街路樹が突然倒れる!?その原因は? 【ひでたけのやじうま好奇心】
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街路樹が突然倒れる…というニュースが度々出てきます。
先日の巨大台風のような想定を超える自然災害が原因の場合もありますが…ここ数年は、街路樹の老朽化や根の腐敗などのケースが結構多いそうです。
いま日本全国にある街路樹の多くは高度成長期に植えられたもの。
街路樹の種類は、イチョウ・ケヤキ・サクラとさまざまですが、その寿命は100年、数百年ともされていて、50年ほどで老朽化するというのはちょっと早すぎます。
調べてみると、最も大きな要因は「環境」だそうです。
そもそも街路樹には景観を良くしたり、気温上昇を抑えたり、それ以外にも、車の騒音対策、火災や台風等の自然災害対策という側面があり、ちゃんと私たちの生活の向上が考えられています。
しかし、道路沿いというのは森や公園と違い、樹木にとっては過酷な環境。
街路樹の周りはアスファルトやコンクリートで舗装され、地中には排水溝などのライフラインも通っていて、自由に根を張ることができません。
正常な環境であれば、雨が降って地面に浸透していくはずの水分や栄養は根を通って全体に行きわたるのですが、街路樹の場合はそれが出来ないために、通常よりも早く老朽化してしまうというわけです。
現在行われている植え替え作業などでは、木と木の間隔を取り、街路樹の周りのスペースを広くして根が張りやすいようにするなど、優しい環境づくりが行われていますが、多くの街路樹が植えられた50年前は、そこまで樹木の生育環境が意識されていなかったのかもしれません。
また道路脇にあるということは、人の手にも触れやすくなります。
歩行者が知らないうちに根っこを踏んで、街路樹を傷つける場合もあります。
そうなると今度は、傷のできた場所から よからぬ菌が入り込んで、街路樹の根っこや幹を腐らせてしまうという問題が起こります。
特に街路樹に寄生することが多いのは、キノコの一種であるベッコウタケ。
元気な若い木には寄生せず、特に枯れている、弱っている木に寄生するとされていて、“栄養が足りず傷ついている街路樹”は大好物です。
このベッコウタケに寄生されると、幹の中が腐っていくのですが、困ったことに、外見にはあまり変化がないそうです。
街路樹の根にベッコウタケがあると、寄生されている目印になりますが、地中に埋まっているので、地上からの目視では判別がしづらく、外見は緑が茂っていても、幹の中はスカスカ…という街路樹があって、倒木の危険が出てきてしまいます。
キノコがないから安心、でもないということです。
このような状況にある街路樹ですが、各自治体でその対策に乗り出しています。
中でも東京都はいち早く「街路樹診断」を取り入れた自治体です。
20年ほど前に街路樹が倒れたことを機に都内の主要道路の調査を開始。
当時は「樹木医」と呼ばれる人も少なく、確認作業に時間もかかりましたが、のちに「街路樹診断マニュアル」を作成して、各自治体もそれをベースに街路樹の診断に取り組むようになりました。
また名古屋市では「街路樹再生指針」というものを打ち出し、植えられてから40年以上経つ街路樹を、従来の木よりも一回り小さく、より病気への耐性の強い樹木に植え替える対策も行っています。
ほかにも、自治体が主導して、住民の手で街路樹を守ろうという、街路樹サポーター制度を取り入れる自治体も増えています。
ボランティアで参加する住民たちが、落ち葉の清掃や除草といった美化活動や、街路樹の点検をする、町の緑を住民の手で守ろうという活動です。
ただ、地域にある街路樹をすべて診断して、必要があれば取り除き、新たな樹木に植え替えるという作業は何十年にも及ぶ計画で、維持管理にも何十億とかかります。
そもそも街路樹は自治体の管轄で、自治体によってその対応が違います。
診断マニュアルを作成したり、樹木医に点検を依頼しているところもあれば、目視のみに頼っていたり、ほとんど対応していないケースもあるそうです。
国土交通省も全国の街路樹の倒木や自治体の対応などの実態調査に乗り出していますが、すでに老朽化している街路樹は多く、今は各自治体に任せているのが現状です。
高度成長期から50年、私たちにできることは、街路樹の成長を妨げない、街路樹を傷つけない、そうした身近な取組かもしれません。
9月29日(木) 高嶋ひでたけのあさラジ!「三菱電機プレゼンツ・ひでたけのやじうま好奇心」より