自分のなかで表現されたがっている命のうめき声を聴く能力を持たなければ、わたしたちはものを創るきっかけがつかめません。そのうめき声を聴きとる耳と心を持つには、努力して自分を磨いていかなければならないのです。そのためには自分が好きなことを一生懸命やってみることでしょう。どれをやっていいか分からないときは、片っぱしからやってみたらいいのです。そうすると、自分が一番好きだと思っていたものが二番目で、それよりもっと好きなものがあったのに気がつくこともあるのです。
瀬戸内寂聴
撮影:斉藤ユーリ
出典:『生きる言葉 あなたへ』光文社文庫