番組スタッフが取材した「聴いて思わずグッとくるGOODな話」を毎週お届けしている【10時のグッとストーリー】
きょうは、考古学を身近に感じてもらおうとユニークな展示を続けている博物館で、様々な工夫を重ねてきた学芸員さんのグッとストーリーです。
兵庫県加古郡播磨町(かこぐん・はりまちょう)にある、国の史跡・大中(おおなか)遺跡。弥生時代の竪穴式住居跡が多数発見されたこの遺跡からは、土器などもたくさん出土しています。
2007年、その大中遺跡のすぐ隣にオープンしたのが、兵庫県立・考古学博物館。略して「考古博」。ここは日本では数少ない考古学専門の博物館で、出土品をただ並べて展示するのではなく、実寸大のジオラマなどによって古代の暮らしを分かりやすく再現。また発掘や土器作り、火起こしなどを実際に体験できるコーナーもあったりと、「考古学を五感で体感できるユニークな博物館」として地元の人たちに親しまれています。
「近くの小学生が学校帰りによく遊びに寄ってくれます。夏休みの自由研究、手伝うの大歓迎ですわ(笑)」と語るのは、考古博の学芸員さんで課長補佐 兼 企画広報課長を務める 高瀬一嘉さん・56歳。
考古博の立ち上げからスタッフを務めている高瀬さんは、もともと遺跡の発掘調査を専門とする兵庫県の職員でした。
「大学のとき、遺跡発掘に誘われたのがキッカケで、考古学にはまりました」という高瀬さん。遺跡はタイムカプセルで、出土品は古代からのメッセージと考えると、最初にそのメッセージを受け取れるのは発掘作業に関わる調査員なのです。
「考古博を立ち上げることになったとき、そういう感動をなんとか一般の方にも伝えようと、みんなで相談した結果、こういうスタイルの博物館になったんです」
考古博の名物の一つ、およそ2万年前のナウマンゾウに立ち向かう古代人の姿を再現した実寸大のジオラマも、高瀬さんが製作に関わりました。白い牙をライトに照らされ、鼻を高々と上げて吠えるナウマンゾウは迫力満点。古代人たちは木のヤリを持って構えていますが、中にはおびえて隠れている人形もいて、つい笑ってしまいます。
「私の専門は弥生時代なんで、ナウマンゾウは、そもそも専門外なんですけどね」という高瀬さん。学術的にまだよく分かっていない部分も多く、そこは想像で補うしかありませんが、「こんなんホントにやってええんかな?」という葛藤が常にあったといいます。
しかし、参考のため視察に行った恐竜関連の博物館スタッフがこう言ってくれました。「そんなん言うたら恐竜なんかぜんぶ想像の世界やで(笑)。それより、お客さんがパッと見て分かる展示を考えることの方が大事なんちゃうか?」
この言葉に背中を押された高瀬さんは、同僚のスタッフと共にリアルなジオラマ作りに取り組み、ついに完成。想像を働かせた部分は「現在の研究では、ここまでしか分かっていません」と製作秘話を正直に書いているところも、考古博のユニークなところです。分からなかったところが最新の研究で分かった場合は、臨機応変に展示の内容を変えることも。
また、自分がかつて味わった「発掘の面白さ」を体験してもらおうと「発掘体験コーナー」も設置。潮干狩りのようにスタッフがあらかじめ土器のかけらの模型を土の中に埋めておき、子どもたちはそれを掘り出して、解説を見ながら土器を復元していきます。中には毎日のように来る子もいて、オープンから11年経った今は大学に進み、考古学を専攻するようになった子もいます。
高瀬さんは言います。「いま考古博に毎日通ってくれている子たちが親になったら、たぶん自分の子どもをここに連れて来ると思うんですよ。そうやって考古学の面白さを伝えていってもらえたら、こんなに嬉しいことはないですね」
八木亜希子 LOVE&MELODY
FM93AM1242ニッポン放送 土曜 8:00-10:50
番組情報
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