番組スタッフが取材した「聴いて思わずグッとくるGOODな話」を毎週お届けしている【10時のグッとストーリー】
きょうは、大田区の町工場の技術力をPRするため、2020年東京パラリンピックで使われる「競技用車いす」の開発に参加した二代目社長の、グッとストーリーです。
高い技術を誇る町工場が軒を連ねる、東京・大田区の工業地帯・城南島。ここに、今年創業45年目を迎えた町工場があります。金属加工専門の「株式会社エース」。社員数12名のこの会社は、去年、大田区が立ち上げたプロジェクトに参加しています。大田区内の町工場が集まって、2年後の東京パラリンピックで、車いすバスケットボール日本代表が使用する「競技用車いす」を開発するというもの。
「世界と戦う日本代表の力になって、大田区の町工場の技術もアピールできたら…と思って、参加を決めました」と語るのは、株式会社エースの二代目社長・西村修(にしむら・おさむ)さん・46歳 です。
このプロジェクトには、大田区の町工場10社が参加。車いす本体は、岐阜県の車いすメーカー・松永製作所が製造し、町工場10社は部品やフレームなどの設計・製造を担当します。
「我々の役目は、車いすの軽量化と、操作性をアップさせることです」という西村さん。選手たちが自由自在にコートを走り回ることができれば、得点力も上がり、まさに勝敗に直結します。
「うちは、車いすを回転させるローラーを支える、強化アルミ製の部品を作ったんですが、どんな形がベストか、どう削るか、加工担当者と何度も議論しました」という西村さん。その部品に通すシャフトを作るメーカー、ウレタン樹脂のローラーを作る会社……町工場10社が、それぞれの得意分野で力を合わせて完成した「大田区モデル」の競技用車いすは3月31日に披露され、選手からは「すごく動きやすくなった!」「自分たちのために、いろいろ取り組んでくれて、ありがとうございます!」という嬉しい声をもらいました。
町工場は普段、自分たちが作った部品がいったい何に使われるのか、守秘義務があるため、発注者に教えてもらえないことも多いそうです。
「でもこのプロジェクトは、車いすという完成形が見えている上に、試合で結果も出る。正直、儲けはほとんどありませんが、すごくやり甲斐がありますね」という西村さん。社員のモチベーション向上にもつながっているそうです。
お父さんが創業した株式会社エースを、11年前に継いだ西村さん。社長に就任して2年目に、リーマンショックが襲い発注が激減。一時、倒産の危機に陥りました。そのとき、あちこちの町工場を片っ端から訪ね歩いた西村さん。「営業に行ったところで、仕事はないんですけど、何軒も廻っているうちに、どこの町工場がどんな技術を持っていて、何に強いかを把握するようになったんです。それがうちの強みなんだ、と気がつきました」
それから「ここに使う部品は、あの会社に頼むといいですよ」という仕事のあっせんも積極的に手掛けるようになった西村さん。自分のところに来た仕事を、経営の苦しい会社に回したことも…。「この世界は、持ちつ持たれつですから。うちが忙しくて手が回らないときに、手伝ってもらうこともありますしね」。
そんな仲間意識から、西村さんがまとめ役になって始めたのが「下町ボブスレー」プロジェクトです。大田区の町工場が共同でボブスレーのそりを製作。冬季オリンピックで使ってもらい、その技術力を世界にPRしようというものです。そりを完成させるために、西村さんは100社以上の町工場を訪問。結局、本番での採用は見送られましたが「オリンピックのことより、これをきっかけに、ライバル関係だったよその町工場と、横のつながりができたのは大きかったですね。まったくのボランティアでしたが、やってよかったです」という西村さん。今回、競技用車いすの製作に関わることになったのも、大田区にその実績を買われてのことでした。西村さんは言います。
「車いすの製作に関わるまで、車いすバスケットを観たことがなかったんですが、一回観たら面白くてハマりました。われわれ“チーム大田区”が作った車いすで、代表が最高のパフォーマンスを発揮して、メダルを獲ってくれたら最高ですね!」
八木亜希子 LOVE&MELODY
FM93AM1242ニッポン放送 土曜 8:00-10:50
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