険しい崖の上で霧のなかに浮かび上がるインカ帝国最大の遺跡、南米ペルーのマチュピチュ。
この世界遺産に、比較的近いヨーロッパのフランスとイタリアからはそれぞれ35,000人、英国が55,000人。
日本からは30時間もかかるのにも関わらず、それ以上の6万人も訪れ、年々観光客はさらに増える一方となっています。
国内で行われた『インカ帝国展』は来場者70万人!
日本人は、マチュピチュが大好き、なのです。
そもそも、マチュピチュとはどういうところなのか?
“天空の都”あるいは“空中都市”といわれるように、マチュピチュは南米ペルーのアンデス山脈、標高約2,450mの尾根に位置する古代インカ帝国の遺跡。
切り立った山々の中に突然石垣が現れ、何故このような高地の断崖絶壁に要塞都市が建築されたのか?が世界七不思議のひとつに選ばれているほどです。
そこで本日の本題。
この10年、山深い所に突然目を見張る城壁や町がある場所のことを「日本のマチュピチュ」というようになり、そういった場所が日本のあちこちにあるのをご存知でしょうか?!
一番有名なのが兵庫県北部の朝来市にある「竹田城壁」。
天守閣は残っていませんが、山の上に石垣が残る典型的な山城。
10年前は観光客2万人だったところ、“雲海に浮かぶ竹田城跡”の写真と、“日本のマチュピチュ”と誰からともなく言うようになったのがきっかけになって、観光客は30倍の60万人近くに達しました。
山城だったらこっちも負けないよ、と、岡山県高梁市(たかはしし)にある備中松山城、福井県大野市にある越前大野城、三重県熊野市にある赤木城跡(あかぎじょうあと)、これらも「天空の城」で「日本のマチュピチュ」だと、場所によって違いますが観光客が数倍から20倍にも伸びているのです。
そこでふと思うのが「じゃ、日本のマチュピチュは何だ?」という疑問です。
実は、誰も定義している人はいません。
ただ「山の上や山あいにあって」、「雲海や朝もや、霧がかかっている幻想的な場所」であろう、というレベルです。
そんな曖昧さとイメージの良さから、「日本のマチュピチュ」と名乗る場所が“山城”だけには限らなくなってきている現象が面白いのです。
まずは、8年前から「東洋のマチュピチュ」を掲げているのが愛媛県新居浜市、かつての日本三大銅山の一つに数えられていた「別子(べっし)銅山」。
山深い山脈の中に、重厚な花崗岩造りの倉庫など歴史を物語る遺構の数々が鎮座し、10万人もの観光客を集めるようになっています。
別子銅山跡は、「東洋のマチュピチュ」と大きく出ているだけあって、ペルー大使が訪れていたり、新居浜市の美術館で「大アンデス展」を去年開催したりしてペルーと友好都市を目指すなど規模がでかい。
一方で、大分県宇佐市(うさし)。
相撲ファンには昭和の大相撲・双葉山の出身地で知られ、英語表記でUSAと書くことから「日本のUSA」と知名度アピールに余念がない自治体です。
さて、平成15年、市の職員が市内を巡回中に突然気が付いてしまった「マチュピチュにそっくりの山と棚田」。
そこで市はHP上に「本家のマチュピチュは遠いけど、宇佐のマチュピチュは近い」と猛アピール。
宇佐市は商魂たくましかったのは、「宇佐のマチュピチュトートバック」や「マチュピチュ タンブラー」を発売し、現在完売。
去年は国道に「宇佐のマチュピチュ」を掲げ、山の中に九州中から観光客が車でやってくるそうです。
ちなみに、「雲海」や「朝もや」などはほとんどありません。
そして、一番新しい日本のマチュピチュは、「岐阜のマチュピチュ」。
2年前に命名され、なんとこちらは山あいにある茶畑です。
揖斐茶(いびちゃ)という、やぶきた茶とは違って、日本古来から自生しているお茶の木を無農薬を育てているのがここのウリ。
2006年、サッカー日本代表の監督にイビチャ・オシムさんが就任すると、町長の発案で、オシムさんに揖斐茶を差し入れるというユニークな観光アピールが当時話題に。
山あいで作られている揖斐茶の里を上から見ると天空の茶畑、まさに「岐阜のマチュピチュ」だということで、これまでほとんど人が来ることがなかったのに、休日ともなると中部地区からマイカーが押し寄せています。(1日500台)
看板はすべて住民の手作り。
交通整備するのも、お茶農家の人たちが嬉しそうにニコニコしながらやっています。
現在のトコロ、四方を山に囲まれ、高い位置から見下ろす鮮やかな緑の茶畑はまさに一枚の絵画だと、評判がいいようです。
いままでなかなか観光客が呼べなかった場所、たとえば山城や山あいの道、茶畑までもが「マチュピチュ」と名乗ることで客を集めるようになっています。
これが一過性のブームにならないように、今後どうしていくかは、各自治体の腕次第ということになるのではないでしょうか。
6月6日(火) 高嶋ひでたけのあさラジ!「三菱電機プレゼンツ・ひでたけのやじうま好奇心」より