。

そんな中、ひとりの女性が差入店を訪ねてくる。彼女は花梨を殺した犯人・小島高史の母親で、息子への差し入れの代行と手紙の代読を依頼する。癒えない傷を抱えながらも、差入屋としての仕事を淡々とこなそうとする金子だったが、常軌を逸した小島の応対に感情を激しく揺さぶられることに。

同じ頃、金子は毎日のように拘置所を訪れている女子高生のことが気にかかり……。

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『金子差入店』のみどころ

主人公・金子真司を演じたのは、SUPER EIGHTの丸山隆平。音楽活動やバラエティ番組への出演など多彩な活躍を続けている彼にとって、本作は8年ぶりの映画主演作となります。他人に言えない過去を持ちながらも、息子のために人生をやり直したいともがいている。ちょっぴり古風で不器用な男の心情を見事に体現し、俳優としての新境地を開拓しています。

共演には真木よう子、北村匠海、根岸季衣、岸谷五朗、名取裕子、寺尾聰など実力派キャストが集結。また三浦綺羅、川口真奈といった若手俳優たちのフレッシュな演技も必見です。

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被害者、加害者という括りだけでなく、事件に関わる様々な人の立場が丹念に描かれており、人間誰しもに内在する可笑しみやペーソスが浮き彫りとなっている本作。その生々しいほどの人間模様に、心をギュッと鷲掴みされる人も多いことでしょう。

現代に生きる人々の心に静かに寄り添った良作。映画館でじっくりと味わって。

(C)2024 Focus Features LLC. All rights reserved.

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『ノスフェラトゥ』リリー=ローズ・デップが恐れる“彼”の正体とは……

1922年に製作された映画『吸血鬼ノスフェラトゥ』を鬼才ロバート・エガース監督がリメイクした『ノスフェラトゥ』。不動産業者トーマス・ハッターの新妻エレンは、夫の不在中、彼の友人宅で過ごすことに。ところがある時から、夜になると、夢の中に現れる得体の知れない男の幻覚に悩まされるようになり……。

「第97回アカデミー賞」では撮影賞、美術賞など4部門にノミネート。19世紀当時の建物や衣装などが細部にわたるまで再現されており、その美しさは格別です。

迫り来る恐怖描写と、観客の視線を釘付けにする映像美に酔いしれる。ゴシックホラーの新たな名作です。

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<作品情報>
金子差入店
2025年5月16日(金)からTOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー
出演:
丸山隆平
真木よう子 / 三浦綺羅 川口真奈
北村匠海 村川絵梨 甲本雅裕 根岸季衣
岸谷五朗 名取裕子
寺尾聰

監督・脚本:古川豪
音楽:Benjamin Bedoussac
主題歌:SUPER BEAVER「まなざし」(ソニー・ミュージックレーベルズ)
製作:「金子差入店」製作委員会(REMOW、博報堂DYミュージック&ピクチャーズ、ストームレーベルズ、ハピネット・メディアマーケティング)
製作幹事:REMOW
制作プロダクション:KADOKAWA
配給:ショウゲート
(C)2025「金子差入店」製作委員会
公式サイト https://kanekosashiireten.jp/

(C)2024 Focus Features LLC. All rights reserved.

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<作品情報>
ノスフェラトゥ
2025年5月16日(金)からTOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー

出演:ビル・スカルスガルド ニコラス・ホルト リリー=ローズ・デップ アーロン・テイラー=ジョンソン エマ・コリン ラルフ・アイネソン サイモン・マクバーニー
ウィレム・デフォー ほか

監督・脚本:ロバート・エガース
字幕翻訳:松浦美奈
原題:Nosferatu
配給:パルコ ユニバーサル映画
(C)2024 Focus Features LLC. All rights reserved.
公式サイト https://www.universalpictures.jp/micro/nosferatu

連載情報

Tokyo cinema cloud X

シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。

著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/

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