来週火曜日、5月31日から、ファンおたのしみの、プロ野球セパ交流戦がスタートします。
直前の今、けっして、盛り上がりに水を差すつもりはないのですが、実は今、とある「理由」から、プロ野球界に未曾有の危機が忍び寄っている…という話があります。
いったいどんな危機なのか? というと… ズバリ! ごくごく近い将来、「バットがなくなっちゃうかもしれない」という話です!
高校野球と違って、プロ野球では、木製のバットが使われていますよね。
要するに、結論から言いますと、バットの材料となる木が、いま、「激減している」ということです。
詳しく説明していきましょう。
1990年代初頭から、つい最近まで、バットの素材としていちばん愛用されてきたのは、「アオダモ」という名前の、モクセイ科の落葉広葉樹。
分かりやすいところで言うと、ゴジラ松井さん、あのイチローも、長らく、この「アオダモ製のバット」を使ってきました。
この「アオダモ」、別段、珍しい木ではなく、全国津々浦々いたる所に自生しています。
しかも、やわらかくて加工しやすいということで、高級家具の素材として、重宝されているそうです。
「じゃあ、なんにも困ることないだろう!」「タップリ生えているのだろう? 」と思いますよね。
ところが、この「アオダモ」… 家具じゃなく、バットに加工しようとすると、すこしばかり問題がある。
プロ選手が使うバットともなると、素材ひとつとっても、さまざまな条件が、ひっついてきます。
反発力が強く、弾力性に富み、さらに、耐久性にも優れていなくてはなりません。
さらにくわえて、軽ければ、いうことなしです。
ところが… こういった条件を全てクリアする「アオダモ」となると、ほとんど「ない!」
まず、かなり寒い土地じゃないと、育ちません。
具体的に言いますと、北海道です。
中でも、比較的、雪の少ない「北海道の太平洋側」で育っているアオダモだけが、すべての条件に適うアオダモなのだそうです。
なにしろアオダモは、伐採できる場所がきわめて限定されていますから、年々、その数は減少する一方。
高さ約15メートル、直径約50センチにもなる大きな木ですが…この1本から作ることができるバットの数は、驚くことに…わずか「8本」のみ。なんです!
では、天然モノに頼らず、アオダモを、植林すればどうでしょうか。
実は、これも難しい!
不思議なことに、アオダモは、天然ものじゃないと、使い物になりません。
人工林では、なぜか、バットに使えるほどの強さにはならないのだそうですよ。
しかも、「成長速度」の問題もあります。
アオダモという木は、非常に成長が遅く、バットが取れる太さに成長するまでに「70年以上」かかってしまう…。
こういった理由から、北海道のバット製造業者も、減少の一途。
40年前には、北海道だけで、バット製造会社が「60社」もあったのですが、
今では、わずか「2社」に減ってしまいました…。
バット職人と呼ばれる人たちも、絶滅寸前。
イチローやゴジラ松井のバットを作っていた有名なバット職人は、いま、蕎麦屋さんに転向。
職人は職人でも、「バット職人」ではなく、「そば打ち職人」に転業しているんです。
もうこうなってくると、選手のほうとしても、アオダモ製のバットだけに、こだわってはいられません。
たとえば、野球の道具に徹底的にこだわることで知られる、イチロー選手。
去年のシーズンから、泣く泣く… なのかどうかは分かりませんが、アオダモバットにキッパリと見切りを付けまして、「ホワイトアッシュ」という名前の木で作ったバットを使っています。
この「ホワイトアッシュ」は、もっぱら、メジャーリーガーの間で使われてきた木でして、別名、「アメリカタモ」と呼ばれています。
こちらは、アオダモに比べますと、「しなり」は乏しいものの、反発力には優れていて、パワーヒッターに向いています。
しかも、アオダモよりは安いということで、多くのメジャーリーガーが使用しているんです。
でも、安いだけあって… コチラは、実に「割れやすい!」
ボールにヘンな当たり方をすると、木目に沿って、すぐに割れてしまいます。
しかも、ホワイトアッシュは、アオダモに比べると「品質にバラつきがある」と言われています。
たとえば、日本のある選手は、ホワイトアッシュのバットを使ってみて、こう言ってます。
「ホワイトアッシュは、アオダモに比べると、なんというか、打感が、柔らかいねぇ!」
ところが、違う選手は、こう言っているんです。
「ホワイトアッシュってのは、アオダモよりも、打感が、堅いねぇ!」
なんと、「まったく逆の感想」を漏らしているんです。
バットによって、当たりはずれがある… といってもいいかもしれません。
でもまぁ、背に腹は代えられない、という見方もあるでしょう。
ないものねだりのアオダモよりも、ホワイトアッシュで我慢するか… という考え方もありますよね。
ところが… 先ごろ、カナダの雑誌が、こんな衝撃的な提言をおこなったんです。
「このまま伐採が続くと、遠からず、ホワイトアッシュ製のバットは、消滅してしまうだろう。」
なんと、頼みの綱のホワイトアッシュさえも、絶滅の危機に瀕している… というんです!
「アオダモ」もピンチ、「ホワイトアッシュ」もピンチ… となってきました。
そこで、もうひとつ、「メイプル」という木も、日米を問わず、使われ始めています。
ここのメイプル、端的に言えば、「もみじの木」のこと。
バリー・ボンズが使い始めてホームランを量産したあたりから、がぜん注目を浴びるようになりました。
でも、この「メイプル」には、致命的ともいえる、ヘンな弱点があります。
きれいに芯に当たればよいのですが、打ち損じると、手が、「ビリビリにしびれる」のだそうです。
その痛さたるや、タイヘンなもので、守備にも影響が出るほどらしい!
こうなるとやはり、使いたくても、ちょっと使い辛いですよね… 。
まぁそんなわけでして、どれも、帯に短し、たすきに長し。
プロ野球につきものの「木製のバット」が、大ピンチを迎えている、というお話。
近い将来、ひょっとしたら、かつてサミー・ソーサが使っていた、
「コルクを仕込んだインチキバット」が、大手を振ってまかり通る時代になる… かもしれませんね!
5月25日(水) 高嶋ひでたけのあさラジ!「三菱電機プレゼンツ・ひでたけのやじうま好奇心」より