TPPと日EUのEOA~GDP13兆円も増えるというのは本当か?

By -  公開:  更新:

12/22(金)FM93AM1242ニッポン放送『高嶋ひでたけのあさラジ!』今日の聴きどころ!③

政府の試算でGDP2.5%増 10~20年後の姿を想定
7:10~やじうまニュースネットワーク:コメンテーター宮家邦彦(外交評論家・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)

TPP 茂木経済再生相

記者会見を終え、笑顔で退席する茂木経済再生相=2017年12月21日夜、東京・永田町 写真提供:産経新聞社

TPPとEPA 順調なら2019年にも発行 政府はGDP13兆増加の試算

11ヶ国のTPP(環太平洋連携協定)やEU(ヨーロッパ連合)のEPA(経済連携協定)が共に発行すると、実質GDP(国内総生産)が1年でおよそ13兆円増えるという政府の試算が発表された。2つの通商協定は再来年にも発行される見通しで、政府の試算はその効果が十分現れる、発行から10~20年後の姿を想定している。

11ヶ国でのTPP、それからEUでのEPAの2つの通商協定は手続きが順調だと共に再来年の2019年に発行します。政府の試算によりますとこの2つの通商協定で貿易が活発になって商品の価値が下がる、そして個人消費や設備投資が増えるとしています。

経済規模を表すGDPはTPPで年間およそ7兆8,000億円増えて、日欧EPAでおよそ5兆2,000億円増え、合わせると年間およそ13兆円増えると見積もっています。

アメリカの離脱でTPPの効果は4割くらい縮小するとされているのですが、日欧EPAが上乗せされて12ヶ国のTPPを結んだのと近い恩恵になるという風に政府は見込んでいます。

また雇用についてもTPPでおよそ46万人、日欧EPAでおよそ29万2,000人拡大する、合わせて75万2,000人の雇用も生み、安い海外産が入って来ても農林水産物の国内生産への影響は小幅で年間2,600億円ほどの影響だろうという想定をしておりまして、コスト抑制などの支援策も行うので農家の所得と生産量は維持できるとしています。

しかしこの試算の根拠については異論の声も出ています。

この試算は2つの協定の効果が十分表れる発行してから10年後から20年後の姿を想定しているということです。アベノミクスの柱のひとつの「成長戦略」が今一つ成果が乏しいという中で、経済外交で具体的な結果を出したいのではないか、こういう狙いも透けて見えるとも言われています。

こうした中アメリカは依然として日本との2国間の通商交渉に意欲を示しています。

TPP11 ベトナム ダナン 茂木

TPP11閣僚会合の朝食会を終えて会場を後にする茂木敏充経済再生担当相(中央)=2017年11月8日午前、ベトナム・ダナン 写真提供:産経新聞社

政府による試算 効果はあるが根拠については水掛け論

高嶋)何だか詳しく説明してもらうと、2019年に日欧EPAとTPP11を発行で効いてくるのが10年から20年後と、随分先の話ですね。日欧とTPP11だったらアメリカが参加したTPP並みの効果があると新聞では言っているのですけど、宮家さんこれはどうですか?

宮家)あまり意地悪を言うのは良くないのだけど、まず試算はあくまで試算でしょう。それでこれは元々「効果が無い」なんて言えないじゃないですか。そういう意味では10年後でも20年後でも一定の効果があることは間違い無いと僕は思うのです。
なぜかと言うと、日本には資源が無くて貿易立国で食っていくしか無いわけだから、これを自由化してどんどん量を増やすしかないわけですよ。人口も減っているのだし。そういう意味では方向性としては正しいと僕は思う。
ただ具体的に根拠が有るか無いかという議論はもう水掛け論になると思いますよ。

高嶋)しかし「GDP2.5%増」と試算するという、これは現政府とかは喜ぶわけですよね。「やっていることは間違い無い」と。

宮家)効果は必ずありますよ。

TPP 総合対策本部 安倍 茂木

TPP等総合対策本部の会合に臨む安倍晋三首相(左)と茂木敏充経済再生担当相=2017年11月24日午前、首相官邸 写真提供:産経新聞社

日本の現金主義 日本はルールがしっかりしているが変化に乏しい

高嶋)もうひとつ小さい記事なのですが、日本生産性本部が2016年の労働生産性の国際比較というのを発表して、1人の労働者が一定の労働時間でどれだけの物やサービスを生み出すかを算出したところ、日本の生産性は1時間あたり46ドル、約4,700円で、OECD(経済協力開発機構)加盟35ヶ国の中で20位、先進7ヶ国の中では最下位だったと。こういうのはだいたいいつも日本が1番だったのだけど、この頃どのデータを見てもあまり良くないですね。
特に飲食や宿泊などのサービス業の生産性が低く国際順位が上がらない要因になっていると。
この間あるデータでも日本ほどの現金主義は無くて、中国や韓国やシンガポールは現金よりもカードなどが主流になっていて。

宮家)まあ良い意味で日本は非常に組織化されていてルールがしっかりしていて、逆に言うとなかなか変えにくくて、右に行ったり左に行ったりできないわけですよね。
しかも役人をやっていてつくづく思うのだけど、大体労働生産性で役人ほど低いものは無いですよね。国会答弁なんか10問ほど作るのに一晩掛かるわけですよ。そんなのその気になればパパッと書ける物を一晩も掛けるわけですよ。そんなことをやって生産性が上がるわけが無いので、まず国会から生産性を上げてもらわないと冗談じゃないよというのが私の意見ですね。皆やはり丁寧に仕事をするのですよ。その分だけ生産性が下がると。

高嶋)番組宛てにもいろいろとお手紙をいただくのですが、いわゆるスマホとかカード決済の時代になると第三者にいつどこで何を買ったかが報告・記録され、口座の数字を変えてもらって買うことでやっていかなければいけないと。つまり完全に財布を握られると。自由に買うことも売ることもできなくなる。当局にとっては気に食わないものの記録を如何様にも利用できると。そういうことをお手紙で教えてくれる人もいるのですが、なかなか難しいですね。

宮家)やはり日本はプライバシーをちゃんと守り自由を守る国ですから、どうしても仕様が無いのではないですかね。

高嶋ひでたけのあさラジ!
FM93AM1242ニッポン放送 月~金 6:00~8:00

Page top