ニッポン放送の「飯田浩司のOK! Cozy up!」(9月28日放送)に外交評論家・キャノングローバル戦略研究所研究主幹の宮家邦彦が出演。日米物品貿易協定(TAG)について解説した。
日米物品貿易協定(TAG)
安倍総理大臣)日米間の物品貿易を促進する為の協定、TAG交渉を開始することで合意しました。
日本時間の昨日27日未明に行われた、安倍総理大臣とアメリカのトランプ大統領による日米首脳会談で、両首脳は2国間による新たな貿易協議、TAGの締結へ向けた交渉を始めることで合意した。日米物品貿易協定とも呼ばれているTAGだが、果たしてどういうものなのか。
飯田)TAG=Trade Agreement on Goods(トレード・アグリーメント・オン・グッズ)。
宮家)グッズというのは物ですよね。WTOの世界では、貿易というのは2種類あって、「物」、農産物もそうですが、手に持って形のあるもの。それから「サービス」があります。「物の貿易」と「サービスの貿易」があって、別々に「GATT」と「GATS」と協定ができていました。今回はTAG、すなわちオン・グッズですから、物品の方の協定を始めるのだと言っているわけです。これはいろいろ混乱があるのでご説明をします。まずFree Trade Agreement(フリー・トレード・アグリーメント)、FTAではないという議論がありますよね。これはイエス&ノーなのですよ。
飯田)イエス&ノー?
宮家)なぜかと言うと、当初日本政府がFTAはアメリカでやりませんと言った理由は、「そもそもTPPをやったじゃないか」と。12カ国でやったではないか、アメリカも入っていたではないか。それが「政権が変わったら突然出る? ふざけるな」と。そしたら向こうがFTAをやると言うから、「何言うてんねん」と。
飯田)「アホか」(笑)。
宮家)だから、トランプさんが言うようなFTAなどやれるか、という意味で「FTAはやらない」と言ったのですよ。
飯田)FTAはアメリカが言っているものという、イメージが付いてしまったと。
TAGとFTAの違いは概念上の違い
宮家)政治的には、「TPPではないもの」がFTAなのです。けれど法的な意味では、WTO協定上のFTAというものもある。どういうことかと言うと、WTOというのは加盟国が100以上もありますが、それがルールを決めます。そして貿易を、ある国に対して…例えば飯田さんに「これをあげますよ」と。関税はこれだけ下げますよ、だからあなたには下げませんよ、ということになった。
飯田)新行さんにはと。
宮家) 「新行さんはダメよ」と言うわけにはいかない。
飯田)そうすると僕と新行さんの間で不公平が生じるから。
宮家)そう。だから内外無差別で貿易上の利点・利益というものは均てんする、すなわち全ての国に与えなくてはいけない、これが原則なのです。
飯田)飯田に下げたら新行も下げないといけない。
宮家)みんな下げなければいけない。だけど、やれる国とやれない国があるわけですよ。嫌なやつもいるしね。
飯田)やりたくないやつも。
宮家)やりたくないやつもいます。だからWTO協定の全体の枠組みを守るためには、どうしても例外を作らなくてはならない。例外を作って、FTAとEPA(経済連携協定)、個別にやったものでも趣旨に合うものであれば、それはWTO協定上の例外として認めますよ、国際法の枠組みに1つのルールとして入れますよと。だから日米でFTA、TAGでも良いけれど出来たのならば、WTO協定上それが効果を持つ為には、FTAになるのですよ。
飯田)「FTAです」と言ってWTOに持って行かないと効果が出ない?
宮家)例えば「ラクトアイスとアイスクリーム。これどっちなんですか」と。「冷たくて白いものはみんなラクトアイスです」「いや違いますよ、これはアイスクリームですよ」…どちらでも良いの(笑)。
飯田)僕らはアイスだと思えばアイス。
宮家)だけどWTOの協定上、そう言わないと法的な意味が無いのだけれど、政治的には「トランプさんの言ったFTAとは違う」のだと、使い分けているのです。だから、これはアイスクリームですか? ラクトアイスですか? いやあ…。
飯田)どっちにしろアイスだろう!(笑)
宮家)そう! 大した話ではないと言ったら怒られますが、概念上の違いですから。あまり気を使うことは無いと思っていますが、若干問題になるかもしれません。
飯田浩司のOK! Cozy up!
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