ニッポン放送の「飯田浩司のOK! Cozy up!」(10月19日放送)に外交評論家の宮家邦彦が出演。ヨーロッパと日本の共通の課題について解説した。
安倍総理がヨーロッパ委員長と会談
ヨーロッパ歴訪中の安倍総理大臣は18日午後、最後の訪問国ベルギーでユンケル・ヨーロッパ委員長と会談した。会談では米中貿易摩擦を踏まえた自由貿易の推進や、日本とEUによる経済連携協定の早期発効、さらには北朝鮮の非核化に向けた協力などを巡って議論したと見られている。
飯田)総理はドイツのメルケル首相とも会談しまして、現地19日にはASEM(アジア・ヨーロッパ首脳会合)にも出席する予定だということです。今回の歴訪についてですが、EPAはもう署名はして、これから発効に向けての手続きというところですよね?
宮家)昔はEPAも大変な課題だったと思われていましたが、いまほど日本とヨーロッパが共通の利益を持つようになったことは無いと思います。ロシアの問題は共通の問題としてありますが、もともとは中国の問題です。ロシアを除けばヨーロッパとはこれまで若干温度差があって、どちらかと言うと彼らは中国の問題を経済的に見ていて、安全保障上のことについては「そんなの良いじゃないの」という感じでした。でも最近は「一帯一路がおかしい」ということが分かって来て、ヨーロッパも警戒感を持つようになった。その意味では、いま日欧の関係で中国の問題には共通項が増えています。
もう1つ大事なことはアメリカです。「トランプ政権、大丈夫なの?」という気持ちは、欧州と日本は両方とも持っていると思います。欧州とアメリカ、そして日本もそうですけれども、1945年以来作ってきた、国際的な開かれた、法とルールに基づく普遍的価値を体現する形の国際秩序。これをアメリカが1人でおかしなことになって動かし始めた。そういう状況でヨーロッパと日本は共通の利益がある、すなわち「自由貿易として民主主義を維持して行くことが大事なんだ」ということを、日欧で一緒になってアメリカに言わなければいけない。いま欧州とトランプさんの関係はとても悪いので、日本のほうが言いやすいですよね。
飯田)悪いですね。
宮家)ここで欧州と立場が同じであることを確認することは、とても大事なことだと思っています。
飯田)橋渡し役というところを期待されているのですか?
宮家)彼らもアメリカとの関係は緊密ですから、なかなかそこまでは行かないと思いますが、トランプさんに日本もそうなのだということを分からせなくてはいけません。
ヨーロッパと日本の共通の問題となる「中国」
飯田)一方で明日行われるというASEM(アジア・ヨーロッパ首脳会合)、これにはASEAN諸国だけではなく中国も来ます。
宮家)もちろんそうですね。
飯田)そうすると首脳会合の後に出てくる文書には、どのくらい中国に対して物言いが出ますかね?
宮家)中国だってその文書作りに参加していますから、自分が狙い撃ちされるようなことは絶対に反対します。こういう、定期的にやっているものについて、各国入れたいことがあるだろうから、簡単に大きく変わるわけではない。その結果が中国について厳しくないとしても、それで問題が解決しているわけではないですから。
文書の内容はよく見なくてはいけませんが、これからもやらなくてはならない対中政策について欧州と調整をする。中国は欧州からすれば遠いので、彼らにとって安全保障上の問題は大きくない。だけど日本にとっては安全保障上の問題は大きい。いつもヨーロッパに行くと言うのですが、「あなたたちはロシアのことしか考えてないでしょ、でも日本はロシア、中国両方とも隣国なんだよ」と。最近はさすがに分かってきたと思いますが。
出口の見えないイギリス
飯田)イギリスのブリグジット、EU離脱の問題。総理と会う直前にEUの首脳会合がありました。世界のメディアは注目していましたよね。
宮家)何しろむちゃくちゃだから。
飯田)これはどうなりますか?
宮家)メイさんはかわいそうですが、ああいう形で交代しなければいけなかったことを差し引いても、いまブリグジットが壊れそうな形で、合意が無いままに出て行くという最悪の事態が出て来かねない。
飯田)期限がどんどん伸びていますね。
宮家)悲観的なトーンで報道されているのを見ると、あれは何だったのかと思いますよね。だったら出ない方が良かったのではないかという意見もある。
飯田浩司のOK! Cozy up!
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