番組スタッフが取材した「聴いて思わずグッとくるGOODな話」を毎週お届けしている【10時のグッとストーリー】
きょうは、宝塚歌劇団を退団後、過疎と高齢化に悩むふるさとの村に帰り、実家のダリア農家を継いだ元タカラジェンヌの、グッとストーリーです。
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「ダリアの里」として知られる上佐曽利
兵庫県宝塚市の最北部にある西谷地区・上佐曽利(かみさそり)。ここは昭和初期から「ダリアの里」として知られる農村地区で、球根の出荷数は、いち生産地としては日本一を誇ります。この土地で生まれ、宝塚歌劇団で活躍した元タカラジェンヌが、中村梓さん。
「小さい頃の私は、田畑を自由に駆け回るおてんばな女の子で、園芸組合の作業場に行っては、ダリア農家のおっちゃん、おばちゃんたちに可愛がってもらっていたんです」
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ダリアの里で育ちタカラジェンヌとしても活躍した中村梓さん
そんな梓さんですが、お母さんが宝塚歌劇団のファンになり、いっしょに劇場へ行くようになったのをきっかけに、中学3年生からレッスンに通い始め、2002年、みごと宝塚音楽学校に合格。「うちの村から、タカラジェンヌが生まれたぞ!」と村じゅうの人が大喜びしてくれました。2年後、雪組の男役「梓晴輝(あずさ・はるき)」としてデビューすると、村のおっちゃん・おばちゃんたちも、梓さんの晴れ姿を見に、劇場まで足を運んでくれたそうです。
「でもあの頃は、日々の舞台のことで頭がいっぱいで、いつの間にか私は、村のみんなへの恩や感謝の気持ちを忘れてしまっていたんです……」
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宝塚・雪組の男役「梓晴輝」時代の中村さん
梓さんは2010年に退団。いつかは実家のダリア農家を継ぐつもりではいましたが、退団後はすぐに実家へ帰らず、上京して、福祉関係の仕事に就きました。子供の頃は、おじいちゃん・おばあちゃんっ子だった梓さん。
「恩返しのために、私が、家族を含むみんなを看てあげたいと思いました。まず、お年寄りに恩返しをするべきだなと思って、介護福祉士の資格をとって、介護の現場で仕事をしていました」
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ダリアと一緒に 和服もお似合いです
その職場でご主人と出逢い、結婚。上京から3年後、結婚をきっかけに、ご主人とともに、ふるさとの上佐曽利に帰ったところ、梓さんは、あまりの村の変わりようにガク然としました。いつもにぎわっていた作業場はガランとして、数人で切り盛りする状態。そして、子供の声もすっかり消えていたのです。
「昔は、バスで通学する子供たちでいっぱいだったのに、今は数人しか乗っていないんです…」
若い人たちは村を出て行き、過疎と高齢化が驚くほどのスピードで進む現状を、初めて知った梓さん。
「『ああ、私はいつまで思い出にひたっていたんだろう』とショックを受けました。もう一度、村を元気にしたい。自分にできることは何があるだろうって、必死で考えました」
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ふるさとの上佐曽利にて
梓さんは家業を手伝うかたわら、ダリアについて徹底的に勉強。そこで目を付けたのが、出荷の段階で捨てられてしまう「廃球(はいきゅう)」と呼ばれる球根でした。
「あまり知られていないんですが、ダリアの球根には優れた栄養価があって、食用にもなるんです。この廃球から、なにか商品ができないかと考えたんです」
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ダリアの廃球がこちら
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中村さんの手によってダリアから生まれたダリアジェンヌ
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パッケージも華やかで素敵です!
試行錯誤の末、村の人たちの協力も得て完成させたのが、ダリアの球根を配合した、無添加の化粧品「ダリアジェンヌ」です。家族みんなで使えて、ふるさとの香りがする化粧品……それが「ダリアジェンヌ」のコンセプト。「タカラジェンヌが考えた、ダリアで作った化粧品」によって、宝塚には「ダリアの里」があることをぜひ知ってもらいたい。それが、梓さんの何よりの願いです。
感激したのは、関西の百貨店で販売しているときに、かつて一緒に舞台に立った宝塚歌劇団のOGが、「梓ちゃん、私にも手伝わせて!」と、かわるがわる応援に来てくれたことです。
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これからも上佐曽利の方々や宝塚歌劇団のOGの方々とともにダリアのように華やかな活躍を続けてください!
「タカラジェンヌの絆の強さを、改めて感じました。これからも、宝塚にいた私だからできる『村への恩返し』を続けていきたいですね」
八木亜希子 LOVE&MELODY
FM93AM1242ニッポン放送 土曜 8:00-10:50