プロ野球史に残る名言「大杉、あの月に向かって打て!」…その結果はどうだったのか?

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偉人の歴史に残る場面での名言を取り上げる 「高嶋ひでたけと里崎智也サタデーバッテリートーク」の“名言名場面プレイバック”。12月8日放送では、元東映の打撃コーチ・飯島滋弥が大杉選手に語った名言を紹介した。

プロ野球史に残る名言「大杉、あの月に向かって打て!」…その結果はどうだったのか?

飯島滋弥(恒文社(Kobunsha)-『ベースボールマガジン』増刊号「グラフと読み物」(第5巻第7号)、恒文社、1950年、p.36より)

プロ野球史上、もっとも有名で、もっともカッコいい…とされている名言。

「大杉、あの月に向かって打て!」

という言葉です。野球に不案内な方でも、なんとなくシビれるセリフでしょう? この言葉を発したのは、元東映の打撃コーチ、飯島滋弥さん。そして、この言葉のなかに出て来る「大杉」というのは、セパ両リーグでホームランバッターとして活躍した、大杉勝男さん。ふたりともいまでは鬼籍に入られました。

さて、語感のカッコよさもあり、球史に残る名言とされているこの言葉。一般的には「チマチマせずに豪快なバッティングをしろ」という意味に解釈されています。
ところが…実際の意味は、まるで逆だったのです!

では、実際には、どんな場面で、どういう意味で飛び出した言葉だったのか?
昭和43年9月のある試合で、大杉さんはフォームをひどく崩していました。そのまま、自信なさそうにバッターボックスに歩いて行こうとした…。「何か声をかけにゃあならんなぁ」と、大杉を呼び止めた飯島打撃コーチ。ふと空を見ると、中秋の名月がレフトスタンドの上、バッターの目から25度くらいの低い空に昇っているのに気が付いた。

「いいか、大杉、あの月に向かって打て」

──わかりますか? つまり飯島コーチは、極度なアッパースイングを矯正するため、低くのぼった月を標的に、より水平に近い角度でバットを振れ…と言ったのです。つまり、アッパーで振るな、レベルスイングで振れ! という意味だったのです。

ちなみに結果はと言うと、劇的なホームラン…とはならず、ライトフライ。現実とは意外とこういうものでありますね(笑)。

ところがその後、「大杉、月に向かって打て!」という言葉は、事実を越えたインパクトを持って独り歩きをはじめ、野球ファンに、うっとりとするようなロマンを与え続けました。

もちろんそれは、大杉さんが超一流の大打者だったからこそ。この名言は、ちっぽけな事実関係を吹き飛ばすパワーを持っていた…というわけです。

高嶋ひでたけと里崎智也 サタデーバッテリートーク
FM93AM1242ニッポン放送 土曜18:00-20:30

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