講談師・神田松之丞「最後に作る講談はどんなものになるのだろう」
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黒木瞳がパーソナリティを務める番組「あさナビ」(ニッポン放送)に、講談師の神田松之丞が出演。講談師としての今後について語った。
黒木)今週のゲストは講談師の神田松之丞さんです。
講談界のこれから、未来についてお聞きしたいのですが。
神田)師匠がいま76歳なのですが、師匠の持っているネタをできるだけ多く吸収したいです。師匠は500ぐらいネタを持っているのですが、私が140なので、まだ芸の継承が進んでいません。
黒木)140で驚いていてはいけないのですね。
神田)全然ですよ。人間の記憶力には限界があるので、教えられるのもひと月に1回だと思うのです。だから師匠からできるだけ教わって、それを人に聴いていただくということを、私は生涯繰り返して行くのだと思います。同時に講談というものを、この番組含めて「面白いね」とか「この講談師は意外とざっくばらんで伝統芸能ぽくなくていいね」というように、たくさんの人が講談を好きになってくれる環境を整えたいと思っています。いまは講釈場と言う、講談専門の場がないのです。生きている内にいろいろな人の協力で講釈場を建てて、その講釈場で育つ人ができたらいいなと思っています。
黒木)お弟子さん希望の方が続々と来ていらっしゃるのですよね。
神田)そうですね。まだ二ツ目なので取れないのですが、僕も師匠に受けた恩があるので、それを彼らに返していかなければと思います。明らかに才能がないやつが来たら、黒木さんだったらどうします?
黒木)好きかどうかということがいちばん大きな判断になると思います。明らかに才能がない、芝居が下手だけれども、本当に芝居が好きだという情熱があったら絶対にとります。
神田)やはり情熱とかやる気ですか。でもやる気を生涯継続するのは大変ですよね。最初はみんなやる気があるじゃないですか。
黒木)でも、やはり情熱がある人は伸びますね。最後に、松之丞さんが大切にしている言葉、もしくは座右の銘は何ですか?
神田)考えたことが無いですね。でも言葉は本当に消えて行ってしまうので、その消えてしまう言葉に生涯、時間をかけているのが好きですね。消えてしまうけれど伝統芸能なので、僕がやって来たことは下の世代に受け継がれるということを、何代も何代もやっている。そういう空間みたいなものが心地よくて、僕はこの世界にいるのです。
最後に自分がやるネタはどんなものかなと思ったりもするのですよ。お芝居だったら、シェイクスピアならシェイクスピアに呼ばれてということになるのですが、我々は自分で決めるので。それも最後だという認識もなく、あとでお客様が知ることになる。この先体が弱って、そのときに何を書けるのかということは自分のなかでとても楽しみにしています。
神田松之丞(かんだ・まつのじょう)/ 講談師■1983年・東京都豊島区出身。35歳。
■日本講談協会、落語芸術協会に所属。
■2007年、3代目神田松鯉(かんだ・しょうり)に入門。
■2012年、二ツ目昇進。
■2015年、「読売杯争奪 激突!二ツ目バトル」で優勝。
■2016年、「今夜も落語漬け」3分漫談、「真冬の話術」で優勝。
■2017年、「平成28年度花形演芸大賞」銀賞受賞。
■2020年2月に真打ちへ昇進することが決定。
■連続物と言われる「寛永宮本武蔵伝」全17席、「慶安太平記」全19席、「村井長庵」全12席、「天保水滸伝」全7席、「天明白狼伝」全10席、「畦倉重四郎」全19席、また一席物と言われる数々の読み物を異例の早さで継承。
■持ちネタは入門11年で140を超え、独演会のチケットは即日完売。 メディアを席巻し、講談普及の先頭に立つ活躍をしている。
■いまや勢いある高座が世代を超えて圧倒的な支持を受け、「講談界の風雲児」、「チケットのもっとも取れない講談師」とも言われている。
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