番組スタッフが取材した「聴いて思わずグッとくるGOODな話」を毎週お届けしている【10時のグッとストーリー】
きょうは、アフリカの絵本を集めて、全国各地で絵本展や読み聞かせを行い、自ら翻訳も手掛けて紹介している女性の、グッとストーリーです。
「アヤンダは、ちいさな ちいさな おんなのこです。おとうさんと おかあさんおばあちゃんと おとうとに かこまれ いつも にこにこ、しあわせそうでした。アヤンダは、おとうさんが だいすきでした。」
「あるひ、せんそうが はじまりました。なぜ、なんのために たたかうのかだれにも わからない せんそうでした……」
こんな書き出しで始まるコートジボワールの女性作家、ヴェロニク・タジョさんの絵本「アヤンダ」。アフリカの架空の国で生まれた少女・アヤンダは、大好きなお父さんを戦争で亡くしてしまいます。
「戦争をする大人にはなりたくない」と小さいままでいることに決めたアヤンダ。しかしお母さんが病気で倒れ、おばあちゃんを亡くしたアヤンダは、弟の面倒をみるため、ちょっとずつ大きくなり、働き始めます。アヤンダはやがて、村でも評判の美しい娘に成長しました。そんなある日、強盗団が村を襲撃。アヤンダは村を救うために、ある決心をするのでした……。
この絵本『アヤンダ』を、4月に初めて日本語に翻訳して出版。「絵本を通じて、アフリカの今にもっと目を向けてほしいんです」と語るのが、富山県在住の、村田はるせさん。
村田さんはかつて東京で保育士をしていましたが、日本語が通じない外国人の子どもたちが増え、また日本人の子どもでも、親の事情から十分な育児を受けられない場合があるのを見て、自分の無力さを感じずにはいられませんでした。
「もっと保育士としての幅を拡げたい」という思いから、村田さんは青年海外協力隊に応募。1995年から2年間、サハラ砂漠の南側にあるニジェールに保育士として赴任しました。ニジェールは国土の砂漠化が進み、干ばつと貧困に苦しむ西アフリカの国ですが、天真爛漫で元気な子どもたちの姿を見て、心洗われたそうです。
そんなとき、隊員たちが集まる図書室で偶然セネガルの小説に出逢い、アフリカの価値観・歴史観に初めて触れた村田さん。帰国後、協力隊で知り合ったご主人と結婚し、富山に移住しましたが、「もっとアフリカのことを勉強したい!」と富山大学に社会人入学、アフリカ文学を学びました。村田さんはそこで、『アヤンダ』の作者、ヴェロニク・タジョさんの作品に出逢ったのです。
タジョさんの祖国・コートジボワールは、かつてフランスの植民地でした。普段の生活では現地の言葉が使われていますが、新聞や本、学校の授業では、今なおフランス語が使われており、子どもたちが読む絵本も、フランスから輸入されたものばかり。そこにはアフリカの人たちも景色も、一切出てきません。そんな現状に心を痛めたタジョさんは、子どもたちに読んでもらおうと、アフリカの伝統に根ざした物語集や絵本を書き出版。それが周辺諸国にも拡がっていきました。
「アフリカの文化や伝統に、もっと誇りを持ってほしい」というタジョさんの活動に感銘を受けた村田さんは、タジョさんの本をはじめ、西アフリカの絵本を個人的に収集。その数は300冊を越え、全国各地で、解説をつけた絵本展を開催したり、読み聞かせを行うなどの活動をしています。
村田さんは、タジョさんにも直接メールを送り交流。「あなたの作品を、ぜひ日本語に訳して紹介したい」という願いが、この春ついに叶い、日本語版『アヤンダ』が出版されました。戦争によって家族を亡くし、途方に暮れている子どもたちが、世界にはまだたくさんいます。そんな子どもたちに希望を持って生きてもらうため、タジョさんが書いた絵本『アヤンダ』。村田さんは、本のあとがきで、タジョさんにインタビューしたときのメッセージを伝えています。
「大切な誰かを亡くしたとき、その人の心が癒やされ、再び社会のなかで生きられるようになるには、いくつかの段階を経る必要があると,この絵本で描きたかったのです。そして、それを支えるのは愛情なのです」
【10時のグッとストーリー】
八木亜希子 LOVE&MELODY 2018年6月9日(土) より
番組情報
あなたのリクエスト曲にお応えする2時間20分の生放送!
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