3日のブルージェイズ戦で、ヤンキース・田中が7勝目をあげました。内容は7回を5安打1失点。日本のファンからしてみれば当然-と感じるでしょうが、ニューヨークは久々に大騒ぎでした。ジラルディ監督が、
「ようやく戻ってきてくれた」
とエースの復活に太鼓判を押し、地元マスコミもまるで手のひらを返したかのように、さすがとほめたたえています。
4-5月、5連勝までは、良かったものの、5月14日から6月6日の5試合に登板して、5連敗を喫した。その後、勝敗つかない1試合があり、続く14日のアスレチックス戦では、4回しか持たず自責点5。この敗戦を喫した6試合で何と14本もの本塁打を浴びています。「15年オフに手術した、右ひじの状態が悪い」という説まで取りざたされるほどです。
「なぜ、MRI検査をしないのだ」
とジラルディ監督へ質問をする記者まで出て、
「スランプのピッチャー全員に、MRI検査を本当にさせるのか」
とジョークで返すほど火消しに躍起でした。そんな時、救世主となったのはレンジャーズのダルビッシュ。23日、メジャーリーグでは、初の直接対決が実現します。ともに素晴らしい内容で、2人には勝敗がつかず。田中は、
「好投できたことは、一生忘れません」
とかみしめるように語りました。
田中は高校時代から、言い訳などをほとんど口にしません。楽天時代、野村監督が、「マー君、神の子、不思議な子」と評したように、抜群の勝ち運が自身の特徴のひとつ。たとえ、自身は不調でもその時は味方打線が大爆発する。星野監督で日本一に輝いた際は、開幕から24連勝。前年からカウントすると28連勝に加え、ポストシーズンを含めれば、30連勝という3つの金字塔を打ち立てました。この3つは、ギネス記録として認定済みです。今回、かつてないほど、ニューヨークマスコミのバッシングを受け、かなり応えた様子だったものの、これも試練。
ダルビッシュとの対決で変化があったのは、リリースポイントが微妙だが、とても良くなったことと指摘されました。昨日の好投で、2連勝となり、今季通算も7勝7敗の五分。「これをきっかけに頑張りたい」と、後半戦への起爆剤としたい構えです。メジャー4年目の今年は、開幕前、「34試合登板。230イニングの投球」という2つの目標を掲げました。
一方で、自身にとって、17年は価値を上げるための大事な1年。田中はヤンキース移籍時、7年契約で総額約161億円という破格の条件で迎えられています。他にも、住居費や通訳、渡航費用の球団負担など、それこそ身ひとつでいらっしゃい。年俸は為替の変動にもよりますが、約23~25億円です。それに加えて、今オフはオプトアウト条項がある。
つまり、現在の契約以上の好条件を出す球団が出た場合、田中側が契約を破棄できる。かといって、成績が悪くても、契約を破棄しなければ、給料は保証されます。いずれにしても損はない。それほど田中にとって有利な契約を結んだのです。一般人からすれば、うらやましい限りですが、ヤンキースのエースの勲章はお金では買えない価値があります。エースである限り、田中がヤンキースを離れることはないでしょう。
7月5日(水) 高嶋ひでたけのあさラジ!「スポーツ人間模様」