高齢化の波が押し寄せているのは人間だけじゃないんですね。
実は動物園でも「高齢化」が大きな問題になっています。
今年5月、武蔵野市の「井の頭自然文化園」で飼育されていた国内最高齢のアジアゾウ「はな子」が69歳で亡くなったこと、記憶に新しいですが…
実は「はな子」が亡くなったことで国内のアジアゾウは79頭になったそうです。
ここ数年、日本の動物園では寿命を迎えるゾウが増えていて、予測では国内で飼育されるアジアゾウは50年以内に20頭ほどに、またアフリカゾウは30年以内にはゼロになる可能性もあるとも言われています。
日本でゾウが見られない時代がくるかもしれないんですね。
もちろん ほかの動物も例外でなく、国内の動物園の動物はどんどん高齢化。このままだと将来、直接見られない動物が増えていく可能性もあるそうです。
高齢化の背景には、「国際的な動物の価格高騰」があります。特に最近は新興国と言われる国で次々と動物園が建設されているため、動物取引で競争原理が働き、価格の高騰が続いているんですね。
例えば、アジアゾウはここ20年で1,300万円が3,500万円に、ホッキョクグマは400万円が6,000万円に、ゴリラは200万円が1億円にまで値上がりしているそうです。すごいですねー。
また動物の世界には、国際取引に関する「ワシントン条約」があるので、繁殖・研究目的でなければ取引ができないなどの厳しい条件もあります。そのため、新たに動物を輸入するのは年々難しくなっていて、昔からいる動物がずっと現役という「高齢化」につながっているんです。
ならば、国内で繁殖させればと思いますが、そう簡単ではありません。
先日、上野動物園のアジアゾウ「ウタイ」の妊娠がニュースになりましたが、上野動物園でアジアゾウが妊娠したのは1888年の飼育開始から初めてのこと。128年の奇跡とも言われています。
実はアジアゾウの飼育管理下での繁殖というのは極めて難しく、これまで国内でも10頭しか誕生した例がないそうです。飼育下では生活環境も異なりますし、ゾウにも相性がありますからね。
今回の妊娠には飼育に携わる人たちの研究や繁殖技術が活かされていますが、128年と聞くと、繁殖が容易いものではないとわかりますよね…。
もちろんほかの動物も同じで、繁殖とひと言で言っても難しい。しかも無事に出産ができるのか、無事に大人にまで成長できるのか。周りのサポートも含めて、動物を繁殖させるというのは大変なことなんですね。
もともと日本の動物園は、オス1頭・メス1頭という展示の仕方が主流で、オスとメスの生態をそれぞれ見てもらうという意識で進んできました。
海外の場合、巨大な展示施設を作って、大きな動物でも自然に近いかたちで飼育して、繁殖に取り組む環境が整備されていますが、日本の場合は「繁殖」よりも「展示」が優先。新しい動物は海外から購入するというのがスタンダードだったんですね。
ただ、数年前から国内の動物園でも、繁殖についての積極的な取組が進んでいて、私も伺ったことのある「よこはま動物園ズーラシア」の「繁殖センター」(横浜市環境創造局公園緑地部 動物園課 繁殖センター)では、全国の動物園で採取された希少動物の精子や卵子を凍結保存したり、希少な動物の繁殖について遺伝子レベルから研究したりしています。
このズーラシアに代表されるように、今や全国の動物園は単なる娯楽施設ではなく、研究機関にもなってきているんですね。
繁殖への取組は今後も全国の動物園で積極的に行われていくと思われますが、動物園のすべての種類の動物を繁殖させられるかどうかはわかりません。高齢化の波に繁殖の研究が追い付くのかどうか、そういった問題もあります。
しかし、動物園のあり方が、「展示」から「繁殖」へと進んでいるのは確かです。
そして動物園だけでなく、その研究が絶滅の危機を迎えている野生の動物の繁殖にも役立つことが期待できます。動物の高齢化、日本の研究・技術に期待しましょう。
10月6日(木) 高嶋ひでたけのあさラジ!「三菱電機プレゼンツ・ひでたけのやじうま好奇心」より