“3.11”から7年~被災からの孤独死を防ぐ“田舎力”とは?

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3/7(水)FM93AM1242ニッポン放送『高嶋ひでたけのあさラジ!』今日の聴きどころ!①

途方に暮れるお年寄りたちを救え!
6:30~ニュースやじうま総研!ズバリ言わせて!:コメンテーター鈴木哲夫(ジャーナリスト)

被災後「紙とペン」で壁新聞を書き続けた「石巻日日新聞」

東日本大震災から今年で7年になる。手書きの壁新聞で有名になった石巻日日新聞の武内宏之氏に取材したジャーナリストの鈴木哲夫が、今本当に必要な復興について解説する。

高嶋)あれから7年経ちます。また3月11日がやって来ますが、鈴木さんも非常に精力的に被災地にお出掛けになって。被災地で当時有名になった「石巻日日新聞」。印刷所が被災したので壁新聞にしたのですね。

鈴木)輪転機が水でやられてしまったのですよね。

高嶋)だから日々の情報は手書きで被災地に張り出したという。

鈴木)そうなのですよね。その後世界の新聞業界の賞も獲って「ジャーナリズムとは何か」ということを評価されたのでしょうね。「この時代に何ができるか――紙とマジックペンがあるじゃないか。機械で作れないのなら手書きでやろう」という、この決断がやはりすごかったと僕は思うのですよね。同じ世界にいる僕なんかはこういう話を聞くと「すごいな」と思います。

高嶋)当時編集長だった武内宏之さんという方ですが、この人も自分の家が被災したわけでしょう。それでありながらあの日日新聞は絶やさなかった。

鈴木)手書きで避難所にずっと貼って貰って、書いている内容は被害状況だとか安否に関することとか、どこに行けばどんな援助が受けられるとか、まさに被災した避難所の人たちに向けて発した情報ということですよね。

高嶋)もうジャーナリストの鑑というか原点というか。

鈴木)「ペンと紙があれば」という、こんなことを言うと今の若い人にはすぐ笑われますが、やはり“紙とペン”ですよね。この原点を被災した中で貫いたということです。

“目に見えない復興”~心の問題が残る被災地

高嶋)その石巻日日新聞の武内さんにこの間会いに行かれたようですね。

鈴木)定期的に話を訊きに行っています。

高嶋)今はどんなことをおっしゃっていますか?

鈴木)いろんな話があったのですが、ひとつだけ言うと“復興”と言うと目に見えるものと見えないものがあって、見えるものは例えば橋や道路、こういう目にみえる物は復興が進んできたけど、見えない復興というのは心の問題であると。
僕らは時間が経つと傷が癒えていく、風化していくとか忘れていくとかあるじゃないですか。だけど実は時間が経つからこそ心の問題が出て来ることがあるというのですね。最初の頃は必死で「さあどうやって立ち直ろうか」と頑張って気持ちも張っているけれども、時間がこうして5年、6年、7年と経ってくるとふと我に返る。「自分は何をしているのだろう? なぜこうなったんだろう?」と。そういう中で周りを見ると、家族を失って復興住宅に1人で暮らしているなんていう人がいっぱいいる。

高嶋)お年寄りが途方に暮れるという、そんなことを書いていましたよね。

鈴木)こういう人たちが近所のショッピングモールなんかに朝から並んで、入って何をするかというと、朝一番の買い物ではなくて、1日ずっとそこのベンチに座っているらしいのですよね。

高嶋)マンション形式の復興住宅になっていますよね、そこに入っていても一人ぼっちだし。

鈴木)それまでは隣近所で顔が見えていろんなことがあったのが、知らない場所のマンションに住んで、隣近所も誰も知らない。そうすると部屋に1人で居たくなくなるということなのですね。

誰のせいでもなく変わってしまった人生~今被災地に必要なのは“田舎力”

高嶋)今声掛けとかそういうのは無いのですか?

鈴木)一応見回りとかそういうのは地元を含めて行政がいろいろとやっているのですが、それでもやはり足りない。だからそういう人たちの心の問題というのは孤独死に繋がっていく。阪神大震災なんかもそうですよね。

高嶋)なんだか分かる気がする。というのも、若ければ自分が受けた被災は運命で仕方無かった、だけど第2の人生があるぞというような、再び闘志を撒き直して頑張れますよね。
だけどある程度の年寄りになっていたら、ネクストチャンスみたいなものに自分は頑張ろうという歳ではなくなってしまうというのがあります。そこに何か寂しさや虚しさがあって、それから健康もどんどん蝕まれていく、そういう決定的な老い。これは私も歳だけに分かる気がしますね。

鈴木)誰のせいでもないのですよ。地震と津波は全く自分のせいではない。それによって人生が変わってしまった。

高嶋)武内さんは“田舎力”ということを言っているようですが。

鈴木)つまりおせっかいということですね。昔の田舎は隣近所のドアを開けて勝手に入って行って「おじいちゃん」「おばあちゃん」ってやっていた。そういう声掛けをするおせっかいを“田舎力”と呼んでもう一度、地域でやっていくということが大事なのではないかともおっしゃっていました。

高嶋)誰に「よし頑張ろう」と思わせるかというのは、力のいる仕事ですよね。間もなくあの日から丁度7年になります。

高嶋ひでたけのあさラジ!
FM93AM1242ニッポン放送 月~金 6:00~8:00

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