安倍首相が「謙虚」を強調する理由
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11/2(木)FM93AM1242ニッポン放送『高嶋ひでたけのあさラジ!』今日の聴きどころ!②
外よりも党内に向けてのアピール
7:03~ひでたけのニュースガツンと言わせて!:コメンテーター佐藤優(元外務省主任分析官・作家)
実は公明党よりも右に位置する立憲民主党
皇居での首相任命式と閣僚認定式を経て、第4次安倍晋三内閣が発足しました。今回の選挙結果と、そこから想像される今後の情勢について、佐藤優さんに伺います。
安倍総理大臣)責任の重さを深く胸にきざみ、謙虚な姿勢で、自由民主党と公明党の強固な安定した連立基盤の上に真摯な政権運営にあたってまいります。
高嶋)謙虚をアピールして、第4次安倍内閣発足ですね。第4次までやったのは、吉田茂さん以来とのことですから、これはもう、安倍さんは将来、大勲位は間違いないですね。今度の選挙結果は、どのように受け止めましたか?
佐藤)ここで「30センチの物差し」を想像してみてください。右側5センチのところに、自民党と希望の党、維新があるのです。右側7センチ以内のところに、立憲民主党がある。立憲民主党は「リベラル」とか「左派」とか言われますが、あの政党は、基本は「改憲政党」です。憲法を改正しても構わない。それから、沖縄の辺野古基地問題に関しては、「ゼロベースで検討する」ということですが、現在の基地の工事を差し止めるとか、反対とかは言っていないわけです。なので、その位置に置いては、右です。
高嶋)けっこう、右なのですね。
佐藤)それから、左を見てみると、左5センチ以内が共産党で、左10センチ以内が社民党。ただ、数は少ないですよね。では、連立与党の公明党はどこかというと、政策的には社民党よりは右ですが、立憲民主よりは左なのです。
高嶋)立憲民主よりも公明党の方が、左なのですね。
佐藤)憲法改正に慎重で、沖縄の辺野古問題に関しては、公明党の本部(東京都)は、辺野古で政府と一緒ですが、公明党の沖縄県本部が、「辺野古反対・普天間閉鎖」に加え、「海兵隊の県外撤退」ということを主張しているのです。それを容認している全国政党は唯一、公明党だけです。そういったことを考えてみると、公明党の政策というのは、かなり真ん中なのです。それで、国民全体の政治意識は、大体、どの国も正規分布のど真ん中がいちばんのヤマ。
安倍総理が目を向けているのは党の外側ではなく、党内
高嶋)そこやじろべえをやったら、右に行ってしまう。
佐藤)だから、10%くらいの人の意見のところに、75%くらいの国会議員がいる状況になっているのです。そうすると何が起きるかというと、民意と代表の間の乖離があるので、スキャンダル、暴言、こういったときにものすごく、世論が揺れるのです。「あいつらは何だ」と。
高嶋)そういう特徴を持つのですか。
佐藤)この乖離が生じているとそうなります。それからもう1つは、安倍内閣あるいは安倍総理に対する支持と、自民党の獲得議席から見る支持率との乖離が大きすぎる。となると、こういう形でスキャンダルや暴言で政局が揺れると、党内政局になりやすいのです。すなわち、「安倍降ろし」が始まる。
高嶋)すると、安倍さんはその辺をきちんと読んで、国民や野党だけではなく、党内に向けても、「謙虚」とか、そういう意味合いのことを強調するのですね。
佐藤)むしろ、党内にむけてでしょう。何故なら、今回の選挙でこれだけ大勝利したら、安倍さんの権力基盤は盤石になるはずなのに、そうならず、野田聖子さんや、河野太郎さんの次の総裁選、石橋さんの総裁選……ようするに、「首を取りにいく」ということでしょう。「あなたには次の総理はやらせませんよ」と、こんなことが出てくるのは前代未聞ですよ。
高嶋)なるほど。「謙虚」の意味もなかなか深いですね。
佐藤)そうです。ですから、これは党内を見ていると同時に、権力基盤がそれほど盤石ではないと見ている。それから、安倍政権は意外とポピュリズム政権ですので、世論調査で支持率が下がるとなると、ガタガタしてきます。
高嶋ひでたけのあさラジ!
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