鮮やかに自分らしく…樹木希林の女優人生
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【しゃベルシネマ by 八雲ふみね 第494回】
さぁ、開演のベルが鳴りました。
支配人の八雲ふみねです。
シネマアナリストの八雲ふみねが、観ると誰かにしゃベリたくなるような映画たちをご紹介する「しゃベルシネマ」。
9月15日、国民的女優の樹木希林が75歳で死去しました。全身をがんに侵されながらも生涯現役を貫く姿は、気高く美しく、多くの人を魅了しました。そこで今回は、不世出の大女優・樹木希林を特集します。
希林さん、多くの感動をありがとう!
『わが母の記』は、昭和の文豪・井上靖の自伝的小説を豪華キャストで描いた親子の絆の物語。幼少期に離れて暮らしていたため母とは距離を置いていた主人公が、自身の幼い頃の記憶と母への思いに向き合いながら、母を理解し、次第に受け入れていく様子を情感たっぷりに紡いだ感動作です。
樹木希林が演じたのは、役所広司扮する小説家・伊上洪作の母、八重。痴呆によって薄れゆく記憶の中で、それでも変わらぬ息子への愛情を持ち続ける姿に、自分の母親と重ね合わせて観る人も多いのではないでしょうか。“日本の母”を数多く演じてきた樹木希林ですが、そのなかでも彼女の名演技が光る1作です。
吉田修一によるベストセラー小説を映画化した犯罪ドラマ『悪人』。九州のとある峠で起きた殺人事件をきっかけに、偶然出会った男女が繰り広げる逃避行と愛の行方を息苦しくなるほどのリアリティで描くと同時に、地方都市の閉塞感や人間関係が希薄になった現代社会を鋭く反映した秀作です。
そんな本作で、容疑者の祖母という難役を演じきった樹木希林。突然のマスコミ攻撃に戸惑いながらも、それでも孫を信じたいという葛藤に揺れ動く祖母の演技が切なく、作品にさらなる深みを与えています。
数々の作品において、その確かな存在感で魅了してきた樹木希林の最新作となるのが『日日是好日』。森下典子による人気エッセイ「日日是好日-『お茶』が教えてくれた15のしあわせ-」を映画化した本作で樹木希林が演じたのは、“タダモノじゃない”と巷で評判の茶道の師匠、武田先生。
茶道を人生になぞらえて語る武田先生の言葉は、女優・樹木希林の生き様と重なる部分が多く、思わずグッとくることも度々。雨の日は雨の音を聴き、雪の日は雪を見て、その季節を生きる。樹木希林という女性は、自分らしく鮮やかに「日日是好日」な人生を全うした人物なのかもしれません。
本作は10月13日の公開に先駆けて、10月6日、7日、8日の3日間、全国の映画館で先行上映を実施中。樹木希林の躍動する演技を是非、お近くの映画館で堪能して下さい。
<作品情報>
わが母の記
DVD&Blu-rayリリース
監督・脚本:原田眞人
原作:井上靖(講談社文庫刊)
出演:役所広司、樹木希林、宮﨑あおい、南果歩、キムラ緑子、真野恵里菜、三國連太郎 ほか悪人
DVD&Blu-rayリリース
監督:李相日
原作:吉田修一(朝日文庫刊)
出演:妻夫木聡、深津絵里、岡田将生、満島ひかり、樹木希林、柄本明 ほか日日是好日(にちにちこれこうじつ)
2018年10月13日(土)シネスイッチ銀座、新宿ピカデリー、渋谷シネクイント、イオンシネマほか全国ロードショー
2018年10月6日(土)、7日(日)、8日(月・祝)先行上映(一部映画館を除く)
監督・脚本:大森立嗣
原作:森下典子「日日是好日-『お茶』が教えてくれた15のしあわせ-」(新潮文庫刊)
出演:黒木華、樹木希林、多部未華子 ほか
©2018「日日是好日」製作委員会
公式サイト http://www.nichinichimovie.jp/
連載情報
Tokyo cinema cloud X
シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。
著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/