南北会談~金正恩氏の「非核化は先代の遺訓」は信用できるか?
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3/7(水)FM93AM1242ニッポン放送『高嶋ひでたけのあさラジ!』今日の聴きどころ!③
これまでも覆されてきた北朝鮮の「体制の保持と非核化」
7:10~やじうまニュースネットワーク:コメンテーター鈴木哲夫(ジャーナリスト)
文在寅大統領と金正恩委員長が来月末に会談
韓国の文在寅大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長が、来月末に板門店(パンムンジョム)で会談することで南北が合意した。韓国大統領府が発表したもので、北朝鮮は韓国が派遣した特使団に対して、非核化問題と米朝関係正常化の為アメリカと協議する用意があるとし、対話が続いている間は核・ミサイル実験を凍結する意思を表明した。
韓国大統領府によりますと、北朝鮮は韓国が派遣しました特使団に対し「非核化問題とアメリカとの関係正常化の為、アメリカと対話をする用意がある」としまして、対話が続いている間は核・ミサイル実験を凍結する意思を表明したということです。
また韓国大統領府の高官によりますと、金正恩朝鮮労働党委員長は「アメリカと韓国が4月から合同軍事演習を例年と同じ規模で行うことにも理解する」と述べたということなのですね。
4月末で合意しました南北首脳会談は、軍事境界線に位置する板門店の韓国側の施設で行うということで、韓国側での南北首脳会談は初めてということになります。南北は首脳同士でホットラインも作って、首脳会談の前に電話会談することでも合意しました。
さらに北朝鮮は「朝鮮半島非核化の意思を明確にして、北朝鮮に対する軍事的脅威が解消され体制が保障されるのであれば、核を保有する理由は無い」と、こういう表明もしたということです。核兵器や通常兵器で韓国を攻撃しないことも確約し、金正恩氏は「非核化は先代の遺訓だ」とも語ったということなのですね。
韓国特使団トップの鄭義溶(チョン・ウィヨン)大統領府国家安保室長らは数日中にアメリカを訪問して、北朝鮮との対話に応じるよう促す計画です。
また日本には徐薫(ソフン)国家情報院長が訪れる予定だということです。
一方トランプ大統領はTwitterに「北朝鮮との対話で前進があった可能性がある」とする一方で「ぬか喜びかもしれない」とつぶやいています。またトランプ大統領はホワイトハウスでの共同記者会見などで「北朝鮮は対話に真剣だ」と評価し「中国など各国が強力な制裁を加えた結果だ」という認識を示したということです。
ペンス副大統領は声明を出しまして「北朝鮮の核開発を終わらせる為、アメリカと同盟国は最大限の圧力を加え続ける」と表明したということです。
日本の対応ですが、安倍総理大臣は昨夜「当面は圧力を高めつつ、各国と連携して状況を見極める」という方針をアメリカ訪問中の河井克行自民党総裁外交特別補佐に伝えたということです。
最大の譲歩をしてきた北朝鮮~非核化は実現するのか?
高嶋)驚きましたよね。どう感じましたか?
鈴木)まあここまで進むかと。オリンピックの流れで行くと、やるかやらないかの手前くらいでずっと思わせていくのかなと思ったら、本当に具体的に進み始めていると。まだこれは分からないけども、そういう意味でスピードの速さには正直驚きましたね。
高嶋)血の凍るようなことをいろいろやってきたあの男の笑顔と、それから「体制を保障してくれるなら核は要らない、アメリカとの対話の用意があるんだ」というような。
多分韓国から出て行った国家安保室長とか情報院長なんていうのは超大物に会うわけですから、労働会館なんかに連れて行かれたら、もう心臓が高鳴って大変だったと思いますよ。だけどこの4時間12分というものがもう望外のお土産で「やったー!」みたいなもので、果たしてそれで喜んで良いものかどうかというところなのですが。
専門の国際政治学者の高橋和夫さんにお聞きします。高橋先生、先生はこれをどう受け取られましたか?高橋)北朝鮮としては言葉の面ではだいぶ降りて来たなと。核のことを何も言わなかったら韓国側は手ぶらで帰るということになって恥をかいたわけですが、とりあえずこういうことを言ってくれて良かったなとは思っているのでしょうけど、ただ体制の保持と非核化という道は何度もあって、結局ここまで来てしまったので、やはり「本当かな?」と思いますよね。
高嶋)普通に考えれば煮え湯を何回飲まされたのかというか、あの人たちは今まで1度もちゃんと守ったことが無いでしょう。
高橋)そうなのですね。だから「体制を保障するよ」というので納得するくらいだったら核兵器なんて開発していないわけですから、やはり向こうも信用していないのですよね。
でもせっかく雰囲気も出て来たし、本当にやるかどうかはもう1回話を訊くくらい良いだろうというのがアメリカの見方で。でも制裁はとりあえず実際のところが動かない限り続くよという、トランプ政権としては非常にまともに出て来たなという気はしますね。高嶋)これほど全部OKを出してしまった北朝鮮側の現状というか、それをどういう風に理解されますか?
高橋)やはり相当経済制裁が堪えているのだと思うのですよね。これまで以上に中東などいろんなところで圧力を掛けてきて、全世界的にオールコートでプッシュしているわけで、朝鮮側も「これはまずいな」と思って来たのだと思うのですね。
ただ実際にどういう非核化のプログラムをやるのかというのを示さない限りは何の意味も無いですけどね。メニューだけ見せられても食事は出て来ていないということで、ぬか喜びになるという可能性は高いと思いますね。高嶋)いつも口約束をしては取るものだけ取って責任は果たさないという、そういう国ですからね。
だけどアメリカのトランプ大統領なんかは、ある雑誌を読んでいると、自分は交渉能力というのは天才的だというようなことを言って、大統領はいつも北に対しても「俺が出て行けば話は着く」みたいなことを時々言いましたよね。その辺はどうですか? アメリカはどうすると思います?高橋)まああの人の交渉能力を一番高く評価しているのは本人自身なので、他の人がどう見ているかはかなり問題があるのですが。ただトランプさんが柔らかく出て来て、ペンス副大統領は日本も睨みつつ制裁も続けるぞというので、悪役と善役をちゃんと用意して、それなりにアメリカ側も対応をしているなという印象は受けますね。
高嶋)結論として、大きく進む予感がありますか? それとも……どちらでしょう?
高橋)私としては、またガッカリという予感をしていますね。
北朝鮮問題で日本が取り残されている?
高嶋)鈴木さん、これ文在寅大統領は天井に向かって高笑いが止まらないのではないですか?
鈴木)今高橋先生もおっしゃっていたけども、私も懐疑的なのですよね。オオカミ少年と同じで、今はやはり経済制裁の苦しさ逃れの為に少し活路を見出そうかという程度のことであって、核・ミサイルを放棄したらまた何にもならないのだから、つまり信用できないということで、私も懐疑的なのです。
だけどもうひとつの視点で大事だと私が思うのは、日本だけがどんどん取り残されている、もっと言うとすごく真面目に外交をやっているが故に騙されてしまう可能性だってあるのではないかと。つまり今回もそうなのだけど、結局各国で連携してしっかり圧力を加えて行こうという中で、北朝鮮が出て来たことによって、韓国の文大統領もなかなかしたたかで、文大統領が仲介して今度は米朝対談なんてやっているけど、日本って蚊帳の外に行ってしまうのですよね。
これはやはり非常によろしくないと僕は思うので、もっとしたたかに、じゃあ日本は韓国やアメリカともっと情報交換して連携を強める主導的な役割をしっかり果たすとか、一方で北朝鮮と例えば独自に、これは安倍さんの周辺の人も言っているのだけども、パイプを作って日本は日本でやるというようなそういうしたたかさみたいなものも用意しておいても良いのではないかと。結果的にこれは上手く行くとは思いませんけどね。高嶋)あの金正恩さんの、今まで見たことも無いような大サービスのあの笑顔。そして労働党の本部の会館で、人が入ったことの無いようなすごい部屋で、この間のオリンピックのときに来た妹さんと、それから奥さんまで出て来て、それから閉会式に来た副委員長と、ああいうお馴染みの顔ぶれを揃えて文大統領からの親書も見ているという。何だかお膳立てというか進め方というか、本当にできすぎているような感じなのですよね。
それでどうなっていくのかということですが、さっきも高橋先生が言っていましたけど、アメリカ大統領はどうですか? 「自分は一番交渉能力が高い」と自分自身はいつも言っているということですが。鈴木)ただこれも気を付けなければいけないのは、確かに日米関係は非常に密接ですけども、トランプ大統領も内政問題を抱えて、あの人だって昨日行ったことを今日平気でひっくり返すような流れがありますよね。そうすると結局日本と一緒にやっていこうとなっても「いやいや、アメリカは申し訳無いが北朝鮮と合体をするよ」なんて言われる可能性もある。
だからアメリカに対してもやはり安倍さんはしたたかに懐疑的に見る一面もちゃんと持っておかないと、そんな風に私は思っていますけどね。高嶋)何だか別の人みたいですもんね。米韓の演習も良いよと言っているのでしょう? 「あんたきっと違うだろう」ということですよね。
高嶋ひでたけのあさラジ!
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