一番自然で幸福な女の一生とはどういうものでしょう。
やはり、年ごろに適当な男にめぐりあい、結婚し、愛する夫の子供を何人か産み、途中、あれこれ波風はあっても、がまんしたりされたりして添いとげ、年老いて、夫が病気で倒れたときは心ゆくまで自分で看病し、あの世に夫が旅立つ時には手を握ってなぐさめてやる。
さて、ひとりになって、孫に小遣いをねだられたり、子供たちの家をあちこち訪ねたりして、やがて病気になった時は、子供(出来れば嫁でなく自分の娘)に看病され夫のあとを追う─というものなのでしょう。瀬戸内寂聴
撮影:斉藤ユーリ