ファーウェイがアメリカ政府を提訴 「5G」の主導権争いも関係か

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(3月8日放送)に外交評論家・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の宮家邦彦が出演。米中関係について解説した。

ファーウェイがアメリカ政府を提訴 「5G」の主導権争いも関係か

中国広東省深圳市にある華為技術(ファーウェイ)本社キャンパス(ゲッティ=共同)=2018年12月7日 写真提供:共同通信社

ファーウェイがアメリカ政府を提訴

中国の通信機器大手ファーウェイが7日に会見をし、アメリカの政府機関でファーウェイの製品が排除されているのは違憲だとして、アメリカ政府を提訴したと発表した。ファーウェイの郭平副会長兼輪番会長は、アメリカ議会はファーウェイ製品を規制する根拠となる証拠を示せていないと主張している。

飯田)アメリカ政府を提訴して来ました。

宮家)アメリカは法治国家ですから、当然ファーウェイだってアメリカの子会社を持っているはずですから、ちゃんと米国法に基づいて、提訴すればいいんですよ。そして公平な裁判、公正な裁判を受ければいいんですよ。問題は、中国は同じことを中国で出来ますか?ということです。

飯田)中国国内で裁判、ですね。

宮家)やれるもんならやってごらんと。できないでしょう?出来ないはずですよ、だって司法権が独立していないんだから。ですからその意味ではね、それだけアメリカ社会の方が健全だということですよね。ただ私に言わせれば、ファーウェイが事実上中国政府の一部として動いているということは、2009年の10年前から既に囁かれていました。その状況を少なくとも中国側が本当に事実無根だと言うのだったら、その10年間の間に、何かすれば良かったけども、実際にはそうじゃなかった。ですから本当に情報抜き取りをやってるかやってないか、これはちゃんと司法判断をしなきゃいけないと思うが、いまの状況を見る限り、十分潔白を証明できるようなことを中国側がやっているわけじゃない。濡れ衣だと言われるかもしれないけれども、我々にとっては危ないですからね。もし本当にそうだった場合のことを考えたら、慎重にならざるを得ないのは、当然だと私は思いますけどね。

ファーウェイがアメリカ政府を提訴 「5G」の主導権争いも関係か
第5世代の移動通信システム「5G」の主導権争いも関係か

飯田)この会見のなかで、郭平さんという人が5Gと言われる第5世代の移動通信システム開発を巡って、「他国が我々の先進的な5G技術を利用してアメリカを追い抜くことを心配している」と訴えました。

宮家)まあ先進的かどうかは知らないですけども、ファーウェイのような会社が、本当に言われているようなことをやっているのであれば問題です。中国政府と一緒にやって、そしていろいろなところから持って来た技術情報を上手く使って、それで伸びてきたんだという人もいるわけだから、そこは中国側もちゃんと潔白を証明しなきゃいけないと思うんですよね。5Gについて言えば、これから国際標準が定まっていくわけです。各国とも5Gの技術研究開発が進んでいて、実際にもう始まっている部分もあるけれども、これからどれが世界共通の基準になるのか、もしくはスタンダードをどうやって作るかっていうのがポイントになると思う。それについてどこが先進的かどうかということではなくて、中国型の5Gが全世界の標準になる事についての恐れっていうのは勿論あると思いますよ。もし言われているように本当に情報が抜けるようなシステムが世界標準にでもなろうものなら、つまり中国だけがその情報を抜けるってなったら、それは最悪じゃないですか。そうでないことを示すために、いい意味で提訴するならしてください、その時にちゃんと証明しなさいと。そうすれば良いんじゃないですかね。

飯田)場合によっては検査させてくれますか、とかね。

宮家)ついでに見せて頂戴よ、とね。絶対に見せないと思いますが。

飯田)下手をすると、そこで提訴取り下げみたいなことになりかねません。

宮家)なかなか中国の国内に入っていけませんからね。中国国内には主権があるから中国は拒否する。結局いたちごっこになって、水掛け論になって、消える運命にはあるのだけど、要するに中国側だって何か反論しない事にはこれはもたないですからね。中国国内だって一生懸命対抗する。まあ頑張って下さい、ということです。

ファーウェイがアメリカ政府を提訴 「5G」の主導権争いも関係か

中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)の孟晩舟最高財務責任者(CFO)(ロシア・モスクワ)=2014年10月2日 写真提供:時事通信

カナダ政府とアメリカ政府の対中国の姿勢

飯田)身柄がカナダ政府に拘束されている孟晩舟さんも、カナダ政府に対して訴え出たり、いろいろとやっています。こちらは審理が始まるか始まらないか、という状況です。

宮家)これまでカナダは、どちらかというと中国に非常に優しい国だったわけです。それが、これだけのことをやったっていうことですから、アメリカは非常に高く評価していると思いますよ。このまま行ったら次は被疑者引き渡しですよね。アメリカに引き渡しをやったらまた中国がドカーンときますから、あんまり一気にやると大変なことになります。徐々に徐々に時間を掛けてガス抜きをしながら、慎重にやっているんだと思います。ですから長い目で見れば、彼女はもう起訴されていますから、当然引き渡しをしてアメリカで実際に裁判にかけるということになっていくと思います。

飯田)今月の末にかけて米中の首脳会談があるやなしやと言われています。

宮家)中国のファーウェイも含めた活動を懸念する向きとしては、トランプさんが変に妥協して捜査を中止したり、もしくは釈放したりっていうことを恐れている人がいるかもしれませんね。だけど大きな流れで見た場合には、ファーウェイっていうのはあくまで氷山の一角です。今問題になっているのは彼らだけではないですから。少なくとも5社、恐らく実際には氷山の一角ですから、全体では数10社あると思います。それをどうやって規制していくかということを考えているはずだから、本当は米国としてもこれだけで妥協するわけにはいかないんだと思いますよ。

飯田)この対中国の姿勢に関して言えば、党派は関係無いと。

宮家)関係無いですね。つい数年前までは、中国との関係を何とかしなきゃいけない、安定した関係がなければいけない、という人たちがいたんですよ。だけど徐々に減っていって、今はもうほとんどいないですね。

飯田)ワシントンにはほとんどいない。

宮家)貿易赤字のことを考えたら、民主党も厳しいですよね。共和党の方は、安全保障上の問題も含めて中国はけしからんという意見が強く、ほとんど味方はいないですよね。中国でファンドやっている人たちとか、中国に進出してる会社は、中国との関係を考えているかもしれないけど、北京にあるアメリカの商工企業の商工会議所だってずいぶん態度が変わりましたね。ですから中国は本当に四面楚歌だと思いますよ。まあそれだけほったらかしてきたからいけないんですけどね。こんなことやったら中国は自分で自分の首を絞めるのを分かっていて、どうして止めないんだろうなと。どうして政策を変えないのかなとおもうけど、やっぱりそれは中国が国家戦略として、安全保障の根幹の政策として、ずっとやって来たと疑わざるを得ない事だけは間違いないと思いますね。

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