あなたが平凡な家庭を守り、平凡な人生を送りたいと思っているならば、別れ道に立ったときに平穏な道を選ぶべきです。
そのほうが穏やかに暮らせますし、つらい思いもしないですむでしょう。
けれどももし、人よりもすばらしい世界を見よう、人の歩いたことのない道を歩いて、そこにある宝にめぐり逢おうとすれば、どうしたって危険な道、剣呑(けんのん)な道、こわい道を歩かねばなりません。
いつも断崖絶壁の淵に立って、こっちへ落ちれば身がこなごなになるかもしれない、あっちへ落ちれば獣に食われるかもしれない、そういう道を求めて歩くのが才能に賭ける人の心がまえではないでしょうか。瀬戸内寂聴
撮影:斉藤ユーリ