おひとり様も案外にいいもの?『未来よ こんにちは』【しゃベルシネマ by 八雲ふみね・第175回】

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さぁ、開演のベルが鳴りました。
支配人の八雲ふみねです。
シネマアナリストの八雲ふみねが、観ると誰かにしゃベリたくなるような映画たちをご紹介する「しゃベルシネマ」。

今回は、3月25日から公開の『未来よ こんにちは』を掘り起こします。

軽やかにしなやかに“女性の自立”を描く

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セザール賞に史上最多13度ノミネートされ“フランスの至宝”とも謳われている、イザベル・ユペール。
60歳を超えた現在も精力的に活動し、年に1~3本の出演作が公開となっています。
そんなフランスの大女優を想定して脚本を書き、本作を完成させたのが、若干36歳の女性監督、ミア・ハンセン=ラブ。
いま、フランスがもっとも注目する映像作家と女優が生み出した話題作が、日本でも公開となります。

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パリの高校で哲学を教えている50代のナタリーは、同じく哲学教師の夫ハインツと二人暮らし。
二人の子供はすでに独立し、パリ市内に一人で暮らす母イヴェットの介護に追われながらも、ナタリーは充実した日々を送っていた。
そんな中、結婚25年目にして「好きな人が出来た」とハインツから離婚を切り出され、年老いた母も他界。
思いがけない出来事が次々と起こり、バカンスシーズンを前にナタリーは一人になってしまった…。

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『未来よ こんにちは』は、孤独や時の流れを受けとめながらも、未来を信じて生きる女性の姿を描いた人間ドラマ。
第66回ベルリン国際映画祭コンペティション部門に出品された本作は、銀熊(監督)賞に輝きました。
パリの美しい街並みや、ブルターニュの煌く海、フレンチ・アルプスといった美しい映像とともに、観る者を優しく包んでいくような音楽も魅力的で、ミア監督の作家的センスは秀逸。

イザベル・ユペールの魅力が最大限に活かされている作品ですが、共演者はアンドレ・マルコン、ロマン・コリンカ、エディット・スコブといずれもフランス映画界を支える演技派ばかり。
ユペールと彼らの演技は見事な相乗効果を生み出し、主人公ナタリーの心模様がより鮮やかに映し出されます。

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期せずして“おひとり様”となってしまったナタリーの人生。
しかし彼女は歩みを止めることなく、想定外の出来事が起ころうともうろたえたりはしません。

「女性一人での食事や旅行」と聞くと、寂しそう…とか、恥ずかしい…といった印象を持つ人もまだまだ多いかもしれませんが、“おひとり様”は決して悪いことではない!
孤独と背中合わせにある自由を謳歌し、輝く未来に向かってしなやかに生きるナタリーの姿は、私たちが意外と忘れがちな「生きたい人生を生きる」ことの大切さに気付かせてくれます。
幸せに向かって生きているその瞬間こそ、人は幸せなのかもしれませんね。

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未来よ こんにちは
2017年3月25日からBunkamuraル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次ロードショー
監督・脚本:ミア・ハンセン=ラブ
出演:イザベル・ユペール、アンドレ・マルコン、ロマン・コリンカ、エディット・スコブ
©2016 CG Cinéma · Arte France Cinéma · DetailFilm · Rhône-Alpes Cinéma
公式サイト http://www.crest-inter.co.jp/mirai/

連載情報

Tokyo cinema cloud X

シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。

著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/

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