人間の愛とは、大体において自分本位なものです。
とくに男と女のセックスをともなう愛は、仏教では〝渇愛(かつあい)“と呼ばれます。
渇愛とは肉欲の愛。喉が渇いてたまらない感じで、飲んでも飲んでも心は乾きつづけます。
渇愛は、わたしがあなたを愛しているのだから、あなたもわたしを愛してくれ、と要求します。愛のお返しを求めます。それも元金だけでなく、利息もつけてほしいと望んでしまいます。
自分が欲していたら押しつけがましく与え、それの報いてくれないと怒る。じつに勝手なものなのです。
瀬戸内寂聴
撮影:斉藤ユーリ