雅楽師・東儀秀樹が、黒木瞳がパーソナリティの番組「あさナビ」(ニッポン放送)に出演。日本古来の伝統音楽である雅楽について、新アルバム『ヒチリキ・シネマ』の紹介とともに語った。
黒木)今週のゲストは、雅楽師の東儀秀樹さんです。今日も8月1日にリリースされました、新しいアルバムに収録されている曲を聴きながらお送りしたいと思います。今日の曲は何でしょうか?
東儀)ABBAというバンドで大ヒットした「ダンシング・クイーン」です。最初聴いているとわかりにくいかもしれませんが、だんだんわかってきますよ。
黒木)これも、篳篥(ひちりき)という楽器ですか?
東儀)篳篥とギター、ベース……。やはり全部自分で弾いています。このメロディーを篳篥が活きるように伸ばして、アコースティックギターを入れて爽やかなアレンジにできないかなと思ったのがこの結果なのです。
黒木)雅楽と向き合うきっかけを伺いましたが、先祖の方々の重みが肩にのしかかるということはないですか?
東儀)圧迫感よりも、先祖の人たちは僕が自由に音楽をやっているのを面白いことをやっているな、と笑ってくれているのではないかという気持ちはあります。雅楽というと儀式や皇室などの重いイメージがあるかもしれませんが、それ以前に自由な音楽である部分を僕は楽しませてもらっているので、これをきっかけにして日本の伝統文化に目を向けてくれる人が増えれば、先祖の人たちも喜んでいるのではないかと解釈しています。
黒木)こういう風に自由にやっていらっしゃるのは、初めてなのですか? いままでの東儀さんのお父様やおじい様は?
東儀)いなかったですね。いたかもしれませんが、世の中には出てきていなかった。だから僕が洋楽とコラボレーションでやったというときに「雅楽なんて楽器を使っても受けるわけがないだろう」という意見が大半だったのと、「神社仏閣の厳格なもので、そんなことをやっていいのか」という心配と、そっちの空気が多かったですね。
僕がただ楽しんでいることが、新しい風になったと言われますね。だからそこに「頑張った」という意識はないのですよ。この楽器で「こんなことをしたら楽しいよね、あれも楽しいよね」ということをやっているだけですね。気がついたら人も楽しんでくれたというのは、やりがいを感じています。
黒木)日本にこんなに素敵な楽器があるのだということを忘れていますよね。
東儀)どの日本の文化よりも古いところにあるのに、とてもグローバルな感覚があって、それなのに日本人に浸透していないのはとても勿体ないと思います。
足元にこんなに面白いものがあったんだというのを聴きやすい形で音楽を作ると、それをきっかけに「これは何ていう楽器? 篳篥って何? 雅楽ってなんだっけ?」と言って知ってもらえるようになったらうれしいですね。
黒木)こうやってお話をしていると、日本には守らなければならない伝統があるのだと改めて思います。みんなが知っている名曲を雅楽でアレンジされると聴きやすいですし。
東儀)入口になりますよね。知っている曲だと親しみやすくて効果的だと思います。
東儀秀樹/雅楽師1959年・東京生まれ。奈良時代から続く楽家(がくけ)の家系。
父親の仕事の関係で幼少期を海外で過ごし、ロック・クラッシック・ジャズ等あらゆるジャンルの音楽を吸収。高校卒業後に「宮内庁楽部」に入る。
篳篥(ひちりき)を中心に、琵琶、太鼓類、歌、舞、チェロなどを担当。宮中儀式や皇居において行われる雅楽演奏会などに出演するほか、海外公演にも参加。またピアノやシンセサイザーとともに雅楽の持ち味を生かした独自の音楽も創作。
1996年、デビューアルバム『東儀秀樹』をリリース。以後、次々とアルバムをリリース。日本レコード大賞企画賞やゴールドディスク大賞など数々の賞を受賞。舞台・映画・CMなど様々な音楽を担当して不動の地位を確立。
またNHK大河ドラマ「篤姫」で孝明天皇役を務めるなど俳優としても活躍。絵の才能を発揮し、絵本の挿絵を担当するなど幅広い活動を続けている。
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