写真家が撮影するとき、被写体の何を撮るのか
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黒木瞳がパーソナリティーを務める「あさナビ」に写真家の安珠が出演。撮影をするときの対象物に対しての思いなどについて語った。
黒木)今週のゲストは、写真家の安珠さんです。今日7月11日~8月28日まで、港区のキヤノンギャラリーSで『ビューティフル トゥモロウ ~少年少女の世界~』が開かれます。
安珠)古い作品は90年代に撮った5作品があります。少年と少女のいろいろな物語。絵本とか、いろいろ作ったものをまとめて、さらにいま自分が少年少女の世界に向き合うと、また違ったものの見方になる。一応成長したので(笑)。そして、新しいものを加えて出します。私が幼少の頃に生死をさまよい、「命は永遠ではない」と思って、奇跡的に助かって生きられることになったとき、「どうして私は生きているんだろう?」とそういう不可解な気持ちを抱えながら、少女は大人になっていった。モデルにスカウトされて、写真と出会い、撮るようになったとき。写真機は本当に心の鏡みたいで。たとえば私が黒木さんを写すとき、黒木さんを撮っているけれど、そのなかに自分が見えてくると思う。不思議だけど、たとえば黒木さんは撮影されていて、撮る人で全然自分が違うじゃないですか。それは、きっとみなさんで見ているものが違うからだと思います。自分が生きて来たなかでの色合いや表情や、感じるもののなかで、「ここの黒木さん、すばらしい!」と思うものを絶対に残したいというか撮りたいと思うのですよ。
黒木)自分の感じるものが鏡のように、そこにいるわけですね?
安珠)急に思いついた。ベラスケスみたい!
黒木)そうかもしれない。
安珠)王家の、王族たちの肖像画をいっぱい描いていますが、やはり自分が投影しているように、画家が見えてくるのですよ。それに近いです。私自身が見たものを撮るわけですから、他の人が見たものは違うと思います。そのなかで、「なぜ惹かれるんだろう」と思ったときに、心のなかのピントを合わせておくわけですよ。「この人の、この角度の顔が好き」というだけではなくて、「この人のこのストイックさを極めている感じが好き」とか。
黒木)オーラですね。
安珠)そうですね。いろいろなものが、ピントが合ってくる。心のピントを合わせていく。自分のなかの、「少女のまま消えるはずだった自分」に対し「なぜ生きているんだろう」というものにピントを合わせていった時代が、90年代の少年少女の作品。
いまは、なぜも何も、死ぬまで分からないかもしれない。だけど、いまを生き抜くことが大事であるし、美しい世界に気付くことだと思います。タイトルは『ビューティフル トゥモロウ』で、「美しい明日」ですが、明日のために生きるのではない。明日命があるかどうか、分からないから。たとえば、いま窓を見ると、夏の暑い日差しで、葉が揺らめいていてきれいだったりする。でも、そんな些細なことでも美しいこの世の世界に気が付かない自分がいたりする。だから、美しい世界に気づいて欲しい思いがあるので、こういうタイトルになっているのです。
安珠/写真家
東京生まれ。学生のときにデザイナー・ジバンシーが来日し、専属モデルとしてスカウトされ渡仏。パリを拠点に世界各国の「ヴォーグ」や「エル」、パリコレに出演し、国際的なモデルとして活躍。
帰国後、1990年に写真家に転身し『サーカスの少年』を出版。その後、『少女の行方』『星をめぐる少年』『小さな太陽』など、文章を織り交ぜた物語のある独自の写真世界を表現。
また写真家として活躍する中、広告、雑誌連載、文筆、講演、審査やTV出演、ビジュアルプランから映像監督まで幅広く活躍。
2014年、東北を中心に「こどもたちの夢」をテーマにした写真集『Dream Linking☆つなぐ夢、千年忘れない』を出版。全国とパリで写真展を開催。
2017年発表の京都ライカギャラリーで、平安京に焦点を当てた『Invisible Kyoto-目に見えない平安京-』と並行して、中国の世界自然遺産である張家界の作品『仙人の千年、蜻蛉の一時』も長期に渡り撮影。オリジナルの写真世界を作り出す写真家として活躍している。
7月11日からは、安珠写真展『ビューティフル トゥモロウ~少年少女の世界』を開催。
『ビューティフル トゥモロウ~少年少女の世界』
2018年7月11日~8月28日まで。入場無料。
場所:キャノンギャラリーS(東京都港区)
これまで取り組んできた「少年少女の写真世界」をテーマにした作品展。
デビュー以来、写真展でオリジナル曲を提供してきた細野晴臣による楽曲が流れ、安珠さんの世界観をより一層演出。
ENEOSプレゼンツ あさナビ
FM93AM1242 ニッポン放送 月-金 6:43-6:49
番組情報
毎朝、さまざまなジャンルのプロフェッショナルをお迎えして、朝の活力になるお話をうかがっていく「あさナビ」。ナビゲーター:黒木瞳